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その4



○登場人物


  城前あかり・しろまえあかり(トップアイドル、過去に大きな傷を持つ)


  水科幸太郎・みずしなこうたろう(あかりの育ての親、過去に大きな傷を持つ)


  城前修吾・しろまえしゅうご(あかりの父親、酒とギャンブルにおぼれる暴君)


  城前和子・しろまえかずこ(あかりの母親、修吾におびえながら毎日を過ごす)





 次の日から僕の家での共同生活がはじまった。僕は女の子のことを名前のあかり、向


こうは僕のことを幸ちゃんと呼ぶことになった。


 あかりには基本的に奥さんのものをそのまま使ってもらった。一人分あいてしまった


ものがあったし、経済的に子供用の一式をそろえる余裕もなかったから。いろいろなも


のが一回り大きくて勝手はわるかっただろうけどじきに慣れてくれるだろう。奥さんが


いなくなった二人暮らしの部屋をどうしようかとも思ってたからちょうどよかったかも


しれない。


 最初はあかりはどういう対応をしていいのかわからないという感じだった。父親の暴


力や母親の無機質におおわれていた生活から一変した環境にとまどって。普通以下とい


える質素な生活しかあたえてあげられなかったのに、それでもありあまるぐらいだった


ようだ。


 僕自身はこの生活を手さぐりでこなしていた。奥さんとのあいだに子供はいなかった


からいきなりこんな年齢の子との共同生活にとまどって。しかも、女の子ってことがな


おさらだった。


 ただ、この時間を大切にしようと思った。この子はあのとき会ったばかりの僕を信じ


てここまできてくれたわけだから。大人に恐怖心をだいていたはずなのに、もう一度だ


け信じてくれたんだから。僕がその手をはなしちゃいけない。幸せにしてあげなくちゃ


いけない。


 僕としても救われた部分はあった。奥さんとの別離の悲しみをぬぐいきれずにもがい


てたけど、この子をそだてていくという活力を得ることができた。また頑張ってみよう、


そう思えた。


 お互いの傷が癒えるまでには時間がいったけど、僕らは少しずつ距離をちぢめていこ


うとしていた。




 共同生活がはじまってから少し経ったとき、あかりは小学校に行きだした。正直、あ


んなことがあった後だけにちゃんとやれるかは心配だったけど、こっちが思うほど問題


はなかったようだ。後で聞いた話だと、かなり緊張したけど僕に心配をかけないように


明るくふるまうよう心がけていたらしい。


 学校に行くようになってからあかりは家でも明るさを見せるようになってきた。僕と


のコミュニケーションも自然にできるようになり、笑顔も見せるようになった。友達が


できたこと、授業で寝ちゃったこと、給食がおいしかったこと、心をひらいていろいろ


話すようになってくれた。


 生活を続けていくごとにあかりは僕との距離を近くしていってくれた。その日あった


ことをなんでも話してくれたり、一緒に外に出かけて手をつないで歩いたり、家事の手


つだいをしてくれたり、寝るときにそばに来たり。時間をかけてちょっとずつ絆はつく


られていった。


 僕は家族にも仕事の同僚にも昔の友人にもあかりのことは内緒にした。説明できるよ


うな関係ではなかったし、適当につくろうことも苦手なタイプだったから隠しとおすこ


とに決めた。近場に知人はいなかったし、家に誰かをまねくこともなかったからそんな


に問題もない。


 知人からの誘いはなるべくことわっていたけれど、毎回というわけにもいかないから


たまには付きあった。そのときはあかりを一人きりにさせてしまうけれど、ケーキでも


買っておくとごきげんは戻ってしまうもんだった。


 実家に帰省するときにはあかりも一緒に連れてった。隣町のホテルを予約しておき、


僕だけが実家に向かうのが常になる。ホテル側には仕事の都合とあらかじめ断りは入れ


ておく。それでもできるかぎりは戻れるようにしていた。心苦しいけど、あかりも納得


のうえで我慢してくれていた。


 あかりの親族とは定期的に連絡をとっていた。ただ、それはいたって事務的な確認と


いう名目のように感じられた。この人たちはあかりにさほどの執着はないと思うには充


分なほど。親族のくせにとは思ったけど、あらためて自分が引きとってよかったと思え


たし、あかりを幸せにしてやれるのは自分だけだと強く持った。親族との関係は意識的


に疎遠にしていった。



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