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変態女子に囲まれて、ツッコミに追われる毎日です。  作者: ヨエ団
2巻 若葉の目にしみる候、奮闘したり。
17/19

16.何でもかんでも、凝りたいお年頃です。

 ♂×♂


 2人分の精算を済ませてラーメン店を出ると、すっかり夜の帳が下りており、電灯が煌々と光り輝いていた。


「でも本当に良かったの?」

「俺が誘ったんだしな。家計だって苦しいんだろ?」

「だけど」

「良いんだって。男と女が一緒に来てるのに、会計は別々だとか俺が恥ずかしいだろ?」

「……ありがとう」


 くそっ、なんでこんなに可愛いんだよ。

 だから上目遣いするな、袖をキュッと持つな、頬を赤らめるな!!


「……よし、ラーメンも食ったことだし帰るか!!」

「行かなくてもいいの?」

「もう暗いし、また明日にするさ」

「それが良い」

「だろ」


 俺が諦めると、度会は安心したのかホッと溜息をついた。

 そんなに柚木崎と鉢合わせるのが嫌だったのかよ、まあ事情があるから仕方ないが。


 というわけで、今日のところは引き上げることになった。 


「家まで送るよ、また迷われたら困るしな」

「いや、大丈夫、だと思う。運命に導かれし私は」

「分かった分かった、運命に導かれて俺に送られろって。仮にも女の子なんだから夜道を一人で歩くのは危ないだろ。仮にも」

「……ありがとう」


 なんだこのありがとうスパイラル。


「ほ、ほら、先行くぞ?」

「待ちたまえし深淵なる歪みよ、私のエターナルゾーンを」


 黙れ。



 ♂×♂



 なんとか度会を無事に送り届けて、さあ帰宅というところで、やはりというか何というか、また道が分からなくなってしまった。


 ……方向音痴すぎるだろ、俺。

 まあ一回通っただけの道を覚えるなんて芸当が人間に出来るはずがないし、仕方ない。そう、これは仕方がないんだ。俺がポンコツだからどう、というわけではないことを、強く強く訴えておく。


 そんな俺だが、今回はちゃんとした作戦を考えてきた。ほんとだよ?


 迷路から出られなくなった時、塀に沿っていくと必ずゴールにたどり着くって話がある。

 なら、それを応用して、迷子になった時に使えないかって考えたんだ。


 それには迷子になる前からの準備が必要で、どこへ行くにも右側に塀があるような場所を通ることにしていた。そして帰りは左側に塀があるような場所を通ればよい。だからラーメン店から度会の家までは帰ることが出来た。もちろん展望台を経由してだが。


 だったら家に帰るのもこの要領で行けるんじゃないかと、考えてたんだ。

 しかしそれには、ある大誤算があった。



 ぶっちゃけ、どこにでも塀あるよね?

 それでどこで曲がったか忘れるよね?

 ルートから外れると迷子になるよね?



 うぇーい。



 さぁ、嘲笑うが良いさ! アハハハハ!! アハハハハ!! アハハ……ふぅ。



 とりあえず、立ち止まっていても仕方がない。

 というわけで、そこら辺りを適当にぶらついてみることにした。迷子に怖いものは無いのだ。


 電灯には蛾が近付いては遠ざかりを繰り返し、かと思えば別の電灯へと飛び去って行った。



 ♂×♂



 やはり町というのは狭いモノなのか、見知った道に出ることが出来た。

 忘れもしない、この道を真っ直ぐ進むと知識の家へと辿り着くことが可能だったはず。


 もう4月は終わるけど、思えば色んな事があったなぁ。


 勧められるがままに部活に入って、その中で仲間が出来て、知識のことで一頓着あって……そして今は文化祭の準備。1年生の時とはまるで違う、活発的で如何にも青春と言える1ヶ月だった。


