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変態女子に囲まれて、ツッコミに追われる毎日です。  作者: ヨエ団
2巻 若葉の目にしみる候、奮闘したり。
16/19

15.好物のためなら、えんやこーらさっさ。

 ♂×♂


「ところで」


 少し歩いたところで、度会が話を振ってくる。


「なんで私の家の前に居た?」

「なんでって、だから道に迷ってだな……ん?」


 私の家の前?


「もしかして、あそこってお前んち?」

「表札を見てたら分かるはずだけど」


 テキトーにインターフォンを押したのに表札なんて気にかけるわけないじゃないですか、やだなー。


「ってことはあの子供達は全員お前の弟妹なのか……賑やかな家庭だな」

「5人も居たら、騒がしくなる」

「その中で度会はちゃんとお姉ちゃんしてるんだろ? エライな、尊敬するよ」


 それは、紛れもない本心だった。

 姉として、4人もの家族の面倒を見るなんて、おそらく……いや、以前の俺には絶対できない。

 自分のことすら考えられなった、あの頃は。

 今の俺にだったら出来るだろうか……。


 っと、そんなことはどうでもいい。


「やっぱり年下が4人も居るとなると大変か?」

「次女は中3だけど、私よりも大人っぽいというか、母親に近い」


 処女だってカミングアウトしてたヤツか。

 やはり俺の予測は当たらずも遠からずだったわけだ。


「長男は次女と双子で、一番家族のことを思ってくれてる」


 あの態度の悪かったヤツか。

 おそらくあれはシスコンだな……妹は嫁にやらんぞって、どこまで溺愛してるんだよ。


「三女は小5で、一番しっかりしている」


 俺をセールスマン呼ばわりしたヤツか。

 確かにしっかりしていたな、あの兄からの命令も聞いてるみたいだし……それってダメじゃね?


「四女は小1で、家族のムードメーカー」


 多分最初に出ためるちゃんかな?

 ムードメーカーって言うか、多分日本語があまり分かってないって言うか、ラーメンしか思い浮かばねえ。


「だから大変というより、毎日が楽しい」

「それは良かった」


 かといって、それ以外に会話することも無く、ただ無言で付いていく。


 4月も終わるってこともあって、桜はすっかり葉を茂らせ、気の早い鯉のぼりが一匹、赤く染まった空を泳いでいた。

 他の鯉はどうしてるんだろうか、もしかして迷子になったんだろうか……なんてな。

 どうせ一匹しか家にないから申し訳程度に飾ったんだろう、そんな迷子だなんてあるはずがない。


「ねえ」

「なんだ?」


 度会が立ち止まって此方を向く。


「ここはどこ?」

「…………」


 忘れてた。

 度会が俺と同様、いやそれ以上に方向音痴だってことを。


「そういや家でも迷子になるらしいな」

「そんなことはない。年に1回くらい」


 1回でも迷う時点でおかしいことに気付こうな?


「なんか、自分の部屋とリビングを行き来してしまって、トイレに行けないなんてことない?」

「あるわけねえだろ、んなもん!!」


 ここまで来て同意を求めてくるなよ、惨めなだけだぞ!!

 しかし度会は、あると思うんだけどなーという顔で頭を掻いていた。


「それでよく学校から家まで迷わず帰れるな!!」

「1カ月に2、3回は辿り着けないけど」

「帰れてないのかよ!!」


 何回も通ってたら体に染みついて忘れられないだろ、普通!!

 ……いや、家で迷うなら十分あり得るか、でもしかし……。


「って、よくもそんなので自信満々に道案内しようとしたよな!!」

「もしかしたら、あの時みたいに神社まで行けるかと思って」


 あの時も既に迷ってたのかよ!!


「とりあえず、見晴らしの良さそうなとこまで行こうぜ。ここで立ち止まってても仕方ない」

「了解」


 そうして俺達2人は上へ上へと登っていくのだった。


 ♂×♂


 歩くこと暫し。

 驚くことに町全体を一望できる展望台を見つけた。


 ココに来て早1年、1年居たにもかかわらず、俺はこの場所どころか全くこの町について知らなかったことを痛感させられる。本当にまだまだ知らないことだらけだ。

 俺が知ってることと言えば、本屋と学校と蜂巣の家と最近知った知識の家と、それからラーメンとラーメンとラーメンと……ラーメン? ラーメンばかりじゃねえぞ、あと中華そばも知ってるぞ? ラーメンだな、スイマセン。


