10.残された証拠を、くまなくかき集めました。
♂×♂
校門の前では、既に他のみんなが集まっておそらく聞き込みをしていた。何故おそらくなのかというと理由は簡単で、他のみんなのメンバーというのが人を近付かせない柚木崎と人に近付けない度会だからである。
そのためか人が無意識に2人を避けるためか、2人の周りにはポッカリと空間が出来ていた。
「って、結局何もしてないじゃん!!」
「ヤれることはヤったんですわよ?」
「やってもねえし、ヤってもねえだろ!?」
ここら辺は言葉の綾だ。
「私はダークマター、副部長はダークエナジーが無意識に流れ出てる気がする」
「どういう喩えなのかがサッパリなんだけど!?」
「コスモパワー、フルスロットル」
「適当にカタカナ語言いたいだけだろ!?」
全く理解しないで日本語を使うなよな。
こういうところに知識が居れば、雑学の一つや二つを言ってくれるだろうになあ……。
よし。
「じゃあみんなで、張り切っていこうぜ!!」
「でも亮輔ー、2人が居ると却って邪魔になるんじゃー?」
当人たちはビクッと体を震わせた。
「人それぞれ適材適所ってのがあるだろ。ココは俺達でやるから、2人は先生に事情を聞きにいってくれよ」
重大な問題だと先生は口を開かないが、それは事実のイエスとも取れるはずだ。
「「「…………」」」
俺の提案を聞き、何故かポッカーンとする2人。そして蜂巣だけは笑っていた。
「え? 俺、なんか変なこと言ったか?」
「いえ、変ではなくてよ」
「変と言うより、変わったと言った方が正しいと思われる」
「なんせ僕のお婿さんだからねー」
「断じて違う!!」
「気にしちゃダメス☆」
「気にするわ!!」
にしてもそうか、俺は変わったように見えるのか。
考えさせられることが色々あって、価値観とか考え方とかが変化してきたのかもしれないな。良い傾向だ。
「とりあえず、俺の案で良いのなら、迅速に行動するぞ! タイムイズマネーだ!」
「分かりましたわ」
「分かった」
「りょーかーい☆」
こうして、俺達は二手に分かれて聞き込みを開始するのだった。
♂×♂
校門で待機していた俺と蜂巣は、登校してくる生徒に片っ端から声をかける。
「スイマセン」
「…………」
「あのーちょっと」
「…………」
「ごめんなさい、あの」
「…………」
三人ほどに無視をされて丁寧語を話すのが嫌になってきた頃、押しに弱そうな男子高校生が通りかかったので、目の前に出て、男子高校生の行く手を阻む。
「お、お時間少々いただけませんか?」
「いや、急いでいるので……」
断られそうな雰囲気になったことに気付いたのだろうか、蜂巣が俺の隣に並んでフォローする。
「ホントにちょっとだしー、すぐそこは学校なんだからさー、ちょっとくらい良いでしょー?」
「でも、荷物とか……」
「なら僕達も教室まで付いていくけどー? 量より質だしねー」
「……少しだけですよ?」
というわけで、少々強引だが、男子高校生1人を確保することに成功したのである。
それにしても、蜂巣は交渉術が上手いな。次に声をかけるときは使ってみよう。
「それで、君は一年生?」
「確かに一年生ですが……それが何か問題でも?」
「知識美羽についてなんだけどねー? 怪我した理由とか、知らないかなー?」
「あー、知識さんですか。ボクのクラスじゃないですけど頭にボールが当たったとかで大騒ぎしてましたね」
「それだけか?」
「うーん、別にコレと言ってないと思いますが」
結局、俺達が今までに掴んだ情報と同じレベルの話しか知らないらしい。
お手上げ状態になったため、早くこの男子と別れて次の人に行きたいので早々にお礼を告げようとしたが、蜂巣はそれを制止し、
「じゃあさー、君は知識美羽と同じクラスの友達とか居ないかなー?」
「ボクはDクラスなんですが、合同授業とかでCクラスとは顔を合わせてるので、数人くらい顔なじみは居ます」
「その人たちを紹介してくれないかなー?」
「良いですよ」
蜂巣はどうだと言わんばかりに、俺の方を見てドヤ顔とウインクを同時に繰り出して良く分からない顔を見せてきた。
ちょっと残念なところもあるが、やっぱり凄いな、蜂巣は。瞬時にしてアプローチ方法を変えて確信にまでたどり着きやがった。
こうして俺達はその1年D組の男子A君に連れられて、知識が所属する1年C組へと向かうのだった。
♂×♂
「てかさ」
歩いている道中で蜂巣に話しかける。
「今さらだけど、最初っから1年C組に行けば良かったんじゃ?」
「それはないねー」
俺の課程を全否定する蜂巣。