 高校生だからどう、なんて考えたことは全く無かったが、今、俺は高校生をしてるって感じる。

 それも知識のお陰、かもしれないな。


 ここまで来たら家に帰れるけど、せっかく近くまで来たんだから知識の家を覗いていくことにしよう。



 ♂×♂



 黒猫が俺の前をサーッと横切って行った。何らかの前兆だろうか。

 いや、黒猫って不幸を持ってくるって良く言うじゃん。もしかして、知識に告白されたと思ったらすぐに振られる、なんてことがあるかもしれないじゃないか。黒猫だけに。

 だから知識に告白されたら要注意だ。



 ……なんで告白される前提なんだろうか。自分に自信がありすぎだろ、俺。

 大体俺には将来を共に過ごすと決めた許嫁が……居なかったな、スイマセン。


 そんなどうでもいいことを考えている内に、知識のアパートに到着した。2階にある部屋はカーテンをしていないらしく、外から丸見えとなっている。

 そして下着姿で知識が暴れているのも見て取れる。



 ……どうしよう、このまま他人のフリをして帰ろうか。今だったらまだ引き返せるし。人生、進むだけではイカンのですよ。

 でも見てしまったモノは仕方ないよな……注意しないと後味が悪いというか、恐らく下の階の人が迷惑してるだろう。


 俺は下の階の騒音を耐えて鬱病になりかけの田中さん(仮)に代わって部屋に突撃することにした。

 意を決してインターフォンを押す。ピンポーン。

 押した途端にドタバタしていた音がピタリと鳴り止み、これまた1分ほどドタバタとしたかと思うとようやく応答した。


『こ、コンニチハ、きょ、今日も良い天気ですね!?』

「もう夜だからその挨拶は可笑しいと思うぞ?」


 芸能界ならあるかもしれないが。


『それはそれとしてですね、なんで今日はココに?』

「いや、なんていうか、近くまで来たから様子でも見ようかなって思ってな」

『こんな夜にですか?』


 こんな夜になるまで迷ってて悪かったなバカヤロー。しかも目的地に着くことなく帰ってきたんだよこのヤロー。


『まあそれは良いんですけど、とりあえず上がります?』

「そうだな、そうさせてくれ」


 程なく施錠が外され、すぐにドアを開けてくれた。


 部屋の中は本の魔窟と化していたあの時とは打って変わって、キチンと本棚に整理された――――その殆どが漫画やライトノベルだが――――書斎のような部屋となっており、真ん中にはテーブルがどっしりと構え、窓際にはベッドや勉強机が理路整然と横並びにされていた。