 時間がある時には散策してみるのも良いかもな……なんて思いつつ、神社がどこにあるのかを眺める。


「神社は……あれか?」

「いや他にも神社はある……因みに、どの神社に行こうとしてる?」

「ん? 柚木崎んとこだよ、言わなかったけ?」


 その言葉を聞いて、一瞬度会の表情が強張ったように見えた。




「なんだよ、そんなに柚木崎のことが嫌いか?」

「そうではない。それよりかは、意見が噛み合わないと言った方が正しい」


 意見が噛み合わないってことは、価値観が違うってことか。まあ、エセ中二病と変態じゃそうなるわな。


「だったら、友達ではないのか?」

「私と副部長は部員同士、それ以上でもそれ以下でもないから。一般的に言う友達とは違うと思われる。でも」

「でも?」

「強敵と書いて『とも』と読むならその限りではない」

「???」


 俺には度会の言っている意味が良く分からなかった。


「私が副部長を認識したのは中3の頃、塾の模試でのこと。当時、家に負担をかけたくなかったから、模試だけ受けさせてもらったのだけど、そこで私はランキング上位に載った」

「スゴイじゃねえか、やっぱり素で頭が良いんだな」

「学校の勉強をちゃんとしていただけ。別に特段やったことはない。まあ学校では点数の良い方だったけど」


 頭のいい人は大抵そう言うか、何もやってないって言い張ってる気がする。


「でも、そのランキングを見て驚愕した。全ての科目の1位に柚木崎聖水という文字が躍ってた」

「全部!?」

「そう、あれが全ての始まり」


 度会は一度頷き、


「それからというもの、私の受ける模試全てのランキング1位に柚木崎聖水の文字があった。私はそれに勝ちたくて、もっと勉強して、それでも勝てなくて、勝てなくて……」


 度会は、か細い声で何度もつぶやく。

 俺だったら1位にずっといるヤツとか居たら、やる気を失うと思うけどな。俺じゃなくても、普通は不戦敗を受け入れるだろう。

 でも、度会は違った。多分人一倍闘争心が強いんだろう、いつしか柚木崎を倒すことが目標になってたんだな。


「柚木崎聖水が蘇芳学園を受けると風の噂で聞いて、ならば本番で勝負するって。それで私は親に頼みこんで蘇芳学園を受けて、それでも勝てなくて……」


 度会が蘇芳学園を受けた理由が、まだ顔も見たことのない柚木崎を倒すためだったなんて、柚木崎本人も知らないだろう。


「でも今まで名前でしか見たことのないライバルを見る機会が出来て、嬉しかった。相手はライバルとは思ってないと思うけど。それでも、あれは私が思い描いていた『柚木崎聖水』じゃない。ただの変態、絶対おかしい」


 度会は下を向き、拳を強く握りこんだ。


 つまり、なんだ? 自分はライバルだと思ってた柚木崎が、どんな優等生かと期待していた柚木崎が、あんな変態で失望したってことか?


