その3
○登場人物
城前あかり・しろまえあかり(トップアイドル、過去に大きな傷を持つ)
水科幸太郎・みずしなこうたろう(あかりの育ての親、過去に大きな傷を持つ)
城前修吾・しろまえしゅうご(あかりの父親、酒とギャンブルにおぼれる暴君)
城前和子・しろまえかずこ(あかりの母親、修吾におびえながら毎日を過ごす)
翌日、一連のできごとは殺人事件としてテレビや新聞などで全国に知れわたることと
なった。
父親の城前修吾が殺され、母親の城前和子が行方不明。警察がかけつけたときには娘
だけがポツンとそこにいた。
母親が犯人で自ら行方をくらましたのか、別に犯人がいて母親を誘拐したのか。形跡
の残されていない現場から考えられるのはこのへんだろう。
女の子には「寝ていて、起きてきたらもうこうなってた」と言うようにしておいたし、
あの母親も普段から「こんな生活、抜けだしたい」となげいてたらしいからバカなマネ
はしないだろう。
女の子の引きとり先がどうなるかは正直なりゆきとしかいえなかった。祖父母か親戚
の家にあずけられるのが普通なところだろう。
でも、僕はそれはのぞまなかった。僕がそばにいてあげたいと強くねがっていた。何
も裏側にある事態を知らない人たちよりもあの子の思いを分かってあげられる僕が。
そのためのなるべくの布石はした。葬式には参加して、父親とは親友で家族ぐるみの
付きあいをしていて、女の子には本当の兄のようにたよりにされていると嘘をついた。
女の子の演技もよかった。親族の前では気丈にふるまっていたのに、僕が葬式にあら
われたとたんに駆けよってきて大声で泣きだした。その後も葬式のあいだ僕の腰にしが
みつくようにして悲しい表情をつづけていく。僕との関係が深いものに見せるには充分
だった。
精進落としにも出席させてもらうと、そこで女の子の引きとり先の話しあいがおこな
われた。両親の介護やら金銭的余裕がないなど、どこも消極的な話ばかりをしていく。
言いかたを悪くするなら、なすりつけあうように誰かが折れてくれるのをまっている。
こんな人たちのところに行ってもあの子はしあわせにはなれない。
「僕が引きとってはいけないでしょうか」
親族のあいだを割るように声を張ると、全員が理解をしかねる表情になっていた。誰
も予想もしていなかった展開だし、まぁそうなるだろう。
そこから僕は思いのたけを語りつづけた。父親には世話になったから恩返ししたい、
女の子も僕になついてくれてる、独り身になったばかりで時間的にも金銭的にも余裕が
ある、絶対に不憫な思いはさせない、そうまくしたてていく。借金があるのはかくし、
奥さんが亡くなって今はとてもさびしいと情に打ちまくった。
親族もだまって話を聞きつづけていたけど首を縦に振るのはしぶっていた。僕が引き
とることはありがたいぐらいのことでも、他人にあずけるのはどうかという体裁が邪魔
をして。
立ちあがり、部屋の隅にいた女の子のところに歩みよるとしゃがんで同じ目線になる。
名前をよぶと静かに顔がこちらへ向いた。
「おにいちゃんと一緒に暮らさないか」
そう願いでると女の子は数秒おいてゆっくりうなずいた。
「ありがとう」
優しくほほえんで女の子の頭をくしゃっとなでてあげると親族からの反論もスッとや
んでいた。




