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具合が悪くなるほど日差しが強い8月のある日。
私は道路を歩いていた。ただ当てもなく。
今日はいつもつるんでる仲間は忙しくて私は一人。
だからとても暇だった。歩くのに理由などない、それだけだ。
とりあえず、漠然と行きつけの楽器屋に行こうとは思っていた。
何もなかった。平和だったのだ。そのときまでは。
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不審者っていうのは、ああいうもののことを言うんだろうなぁ。
思わず立ち止まって私はその不審な二人組を見つめていた。
先ほど言ったとおり、8月だ。季節は夏。しかも今日は具合が悪くなるほど日差しが強い。
そんな中、真っ黒なコートを羽織った頭から靴の先まで真っ黒な男が二人、何もない誰もいない静かな公園に立っていた。
通報、するべきなんだろうか。
頭、おかしいんじゃないの。
なんてことを考えていたら、突然二人組と目が合った。
あ、気づかれちゃった。どうしよう。めんどそうだな。
なんてのんきなことを考えていたとき、気づけば目の前に二人組の片割れ・・・私とあまり年のかわらなそうな少年が、立っていた。
黒髪、黒いコート、黒いズボン、黒い靴。すべてが黒々とする中、燃えるような赤い目だけが挑戦的に光っていた。
少年は私の目をまじまじと見て、それから頭から靴の先までをじろじろと探るような目で見た。そしてまた、私の目を見た。私も負けずにじろじろと見返した。見れば見るほど怪しい少年である。
そして気づけばそばに二人組のもう一人が立っていた。
少年というより、青年と言った方がいいのだろう。少年よりは髪が少しだけ長く、背が高いが、そっくりだった。兄弟だろうか。
太陽の光が暑く、私の頬を汗が伝い始めたときだった。
「お前、ヤハラミヅキだな?」
少年が口を開いた。
そのとき、少年が初めて、笑った。
◆
平和で静かな小さな町。
どこかで銃声が鳴った。