「だから私は副部長を『柚木崎聖水』とは認めない」



 はっきりと。

 度会は柚木崎を否定した。


 だから同学年なのに副部長って呼んでたり、一々張り合ったりしてたのか……。


「でも柚木崎はアレで柚木崎なんだし、度会が決めることじゃないだろ?」

「分かってる。分かってるけど……」


 心の底では軽蔑している――と、言おうとしている気がした。

 嫌いじゃないけど生理的にムリ、ってヤツだろうか。


 正直、仲直りするには根本的なイメージを変えないといけないので、非常に困難を極めるだろう。

 人は、第一印象で他人を区別し、そして差別するのだから。


「まぁ、あれだ。そう決め付けるのは時期尚早ってヤツじゃないか? もう少し見極めて、それでも駄目だったら駄目で良いと思うぞ?」


 人と人が必ずしも上手くやれるわけではない。

 みんな仲良く、なんてフィクションじみているし、実際に不可能だ。

 だったら合う者同士で居た方が、人生は気楽でイージーだ。


 度会は俺の言葉に無言で頷く。

 そしてまた沈黙の時間が続いた。


 何か話さないと。


「えーと、うーん……あれはあれであれだし、えーー……そうだ、ラーメン食べるか?」

「食べる!」


 度会の瞳が途端にキラキラと輝き出した。よっぽどラーメンを食べたかったんだろうな、ははは。


 今日は柚木崎に会わなくて良いか。


 そうと決まれば、と俺は展望台から視認出来た行き着けのラーメン店へ度会を連れて行くのだった。



 ♂×♂



 着いたお店は九州ラーメンのチェーン店。

 名物のあっさり豚骨はもちろん、コクを深めたモノや塩に醤油、さらには激辛ラーメンも取り揃える全国でも人気のお店。

 初心者だろう度会を連れて行くにはうってつけと言える。


 もちろん人気ともあって、時間帯によっては長蛇の列が道にはみ出ていたりする時もあるが、今はまだ混んでいないようだ。


「これが世に聞くラーメン店……」

「そんな珍しいモンか? 歩いてたら結構な頻度で見かけるが」

「ラーメン店に地図を見ながら行こうとしたことがあった。けど、家の間取りしか分からなかったから無理だった」

「そりゃ家の地図持って行ったらそうなるわな!!」


 長男よ、お前の姉は地図の見分けすら付かないらしいぞ。つーか地図持っててもラーメン店なんて見つからねえよ。


「そういや、妹とか弟とかの夕飯は大丈夫なのか?」

「私が迷うから、朝に全部作ってある」


 そこはちゃんとお姉さんをしているようだった。ダメダメなのかダメダメじゃないのか、全く分からん。


 とりあえず不安要素が消えたところで、賑やかな店内に入る。


「いらっしゃいませー!!」


 度会は大声にビクッと肩を震わせた。ビビりなのかもしれない。


「2名様ですねー、こちらにどうぞー!!」


 「喜んでー!」と言いそうなほど居酒屋のようにノリが良い店員に連れられて、2人用テーブル席に座った。


「では注文をどーぞ!」

「あっさり豚骨の麺固めで」

「えと……この激辛ラーメンってどのくらい辛い?」

「それはな、辛さが調整できてな、8辛までだったら美味しく食べられるけど、超辛と特辛はハンパないから、オススメは3辛か8辛だな」

「だったら特辛で」

「かしこまりましたー!!」


 度会は俺の忠告を聞かずに特辛を注文し、店員はそそくさと注文を伝えに行った。


「良いのか? 本当に辛いぞ?」

「大丈夫、辛い辛い詐欺はとうに慣れた」

「いや詐欺じゃなくてだな!!」

「またまたー」


 どうやら本気で俺の言うことを信じていないらしい。

 コイツ……どうなっても知らんぞ。



 ♂×♂



 件のラーメンは5分ほどで運ばれてきた。

 俺のラーメンはとんこつスープらしくクリーム色だったが、度会のラーメンは見るからに赤い物体が浮かんでいて、まさに見た目は地獄の様子を呈していた。


「いただきまーす……で、大丈夫か?」

「……くくくっ、見た目でラーメンを判断してはならない」


 度会は口に麺を勢いよくズルズルと啜ってゆく。


「別に何ともない」


 そしてこのドヤ顔である。


「えええ? マジでそれ言ってるのか?」

「現に私には変化が起きていない。つまりは……」


 もう一口ラーメンをズルズル啜り、


「ゴワッフゴフゴフ!!」


 一気に吐き出した。


「全然ダメじゃねえか!!」

「それは貴方の責任だから、スープ取り換えて」

「なんで俺に責任を押し付けてんだよ!! 自分で頼んだだろ!?」

「後から辛いのが来るだなんて……聞いてない」

「辛いって言ったじゃん!! 絶対お勧めしないって言ったよね!!」

「あの流れは詐欺じゃ」

「どの流れに身を任せたらそういう考え方になるんだよ!!」


 むしろ身を任せないで自己流に走るから道に迷ったり失敗したりするのかもしれない。


 その後、度会は自らのラーメンには手を付けず、ただ俺が食べている様子を羨望の眼差しで見つめていた。


「ジィーー」

「…………」

「ジィーー」

「…………」

「ジィーー」


 うぜえ。


「…………俺のスープで替え玉するか?」

「べ、別にそんなこと頼んでないんだけど」

「なら激辛ラーメンを完食するんだな?」

「そ、それは……でも良いの?」

「まあ初めてのラーメン店なんだろうし、それ位はな。度会とはいえ、女の子に払い損させるのもどうかと思うし」

「……ありがとう」


 素直に頭を下げる度会は、いつもより幾分か可愛く見えた。


「この恩は必ず仇で返す」

「激辛ラーメンのスープを混ぜて食えないようにしてやろうか?」

「冗談だから、本気にしないで。サー」

「俺は将軍じゃねえ!!」


 つくづく度会は度会だな、と感じた瞬間だった。

根「第16話更新ダ」

葉「今回はまさかの度会無双回になってます☆」

根「こんなことが起こるなんて……天変地異でも起きなければ良いガ」

葉「良いんじゃないですかー、どーせ私たちには関係ありませんしー☆」

根「それもそうだナ」

葉「それはそうと、そろそろ第1巻を手直しした方がいいと思うんです☆」

根「確かに最後らへんはやっつけゲフンゲフン」

葉「最初っからあのエンディングになることは決まってたらしいんですけど、書くにあたってプロセスが少し雑になったらしいです☆」

根「じゃあ度会のオチ要員は最初からなのカ(笑)」

葉「メタ発言が出来るのも、このあとがきのいいところですよねー☆」

根「だナ(笑) とりあえず、それを直しテ、ワタシたちのエピソードをいれ込んでやれば天下を取れるかもしれないナ」

葉「私たちがあとがき要員な時点であり得ませんけどねー☆」

根「諦めるなヨ、熱くなれヨ!!」

葉「……はい、ではまた今度、お目にかかりましょう☆」

根「いやまだ話がおわってな(ry

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