12.文化祭前は、お祭り騒ぎです。
♂×♂
(ピュ~ポロポロポロ~)
「う☆ら☆め☆し☆やー☆」
「ずいぶんと明るいお化け屋敷だなオイ!!」
今日は文化祭の3日前、新聞部がお化け屋敷をやるらしく、俺もプレテストに参加させてもらっている。
新聞部のお化け屋敷と言えば毎年恒例の名物企画らしく、他の部活とコラボして様々な見せ方で観客を楽しませる。
化学研究部とコラボして化学マジックで火の玉を作り出したり、生物研究部とコラボして学校で飼っている生き物達を地面に放してみたり、エトセトラエトセトラ。
今見せられているのはお笑い同好会とコラボした、通称『ツッコミを入れたくなるお化け屋敷』である。
お化け屋敷を出ると、お笑い同好会の部長であるジローが声をかけて来た。
「なんや、ヤオやん。今日はえらいツッコミが冴えとんなぁ。ついにワイの同好会に入る気になったんか?」
「いやお前、自分が考えたコンセプト忘れたのかよ!?」
「いやなー、5月に入ろうとしてんねんから、そろそろ鬱病になるんかー思て」
「5月だからと言って5月病になるわけじゃねえよ!?」
因みにココ、蘇芳学園はゴールデンウィーク真っ只中の5月2・3日に行われ、その後に高校3年生は受験勉強が本格的になり、その他の生徒は中間テストが迫っている。あぁ、勉強はしてるぞ? まだみんなに追い付くまでとはいかないがな。
とりあえず言えるのは、今日は4月29日、昭和の日というわけだ。
昭和の日に学校に来ているのは言わずもがな、ディベート部での出し物の準備のためである。
だったら、何でお化け屋敷に居るのかって?
それは時間を遡ること、1時間前……。
♂×♂
柚木崎の鶴の一声で祝日出勤(?)させられた俺たちは、理由も聞かされないままにディベート部の部室に集合した。
「それで、文化祭で私達の部は何をしようかしら?」
そこで柚木崎は、こんな問題提起をしたのである。
「って、やる事すら決まってないのかよ!? あと3日しかねえぞ!?」
「去年も3日で何とかした実績があるから大丈夫よ」
「それは先輩が居た頃の話で、1年生が1人しか居ない今、限りなく無理に近いと思うのだけれど」
「美羽は働きますよ、百人力ですよ」
「それなら僕は千人力だー」
5人で会話すると、やはり話の収拾がつかないな。
「因みに去年はどんなのをやったんだ?」
「『文化祭でするならどっち? メイド喫茶vsお化け屋敷 公開ディベート対決!』よ」
「なんで文化祭で、文化祭の出し物討論会をしてんだよ!?」
結局間に合っていねえじゃねえか!!
「お堅いことを言わなくても良いじゃないの。あ、でも下の方はお堅い方が良いわね」
「朝から下ネタ全開だな、オイ!!」
知識の一件で、実技には全く耐性がないと判明した柚木崎だが、下ネタだけは健在ぶりを見せていた。
あの一件は、結局のところ部長が手回しをしてくれていたらしく、スムーズに事が進んで件のいじめっ子が自供するのに時間を要さなかった。
盗難は犯罪なのですぐに退学になると俺達も思っていたのだが、お金を使っていなかった事と、知識やその他の盗難に遭った生徒による一斉弁護のおかげで、全額返金した上での1週間のボランティア活動を課されるのみに留まったらしい。
知識もよく許したなあと感じたが、やはり自分のせいで人に迷惑がかかるのは後味が悪いらしく、自分のためだったんだと知識は意地を張っていたので、あまり言及しないことにしたのである。
とまあ、なんだかんだと言いつつも、部長も部長で『やれば出来る部長』というのを部内に知らしめたのだが。
「部長、一昨年は何をやったんですか?」
「……ここで睡眠してたのな」
高1の時からダメダメだったのを寝袋に入ったままカミングアウトするものだから、本当の部長は別に居るんじゃないかと訝しく思っている。
「それだったら美羽たちが何をしたいか、意見を言い合ったらいいんじゃないですか? ね?」
知識、何故そこで俺に目配せをする?
