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変態女子に囲まれて、ツッコミに追われる毎日です。  作者: ヨエ団
2巻 若葉の目にしみる候、奮闘したり。
15/19

14.全てが上手く、行くモノではありません。

 ♂×♂


 次の日、つまり4月30日。


 文化祭が近いこともあり、教室が使えないことから授業は休みとなっているが、準備に追われる生徒達で学校はごった返していた。

 俺達ディベート部はと言うと、生徒会に旨を伝えたところ、一番広い視聴覚室を2日3日共に1時間ずつ使ってよいとの許可を得たので、実際には殆どやることがないが、ただ何となく部室に集まった。


 柚木崎は参考書らしきモノをシゲシゲと眺め、度会は黒魔術の厚みがある本を広げて片っ端から魔法陣を描き、蜂巣は5月号の柔道雑誌を見ながら身振りで投げの練習をし、部長はいつも通り寝袋にくるまって寝るという、如何にもやる事がないような雰囲気となっている。


 しかし目の前の知識は忙しそうにキーボードを打っていた。


「何をしてるんだ?」

「………………み、美羽ですか?」


 自分に話を振られたのが分からなかったのか、知識は沈黙の後に少しビクビクしながら答えた。


「まあ、知識以外は暇そうにしてるだろ」

「暇とは心外ね、暇とは。一応勉強してるじゃないの」

「私は来たる終末の日に備えて」

「僕だって亮輔をどうやって投げるかの研究をー」


 蜂巣はそれ以上強くならなくてよろしい。


「それで、何をしてるんだ?」

「ああ、それなんですけど……ボクシンクのルールを少し改正しませんか?」

「改正?」

「はい、今のままだと勝敗が分かりづらいように思うんですよ」


 確かに、拍手の大きいほうが勝ちってのも分かりにくいよな。


「だから一回ずつの拍手の大きさを機械で測って、体力ゲージみたいなのを削っていく方が見やすいと思うんですよ。最後の判定で決まるよりもスリルはあると思いますし」

「ゲーム性もあるし、面白そうだな」

「でもトモシキ。そんな機械とプログラムをどこから調達するの? あと2日よ?」


 いつの間にか参考書を机の上に置いていた柚木崎が疑問を投げかける。


「それはご安心ください、美羽はエリート中のエリートと関係があるんですよ? 広い浅いが売りの人間関係ですけど、頼りになる人はたくさんいますし」

「トモシキの交友関係だったら期待はできるわね……それで、今打っているのはメールかしら?」

「はい、久しぶりのメールなので、当たり障りのない話から入って、何とかやってくれないかって交渉しています」


 だからキーボードを打ってたんだな、なるほどなるほど。


「やっぱり外国人と話すには日本の漫画は重宝しますね」

「どういうことだ?」

「え、日本の漫画が世界でも大人気なのを知らないんですか!?」

「ハリウッドで何本か実写化されたのは知ってるが……」

「あれは違う世界線の話です。この世界にあんな映画はありません」


 良く分からないが、ハリウッド映画はお気に召さなかったようだ。


「今や日本の漫画は英語のみならず、フランス語、中国語、スペイン語その他いろいろな言語に翻訳されていて、世界の漫画のうち4割以上は日本製の漫画なんですよ?」