 テーブルに案内されたので、地べたで胡座(あぐら)を掻いて座る。


「にしても女の子の部屋っぽくねえよなあ……」

「え!? なんですか!?」

「なんでもねーよ」


 台所で飲み物を入れていた知識が、俺のボソッと呟いたはずの独り言に目ざとく反応する。地獄耳ですかアナタは。


「お茶が入りましたよー。ミルクティーで良かったですよね?」

「おぉ、すまんな」


 知識はミルクティーを2つ持ってくると、俺と反対側に置いて、その対面にペタンと座った。


 ラーメンと同じくミルクティーは俺の好きな飲み物だ。ミルクティーに合う紅茶やミルクもあって非常に奥が深く、それはラーメンに通じるところもある。

 俺はそれに蜂蜜を入れるのが好みだ。蜂巣の母親に言われて入れてみたのが始まりだったのだが、これがまた美味しい。まあ食べてる時には不向きだけど。


 ただただ静寂にミルクティーを啜る音だけが響いていた。


「え、えと、ボクシンクには慣れましたか?」


 それを破るかのように知識が話題を振ってきた。


「ルールは一応な。でもさ、俺が勝てるわけないじゃん?」

「勝てるわけないって……何を言ってるんですか、やおい先輩。勝ち負けを決めるのはお客さんですよ?」

「まあそうなんだけどさ……」


 俺には、柚木崎のように堂々と立ち振舞うことはできない。

 俺には、知識のように多彩な知識に恵まれていない。

 俺には、蜂巣のように相手を誘導することはできない。

 俺には、度会のように……。


 さて、こういうことだから、俺に勝ち目はないのだ。


「ていうか、別に勝ちにこだわらなくても良いじゃないですか。遊び感覚で良いんですよ?」

「文化祭で俺の惨めさが晒されることになってもか?」

「それもまた、青春の1ページです」


 すまし顔で言う知識を少し眺めて、確信を持って尋ねる。


「……本のセリフだろ?」

「バレちゃいましたか☆ 確かに本に出て来たセリフですよ。でも、それがどうって言うんです?」

「フィクションと現実は違うだろ?」

「英国の詩人、バイロンはこう言いました。“Truth is stranger than fiction”――――事実は小説より奇なりという日本語訳は聞いたことがありますよね? それだけフィクションより現実の方が予想できないことが起こるものです」

「……それ、結局フィクションと現実の違いを表してるんじゃ?」

「そうですよ。でも難しいことを言われると、少し脳が停止しますよね? それで全く矛盾点を見つけられない人だっています。この詭弁に引っ掛からないのであれば、やおい先輩は大丈夫です」

「そういうもんかね?」


 確かにバイロンとか言われた時点で脳みその思考回路がストップしたが。特に英語なんて聞き取れすらしないし。


「てか、プログラムの方は大丈夫なのかよ? 良く分からないけど、難しいんだろ?」

「それならもう終わってますよ?」


 はあ!?


「似たようなことを友人がしたらしくて、その時のプログラムを流用させてもらいました」

「似たようなことって?」

「大声で相手を倒す同人ゲームを作ったらしいです。もちろん日本では、あまり売れなかったらしいですが。近所迷惑になるんで」

「何をしてるんだ、友人……」


 少なくとも日本人ではなさそうだ。


「キャラクターも既に出来てますよ? 見ます?」

「見る見る!」


 知識はその場で立ったかと思うと、勉強机の上に置いてあったノートパソコンを開いて、こちらに見せてやる。


「おお、ちゃんと出来てるなあ。白虎に不死鳥に魔法使いに蜂にナマケモノにマンチカンにスコティッシュフォールドにロシアンブルーにアメリカン・ショートヘアにペルシャ猫に……。なあ?」

「はい、なんでしょう?」

「猫多くない?」

「猫は多いに越したことはないですからね」

「つまり、多いよね?」

「多いです」


 あっさりと認めましたね。


「やおい先輩が喜ぶかなって思いまして……」

「猫に囲まれるんだったら良いけど、猫のキャラクターを操るだけだし、用意してもらって悪いけどちょっと必要無いかな」

「…………」


 知識は、無言でパソコンを閉じたかと思うと、背中に蹴りを入れてきた。痛い痛い痛い。あ、もう少し右をお願いします。うん、そこそこ。

 しかし、普段あまり運動をしないのか、知識はすぐにスタミナ切れを起こして、その場にへたれ込んでしまった。


「因みに俺が来る前に、なんで暴れてたの?」

「もう……ハア……帰って下さい……ハア……明日話しますんで……ハア……」

「じゃあ明日な」


 その色っぽい息遣いに免じて、今日のところはひとまず退散することにしよう。別に何か用事があってきたわけじゃないし、もう夜も遅い。

 そうして、遠くの方から救急車の音が鮮明に聞こえる、静かな夜の道へと繰り出したのだった。

根「第17話更新ダ」

葉「今回は☆★☆★☆★☆★となってます☆」

根「訳が分からんゾ!?」

葉「だって私の唯一のアイデンティティでもある☆を奪われたんですよ☆ しかも下級生に☆」

根「一回だけじゃないカ」

葉「それでも知識に☆を使うイメージが付いてしまえば私はいらない子に……☆」

根「なぁ二、その時はワタシが養ってやるサ」

葉「本当ですか☆ ありがとうございます☆」

根「さて、茶番のせいでもう時間となってしまったようダ」

葉「じゃあ次もまた見てくださいねー、宜しくお願いします☆」

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