ひとまず、知識の言う通り、やりたいことで考えられるだけの案件を1人ずつ出すことにした。
「まず定番ところとしては、去年のディベートでも挙げられていたように、メイド喫茶とお化け屋敷だと思うわ」
と、柚木崎は胸を張りながら言った。
「因みにそのディベートではどっちが勝ったんだ?」
「コストパフォーマンスとエロさではメイド喫茶の勝利、エンターテイメント性と回転率ではお化け屋敷の勝利ということで、接戦だったけど私はメイド喫茶を押すわ」
「いや、柚木崎の嗜好の話はしてねえよ!?」
「ディベートの勝敗はどちらの意見に説得力があるかで決まるから、勝ったモノが本当にいいものとは限らないわよ?」
「結局は選手の腕次第じゃねえか!!」
「口から出まかせを言う能力も、世の中では必要になってくるのよ?」
「…………」
社会の矛盾を痛感して、若干悲しくなった俺は、言葉を失ってしまった。
「私としては占いの館もありかと」
と、度会は遠慮がちに言った。
「やっぱり度会はオカルト系が好きなのか?」
「私の体は8割がオカルトで形成されている」
「水と合わせたら思いっきり100%越えてるよね!?」
「万物の根源は水であり、存在する全ての物質は水で形成される」
「タレスの哲学的考え方は良いから!! 全て化学で否定されてきたから!!」
急に二酸化炭素が水になるのなら、地球温暖化だって止められるに違いない。
「美羽はオフセット本を作りたいです」
と、知識は手を挙げて元気よく答えた。
「オフセット本って何だ?」
「あ、サンプル見ます?」
そう言って知識はかばんから雑誌のようなものを取り出した。
表紙には女の人の絵が描かれている。
心なしか、知識に似ているような気がする。
「ふんふん……なるほど薄い本って感じだな」
「これは同人誌です。そして美羽のやりたいことの結晶でもあります」
渡された雑誌を開くと、表紙の女性があられもない姿となって現れた。
「ぶーーーっ!? な、な、なな、なんで裸!?」
「そりゃあ同人誌ですから」
訳が分からん。
「そして最も重要なのは、これはやおい先輩のための美羽のカタログ本でもあるんですよ!!」
「知識のカタログ本……?」
「やおい先輩が私を妻とした場合に、どのようなシチュエーションを楽しめるかという参考書のようなものです」
「妻……? ふっ、何を言い出すかと思えば、妻か……え?」
頭が痛くなってきた。
「だからー、僕の許婚に手を出そうなんてー、百年早いよー?」
例のごとく、知識に蜂巣が突っかかる。
「本によれば幼なじみが幼なじみで終わる確率は99%です」
「1%でも可能性がある限りー、無いとは言えないよねー」
「スマン、2人とも意味の分からない論争をしないでくれ」
妻だの許婚だの、有りもしない設定を作るなよ。
「そして美羽の集計によると、やおい先輩は年下が好みです」
「どこでその情報を手に入れたか説明して頂きたいんだが!?」
それは蜂巣にもバレていない最重要機密のはずだぞ!?
「亮輔の年下好きは今に始まったことじゃないしねー、データフォルダーの画像には年下の子ばっかり入ってるしー」
「パソコン見やがったな、蜂巣!?」
どうやら、俺にプライバシーというものは無いらしい。
「って、俺の話はどうでもいいだろ!? えっと、つまり知識は同人誌? を作りたいわけだな?」
「オフセット本の場合は作る時間がありませんが」
「じゃあ言うなよ!!」
結局俺が被害を被っただけじゃねえか!!
「じゃあ僕は亮輔のお嫁さんをしたいなー」
と、蜂巣。
「その話まだ終わってなかったのかよ!? てかお嫁さんをするって何だ!?」
「結婚式でー」
「文化祭の出し物だっつってんだろ!?」
自分の妄想を人に押し付けるんじゃねえよ!!