「僕達は1年C組に知り合いなんて居ないでしょー? 知らない人が急に教室へ入って『聞きたいことがあるんですが』って言うのとー、友達から紹介された夫婦に『聞きたいことがあるんですが』って言うのとー、どっちが聞いてもらえると思うー?」
「後者の方が良いかもな……夫婦じゃねえけどな」
「娚の方が良かったかな?」
「意味が変わってないけど!?」
「これが本当の夫婦漫才だよねー」
「どやかましいわ!!」
本当は結婚をそんなに軽く考えないでほしいんだが、ひとまずコレで済ますことにしよう。
そんな俺達の会話を聞いていたA君は不思議そうにこちらを見て、
「ところで、お二人は付き合っていらっしゃるんですか?」
「何でそう思う?」
君ね、人が終わらせた話題をぶり返さないでもらえるかな? とは口が裂けても言えないので、とりあえず理由を問う。
「いや、なんというか……恐縮ですが、じゃれ合ってるように見えまして……」
「なるほど、春ってこともあって花粉症は流行っているからな。これからは目をこすらないように注意するんだな」
「それ遠回しにボクの目が節穴だって言いたいだけですよね!?」
ばれたか。
「蜂巣以外で、俺と蜂巣が彼氏彼女に見えるヤツがこの世に存在すること自体があり得ないからな」
「あの世の存在認定ですか!?」
おそらく幽体とか幽霊とか、その様なものだろう。
「僕はいつでも付き合っていいと思ってるけどねー、亮輔がオーケーしてくれないんだよねー」
「え、一方的な愛……? じゃあ何でお二人は一緒に行動してるんですか?」
「異性の幼なじみという切っても切れない鎖で拘束されてしまってな」
幼なじみという単語を聞いた途端にA君は全てを理解したらしく、負のオーラを漂わせた。
「あー……、異性の幼なじみですかー……実はボクも居るんですよねー……大変ですよねー……女子の幼なじみ」
「なんだ、お前もいるのか。それを先に言えよー、だったら悪いようにはしなかったのに」
少なくとも罵倒はしなかった。
「女子の幼なじみがいるって基準で動くのはどうかと思いますが……っと、着きましたね。友達を呼んでくるので、とりあえずこの話は次の機会ってことで宜しくお願いします」
「おう、ありがとな、同志よ!!」
俺とA君はガッチリと握手を交わして、A君はC組の部屋へと消えていった。
その後、蜂巣に無言で足を踏みにじられて一時的に赤みが増したのは自業自得なのかもしれない。
♂×♂
およそ3分後、A君が可愛らしい女子生徒を1人引き連れ、俺達の元へと戻ってきた。
その後、A君は軽いあいさつ程度で自らのクラスであるD組へと入っていき、3人が廊下で取り残される。
沈黙しているのはどうかと思って、俺から女子生徒Bさんに話しかけることにした。
「なんで呼ばれたかとか、あの子から聞いたかな?」
「……聡、何も言わなかった」
なるほどA君の下の名前は聡と言うらしい。
「じゃあ早速で悪いんだけど、知識美羽のことについて、何か知らないかな?」
「……誰?」
ん?
「君と同じクラスの知識美羽さんなんだけど」
「……?」
何故分からない。
「あの知識美羽だよ、1年C組21番の」
「……?」
「亮輔は説明下手なんだよー、僕に任せてよー」
確かに俺が質問しても答えてくれないだろうし、仕方なしに蜂巣とバトンタッチする。
「えとねー、いつもマヨネーズを持ち歩いてる生徒さん知ってるかなー?」
「……見たことは」
「じゃあじゃあ、この前の体育で野球した時のこととか覚えてるー?」
「……補欠だから、本、読んでた」
それはダメだろ。
「その時に何か変わったこと、無かったかなー?」
「……その時の本、つまらなかった」
先ほどから話を聞いてきて分かったことがある。
このBさんは自分の周りしか見えてない、つまり自己中心的な人だということだ。
「えっと……聡くんとはどういう関係なのかなー?」
あ、逃げた。
「……男と女」
「ただれた関係にしか聞こえないよー?」
「お前もほぼ同じこと言ってただろ!?」
蜂巣の無責任なツッコミを隣で正してやる。
「……飼い主と犬」
「どっちが犬かによってエロさが変わってくるよー?」
「結局は両方エロいじゃねえか!!」
蜂巣の意味が分からないツッコミに対してツッコミを入れる。
「……名字が一致」
「もう結婚まで済ませたのー? 早いねー、僕のとこはまだなんだー」
「まだ高校1年生なのに出来るかよ!! てか、お前のとこの婿って誰だ!?」
「亮輔にー決まってるよねー」
「だから!!」
柚木崎が居たら食いつきそうな話題のオンパレードだったはずなのに、何故お前はそれに帰結するんだ!!