「4割!?」

「大学に漫画学科があるぐらいの時代なのに、そんなのも知らなかったんですか?」


 呆れたように知識はジト目を向けてくる。


「なんか……スマン」

「あ、ああっ謝る必要はな、無いんですよ?」

「そうか……スマン」

「だから謝る必要はないんですよ、日本人は本当にすぐ謝りますね!」


 プンプンと聞こえそうな動きをしつつ、そっぽを向いてしまった。

 いや、お前も日本人だろ。だなんて言ったらまた話がややこしくなるので止めておいた。


「まあ、頑張れ」

「分かりましたよ、皆さんが身内で恥をかかないようには頑張ります」

「身内……身内なあ」


 うちの親は文化祭とか来るのかね……去年は来てなかったっぽいけど。


「度会の親は去年文化祭来たか?」

「ほ、ほほほっ、本当に最初が私で良い?」

「どういう意味だ?」

「いつも忘れ去られたり、おざなりにされたりするから」

「別にそんな意識してやったことはないけどな」


 単純に気付かなかったり、耳が遠くて聞こえなかったりするだけだからなあ。度会限定で。それは酷いな、悔い改める。


「で、どうだった?」

「親は仕事で忙しい。子供が5人いるから」

「この少子化の時代に5人もいるのか!?」

「少子化かどうかは知らないけど、私は長女で次女、長男、三女、四女の計5人。当日は連れてきて遊ばせる」

「そうか……なるほどな、立派にお姉さんしてるんだな……」


 個人的には長男がどうしてるかが若干気になります。


「蜂巣はママさん、来たっけ?」

「僕の母親は喫茶店で忙しかったはずだよー? 休みの日こそ稼ぎ時だしねー」

「そうか……じゃあ今年も来れそうにないな」


 残念っちゃぁ残念ではあるけど、ある意味では良かった。ママさんから俺の母親に俺の醜態が伝わったら笑いモノにされるに決まってるからな。


「柚木崎の親は?」

「去年は確か大事な試合があるって言って来なかったわ」

「試合?」

「何杯だったか何賞だったか何カップだったか何ステークスだったか何記念だったかは忘れたけどね」

「おもいっきり競馬じゃねえか!!」


 前にも聞いたが、本当に酷い親だな。


「その代わり、姉は来たわよ」

「姉が居るのか?」

「ええ、結構前に家から出ていったきり会ってなかったけどね」


 そりゃあそんな家だったら出ていきたくもなりますよね。


「ホントに姉さんは……必要のないことを……」






「ん?」

「いや、何でも無いわ。気にしないで頂戴」

「まあそうか、相談したいことがあったら、いつでもしろよ?」

「なんで私がアナタに相談しないといけないのかしら? 猥談ならするけど」

「いや、結構だ」


 すぐに下ネタに持っていく癖は、社会でドン引きされる要因になるので止めた方がいいと思う。


「じゃあ肉親は子供しか来ないわけですね……好き放題やれるってもんです」

「知識の親は来ないの決定なんだな」

「美羽の親がこれくらいで来るわけないじゃないですか、高校に入るのも反対してましたし」

「そう……なのか……スマン」

「あーーーっ!! 謝らないでくださいって、自分で決めた事なんですから。やおい先輩が言ったんですよ? 自分のやりたいことをしろって。だからこの文化祭だって頑張れるんですよ」