「だから違うよー。僕と亮輔が夫婦の劇をしたいなーって」
「3日で用意できるものにしような!?」
「因みに台本は出来てるよー?」
「やる気満々だな!!」
その書いた台本を持ってきたらしいので、早速書いた本人に読んでもらうことになった。
「『桃太郎とかぐや姫』」
……今は聞くことに集中しよう。
「昔々あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山へ竹刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。そーしてあーしてこーしてなんだかんだでかぐや姫と桃太郎はおじいさんとおばあさんに介護することになったのです」
「物語のほとんどを省略してんじゃねえよ!?」
「そこは察してよー」
「察せるか!! 登場シーンまでは分かるが、急に介護の話になるとか察せるか!!」
「でもこの高齢化社会で重要になってくるのは介護だよー?」
「だからってかぐや姫と桃太郎が介護するシーンを誰が見たいんだよ!?」
とまあ、最後の2人はアレだったにしても、候補は出揃った。
「結局、メイド喫茶かお化け屋敷か占いの館か……」
「メイド喫茶はテニス部、お化け屋敷は新聞部、占いの館は野球部が毎年担当してるわよ?」
「それを先に言おうな!?」
結果として候補はすべて却下され、振り出しに戻った。
何故去年もこの学校に居たのに知らなかったのかは、察していただけるとありがたい。
「それだったらさー、とりあえず新聞部に行ってみないー?」
と提案するのは蜂巣。
「なんで新聞部なんだ?」
「新聞部のお化け屋敷は他の部とのコラボもやってるしー、僕達も混ぜてもらったらいいんじゃないかなー?」
「なるほどな、わざわざ1から考えなくても済むってことか。良いんじゃないか?」
「お化け屋敷とディベート部のコラボ……なんだかワクワクしてくるわね」
「私も『生と死の狭間にたたずむ洋館』はしたいと思っていた」
「やおい先輩と2人でくれば引っ付き放題なんで賛成です」
「亮輔と引っ付くのは僕だからねー?」
2人ほど趣旨が全く違う奴らが居るが、気にしたら負けなのでスルーしておこう。
「じゃー全会一致ってことでー、お化け屋敷に行きましょうかー!」
♂×♂
そんなこんなでお化け屋敷を訪れた時に、お笑い同好会と新聞部の打ち合わせに出くわしたので、なし崩し的にプレテストに参加しているというわけである。
「で、出来栄えはどや?」
「うん、ちょっと言わせてもらっていいか?」
「なんや?」
「どこで怖がればいいんだ?」
「ははは、面白いこと言うな、ヤオやん。このお化け屋敷が怖いわけないやろ?」
全く怖くないお化け屋敷って言うのも斬新だな……。
「それで、ヤオやんはなんで新聞部に来たんや? 用があったんとちゃう?」
「ディベート部の出し物が決まって無くてな、とりあえず新聞部とコラボしたら良いんじゃないかってことで来てみたんだが」
「さよか」
廊下にて男2人で会話を弾ませていたちょうどその時に扉が開いて、お化けの衣装を身に纏った女子たちが出てきた。
俺は客として参加したが、ディベート部の女子は諸事情によりお化けの代役として驚かせる側(?)に回っていたのである。
「私の衣装はどうかしら?」
柚木崎は紫を基調とした魔女。胸にはカボチャのマークがあしらわれている。
「まあ良いんじゃないか? 6ヶ月後のイベントだけどな」
「それは着せられたんだから仕方がないわよ。ついでにトリックオアトリート」
「ついでにがっつくんじゃねえよ!!」
胸が大きすぎて戦慄が走ったってのは伏せておこう。
「私の『かりそめの姿』も見てほしいのだけれど」
度会は黒を基調とした魔法少女。黒魔術の本を持っている。
「見事に真っ黒だな。てか、さっき居たか?」
「黒過ぎて見えなかったんじゃないかと」
「意味ねえじゃん!!」
実際にはただ単に見ていなかっただけの可能性が高いと思われる。
「美羽はどうですかー?」
知識は藍を基調とした魔術師。手にはなぜかバールを持っていた。
「なんでバール?」
「バールではありません、名状しがたいバールのようなものです」
「どうでもいいよ!!」
どちらにしろ、鈍器なのは変わらないしな。
「僕はー?」
蜂巣は茶色を基調としたローブを着た魔法学者。伊達メガネをかけており、いつもと雰囲気が違う。
「眼鏡も似合うもんだな」
「!!」
「いや、深い意味はねえよ!?」
ただギャップがあって少し心が動いただけだ。
「で、改めて、どや?」
一通り見終わった上で、ジローから感想を求められた。
「じゃあ言わせてもらうけど、全員お化けじゃねえし、全部魔法関係だよな!?」
「それがなんか問題でもあんのかいな? このコンセプトにおいて」
「全く無いな!!」
既にコンセプト自体が破たんしていると思うのだが、これ以上に突っ込んではいけない問題はないだろう。
「そんで、新聞部とコラボしたいとか言ってけど、それは無理やで?」
「なんでだ?」
「既に新聞部のスケジュールが埋まってて、枠がないんや」
「え?」
それは全ての希望を絶たれた瞬間だった。
根「第13話更新ダ」
葉「シリアス臭が0すぎて逆に困りますね☆」
根「まあ、前回までが第1巻としたら、今回からは第2巻てことダ」
葉「少し短い気もしますが、足そうと思えばいくらでも盛れるので今は良いとしましょう☆」
根「今回からは文化祭編だナ」
葉「根堀の予言が当たって少し怖いですよ、私は☆」
根「次の予言は何にするカ……出来ればワタシも出るような予言が欲しいナ」
葉「新聞部まで来てくれたのに顔一つ出してないですもんね☆」
根「……悪かったナ。名状しがたいバールのようなもので叩き落とすゾ」
葉「何を叩き落とすんですか☆ 怖すぎる☆ というわけで今回はここまで☆」
根「一旦幕を叩き落とすゾ」
葉「下ろすですけどね☆ 感想なんかも書いてもらえるとありがたいです☆」
根「ではナ」