「……従兄妹、だから」
「そして禁断の関係へと続くんだよねー?」
「蜂巣、いい加減にしないと目的を果たせなくなるぞ?」
直接的に言うのは無理だと判断した俺は、サッサと本来の目的を遂行させるために軌道修正させた。
蜂巣は言われるまでもないといった顔をして、
「分かってるよー。じゃあさー、その時に不快な音は聞かなかったー?」
「……ガシャンと、2回続けて鳴った。うるさかった」
「ガシャン、か。後ろの網にボールが当たったのかもな」
「それにしてもー、2回続けては不自然かもしれないねー。それで?」
「……ない」
この後も質問を変えて聞き続けたが、どうやらBさんの知っていることは以上らしい。
「そうか、ありがとな」
「長い間付き合わせて悪かったねー。じゃあ、聡くんに宜しくねー」
「……ん」
こうして俺達の一年生への聞き込みは終わった。
♂×♂
放課後、みんなで集まって結果報告会が開かれた。
柚木崎によると、やはりというかなんというか先生たちは黙秘を貫いたらしく、相手にすらされなかったらしい。
「私達が聞いてきたことは以上ですわ」
「よし、じゃあ俺達の番だな」
俺と蜂巣で一年生の二人に聞いてきたことを洗いざらい話した。といっても、今回の成果は2回続けてガシャンと鳴った音だけなのだが。
しかし、それを聞いた柚木崎は何故かニヤリと微笑んだ。
「なんだ?」
「いや、これほど単純だったのかという事に気付いてしまって、胸糞悪くなったのよ」
「気付いたって……お前、分かったのか!? 真相が!!」
「私の推理が正しければ、全て辻褄が合うわ。でも、確証がないのよね。だから、やって欲しいことがあるの」
♂×♂
柚木崎の指示により、俺は担任の先生に話を聞きに行った。
その内容というのはズバリ、盗難がいつどこで起こったかだ。
盗難と知識とを何が結ぶのかは分からないが、柚木崎にしか見えていない事なので仕方ない。
その先生曰く、
「盗難は2年と3年の生徒が3人ずつ、いずれも4日前の移動教室の間に盗られたのと、2日前にお笑い同好会ですね」
とのことらしい。4日前というと、俺がディベート部に入る前じゃないか。しかも同じ日に……。どういうことだ?
先生にお礼を言って、次に指定された場所へと走る。
次に指定されたのはお笑い同好会、ジローとマイコーの居る場所だ。
ドアをノックしてから部屋に入ると、2人は絶賛ネタ合わせ中だったらしく、ノート片手に並んで立っていた。
「おーなんや、ヤオやん。えらい久しぶりやな」
「そこまででもないぞ?」
「あれ、そうやったかな……えらいおうてないとおもたのになあ」
「ウチもその様な気がしまんなあ」
2人して頭をかしげる様子は、流石は双子といったところだ。
しかし、そのようなことに感心しに来たわけではない。
「急で悪いが、お前らが見つけた『呪いのゴールデンボール』ってどこにある?」
「気色悪かったさかいに、まだボール入れの中にツッコんどるよ?」
「それを貸してくれないか?」
「んなもん、ウチ達には必要のないもんなんで、いくらでも持って行ってもかまへんよ」
2人の了承を得たところで、ボール入れの中から血の付いたボールを探し出して、それをポケットの中に入れる。
「じゃあ俺、急ぐから、またな!!」
そして返事を聞くのも億劫になった俺は、いつの間にか部屋を飛び出して、次の場所へと向かっていた。
♂×♂
手分けして情報を得て来た俺達は、一度集めて来た情報を整理するために、備品のホワイトボードに現在分かっていることを書き記した。
・知識の頭にはボールに当たった傷があった
・血の付いたボールは2日前の放課後に発見された
・血の付いたボールが発見された時には部費は消えていた
・部費以外の盗難は全て4日前に起こった
・頭にボールが当たったのは4日前
・バックネットに2回連続でボールが当たった
・3日前に知識は学校を休んでおり、2日前も午後からの登校だった
既存の情報もあったが、知らなかった情報もたくさんあり、情報過多で頭が混乱しそうだ。
「…………」
コレらを無言で眺めていた柚木崎は、疑念が確信に変わったらしく、一つ二つとうなずいたかと思うとかばんを持って外へと飛び出した。
「っておい、どこに行くんだよ!!」
「知識の家よ!」
一目散に柚木崎が走っていく背中を追って、俺達3人は知識の家へと急ぐのだった。
根「第11話更新ダ」
葉「文字数の問題で、12話と分けたのは秘密ですよー☆」
根「しかしオシッコや我らが度会に、あんな不得意な分野があっただなんてナ」
葉「前もこんな事があったような気がしますけどねー☆」
根「因みにワタシの不得意な分野は体育だナ。胸の意味デ」
葉「む☆か☆つ☆く!! 私の不得意な分野はですねー、おくらですね」
根「食べ物を好き嫌いするから成長しなイ、胸の意味デ」
葉「……あとで抹殺しますからね☆」