「……うん」


 何度も同じやり取りを繰り返すのもどうかな、とも思うのでこれ以上は止めておく。


「あ、オーケーらしいですよ」

「早いなオイ!!」

「途中からメールじゃなくてチャットにしましたんで」

「急速に仲を深めてんのな、お前!!」

「はい、演技するのは得意ですから」


 『……知識、恐ろしい娘!!』と白い目で叫ぶべきシチュエーションである。


「というわけで、皆さんのキャラクターを作りたいらしいので、好きなモノを言ってください」

「キャラクター?」

「体力ゲージが減っていくと画面の中のキャラクターが顔色の悪くなる仕様にしたいらしいです」

「頑張りすぎじゃないか!?」

「やるからには本気を出したいらしいです」


 職人の魂、ってやつか。称賛に値する、って上から言えるような立場じゃないけどな。


「だったら私は白虎が良いわ」


 と、柚木崎。


「なんで白虎?」

「白と黒のコントラストがシンプルだけどカッコいいのよ……私、目立つ髪の毛してるじゃない?」

「そういうことか……良いんじゃないか?」


 金色の髪の毛をしていたら、シンプルなのが羨ましくもなるだろう。


「僕はハチかなー、やっぱり」


 と、蜂巣。


「まあ苗字にもあるしな」

「僕を表す生物だからねー」


 性格的にも、戦い方にもそれは十分表れている。


「それだったら美羽は美しい羽根だから不死鳥ですかね」


 と、美羽。


「フェニックスか、まあ良いんじゃないか?」

「そして伝説へ、ですよ」


 それはなんか違う。


「じゃあ俺は猫で、部長はナマケモノで良いとして、度会は?」

「私は悪魔使いで」

「それはイメージ通りだが……職業?」

「職業じゃなかったら何?」

「いや、分からないけどさ……人で良いのか?」

「なんで?」

「まあ良いんだけどな」


 一人だけ人間ってのは浮くんじゃないかってゲフンゲフン。

 全ての要望を聞き終わった知識は、パソコンにそれらを打ち込んでいく。


「オーケーらしいです」

「よし、で俺達に出来ることがあるかどうか聞いてくれ」

「分かりました……別に何もやらなくても大丈夫、らしいです」

「そ、そうか……」

「私は万全なコンディションで臨む、これがプレイヤーのやるべきことだと思うわよ?」

「僕もそうだと思うねー、頑張ってくれてるのに、僕達が不甲斐なかったら申し訳ないねー」

「私はいつも万全だから大丈夫だけど、やるに越したことはない」

「美羽も大体賛成ですね。一応プレイヤーとしては初めてなんで予行練習はしたいです」


 柚木崎の意見にみんなが賛同する。


「それじゃあ、今日と明日は特訓の日だな」

「そうね。頑張りましょうね」

「まずは亮輔と知識からだねー。お題は『住むならどっち? 北海道VS沖縄』で行こうかー」


 こうして、ボクシンクの予行演習が始まったのである。


 ♂×♂


 もう何回戦ぐらいしたかすっかり忘れてしまった頃、西日が部室に差し込んできたタイミングで解散することになった。


「また明日、部室で会いましょうね」


 そう言うと一目散に出て行く柚木崎を見て、何かあったのかと勘ぐってしまう。

 やっぱり、姉のことで嫌なことでも思い出したのだろうか。


「悪い、蜂巣。俺寄るところがあるから先帰るわ」

「分かったー、裸エプロンで待ってるねー」

「何故新妻スタイル!?」

「気にしちゃ駄目ス☆」

「気にするわ!!」


 とまあ蜂巣にも了承を得たので、すぐに部室を出て柚木崎を追った。




 やはり金髪ってのは目立つもんで、校門の辺りで柚木崎らしき背中を捉えた俺は、一気にペースアップして柚木崎に近付いていく。

 しかし足音に気付いたのか、柚木崎は後ろを振り向いて俺を確認すると、逃げるかのように走り出した。


「おい!! 待てよ!!」

「追いかけられてるのに待つ人がどこに居るんですの!?」

「それもそうだ!!」


 しかも柚木崎の方が俺よりスピードもスタミナもあるらしく、気が付けば柚木崎の背中は豆粒のように小さくなっていた。

 そんなに逃げることなのかよ……。


 しかし俺は柚木崎の行く先を知っている。

 どう考えてもアソコしか考えられない。


 というわけで一度立ち止まって息を整えた俺は、目的地へとひた走るのだった。



 ♂×♂



「迷った……」


 俺は路上の真ん中で醜態を晒していた。


「一度行ったことがあるから行けると思ったんだがな……」


 行こうとしていたのは柚木崎の神社、つまりは家。

 そりゃ、一回行ったっちゃ行ったんだけど、その時は別にそこに行こうとして行ったわけじゃないから、分かるわけないんだよね。


 前にも似たようなことがあったような……もしかして俺って方向音痴なのか?


 とりあえず現在地がどこなのかが重要だ。

 どうしようかと迷った挙げ句、苦し紛れにそこら辺の民家のインターフォンを押す。


 10秒ほどして、女の子の声が機械越しに聞こえてきた。


『もぉしもぉし、どなたですかあ?』

「突然でゴメンだけど、ここから神社に行くにはどうすればいいかな?」

『じんじゃとは、おいしいアレですかあ?』


 ジンジャーエールと間違えてるのかな?


「そうじゃなくて、お正月にお参りするところ」

『める、おまいりはトクイです。ラーメン』


 宗教違ってるし、多分それはお祈りだと思うし、しかも根本的に間違ってるね?

 お腹が減ってるのかな?


「その得意なお参りをするには、どこに行けばいいかな?」

『める、わかります。えっへん』


 ……分かるのかー、エライなー。


「じゃあ連れていってもらえるかな?」

『いいかもー?』


 疑問形なの!?


『こら、める! 困ってるでしょ! お姉さんに代わりなさい』

『はーい、ラーメン』

『ったく……ごめんなさい、ウチの子供がご迷惑をかけて……』


 女の子に代わって、大人びた女性の声が聞こえた。

 多分あの子のお母さんなのだろう。


「あぁ、大丈夫ですよ。俺が道を聞いているだけですし、お母さん」

『お……』

「お?」


 インターフォンが切れたのか、急に声が聞こえなくなった。


「大丈夫ですかー、お母さん」

『お母さんじゃないわよ!! まだ中3よ、童貞!!』

『姉上、あんまり家の恥を晒さないでください……戻って戻って』

『私はまだ処女よおおおおぉぉぉぉ!!』


 ……賑やかな家ですね、ええ。そりゃびっくりしますよ、中3の女の子が処女だとカミングアウトするところが、また。


『姉と妹が迷惑をかけて、本当に申し訳ございません』


 これまた女の子の声が聞こえた。姉と妹、と言っているから中1ぐらいだろうか。


「まあ、元はと言えばコッチが悪いから、気にすること無いよ」

『はぁそうですか、それでなんですけど……訪問販売は法律で禁じられていること、知ってます?』

「セールスマンじゃないって!! ただ神社への道を聞きたいだけ!!」


 しっかりしている子だけど、いろいろと周りが見えていないな、コンチクショウ。


『神社ですか……因みに、年齢は?』

「俺か? 俺は16だけど」

『スイマセン、兄からのお達しで年上の男性が1m以内に入れないので、本当に申し訳ございません』

「いや、道を聞いてるだけなんだけど!?」

『難しいので、誰かに連れていってもらわないと無理かと』

『おい、誰と話してるんだ。える』

『兄様……神社に行きたいって男性の方が』

『男だとこの野郎』


 おいおい……どんだけ人が出てくるんだよ……コントか? コントでもしてるつもりなのか?


「あ、お兄さんですか、実は……」

『妹は嫁にやらんぞ!!』

「いや、お義兄さんじゃなくて、え……と、とにかく道を……」

『地図を出してやるから、それで行け』


 するとドアが一瞬開いて、紙切れが1枚ひらひらと舞い出て来た。

 真っ白な紙の上にトイレや風呂、そしてリビングにダイニングの場所が書かれていて、これでトイレまでの道に迷うことはもう無い。


「って、この家の見取り図じゃん!! よくこんなのあったな、おい!!」

『一番上の姉が家で時々迷うから置いてあるんだよ』

「方向音痴ってレベルじゃねえな、それ!! で神社はどこだよ!!」

『それが頼むヤツの態度かよ、じゃあな』

「おい、おい、おいいいいぃぃぃぃ!!」


 ブツっと通信の切れる音が聞こえ、俺はこの家の住民とのコミュニケーションツールを失った。

 ふっ、まだ1件目だ……大丈夫、次があるに違いない、次が……。


 次は右の家に行こうかとした時に、目の前に見知った顔があった。


「彷徨われし混沌?」


 というか、度会だった。

 もしかして見られてたんじゃないだろうな……。


「き、奇遇だな。度会、ちょっと道に迷ってな……神社に行きたいんだが」

「私にお任せ」

「そ、そうか……なら頼む」


 良かった……どうやら見られてなかったようだ……。

 こんな失態を目撃されていたら、一体どんな仕打ちを受けるか……。


「その代わり、道中で今、何をしていたか聞き出す」

「ですよね!! ゴメンナサイ!!」


 今日一番謝ってる理由が分からなかったが、頭を深々と下げた。

 度会はそれに満足したのか、


「では、いざ」


 と言って、颯爽と歩き始めたので、それに俺も付いていくことになったのだった。

根「第15話更新ダ」

葉「新作も合わせてみていってくださいねー☆」

根「それはそうとだナ、ワタシ達の影が薄くなってきているのだガ」

葉「私達は新聞部ですよー☆ もうでしゃばるのはやめにしましょう☆」

根「そうだナ、仕方ないナ」

葉「まあ、私は既に出ましたしー☆ ぶっちゃけどうでもいいです☆」

根「……殴り落とス」

葉「最近気性が激しいですね☆ というわけでまた次回に行きますかね☆」

根「次回に葉堀は絶対に出ないゾ、ではナ」

葉「なにそれひどい☆」

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