俺様少女の告白
ヒロインは口が悪いです。フィクションですから、お許しください。by.Aki.
告白とは、自らが心に秘めた感情を相手に伝える行為である。
体育館裏、誰の見ていない場所で一人の美少女が少年に想いを告げていた。
「好きだと言ってるだろ? なぜ俺と付き合わない?」
体育館裏、誰も見ていない場所で一人の(変な)美少女が少年に想いを告げていた……。
「なぜって京子さん。まず、あなたのその口調ですよ」
「あぁ、しゃあねぇだろ。俺は俺だ。急にしおらしく『私と……付き合って?』とか上目遣いで言ってほしいのか? 変態」
「…………」
「おら、早く俺と付き合うって言って楽になるんだな」
とてつもなく勇ましい口調の京子さん。自分のことを『俺』と呼び、天上天下唯我独尊な彼女は下から物を頼むということを知らない。
「あのですね。京子さん「黙れ。貴様の言い訳など聞かん」
告白されている少年は溜息を吐いた。しかし、京子さんはそれを見て、なに、レディの前で溜息吐いてんだ。と、少年の頭を殴った。
「貴様の答えは、はい。かイエス。のみだ」
「両方とも同じ意味じゃないですか」
「なんなら、ウイ。でもいいぞ?」
「それも同じ意味でしょ……」
頭を抱えた少年だが、何頭抱えてんだ。と、また京子さんに頭を殴られた。
「じゃあですね。なんで、僕なんですか? 京子さんが僕を好きになるなんて考えられません」
「なぜ貴様に理由を述べなければならない? 聞かなくてもここで察しろ」
そう言った京子さんは、親指を立て、自分の胸をトントンと叩いた。
「じゃあ、わかりました。付き合います」
「なんで渋々付き合ってあげるみたいな雰囲気なんだよ? ぶっ殺すぞ」
じゃあ、どうすればいいんですか!? と、少年は嘆いた。
「土下座して『こんな僕とお付き合いして下さい。京子さん』と言いながら、俺の上履きを舐めろ」
「それじゃあ、まるで奴隷じゃないですか!? いやですよ!! そんなの!!!」
「貴様に拒否権はない。許されている言葉は、はい。かイエス。のみだ」
「その件さっきしましたよ……」
「さぁ、早く実行しろ」
仁王立ちした京子さんは少年をじっと睨む。少年はその綺麗な眼を見て、(恐怖で)ドキッとした。
「土下座は許容できます。しかしですね、上履きを舐めるのは無理です。ほら、バイ菌とか恐いじゃないですか?」
「大丈夫だ」
「いやいや、大丈夫じゃないですよ。考えてもみ「早くしろ。カス」
少年は泣きだしたくなった。あぁ、僕の平和は何処へ? と、心の中で思ったのは彼と読者様だけの秘密である。
「……きょ、京子さん!」
「あ゛ぁ!?」
「僕の嫌がることをして、そんなに楽しいですか?」
「……」
言い返すと思ったが、京子さんは静かになった。
「僕は……あなたの奴隷じゃありません。人として扱ってください」
「……そうだな。わかったよ」
「京子さん!!」
「人として扱ってやるから、まずは俺に服従しろ」
少年は絶句した。
「…………なぁー!?」
打つ手なしのチェックメイトだった。この状況は高校生の少年に辛いことだろう。
「俺に指図するな。どカスが」
少年はカスからどカスにランクアップした。
僕、告白されたんじゃなかったけ? そう思う少年は決して間違いではない。しかし、相手が悪かったようだ。
「仕方がないから『京子様、一生あなたに尽くします』と、誓約書に書け。そして、俺特製の首輪を着け、四つんばいで生活しろ」
「あなたさっき僕のこと人として扱うって言ったよね!!?」
「扱ってやるよ? 最低ランクでな」
少年は戦慄した。
「……京子さん」
「もう諦めろ」
「実は僕……」
少年はえらく真剣の口調で言葉を紡いだ。
「――恋人がいるんですよ」
「嘘こけ。童貞。知ってんだよ。貴様が今まで女と付き合ったことが無いことくらい」
「……むはっ!!」
限界だった。少年は心を抉られ、立つことすら出来ず、膝から崩れ落ちた。
「さぁ、ポチ。いい加減服従したらどうだ?」
うなだれた少年の頭を迷いなく踏ん付ける笑顔の京子さん。もう彼女を止めることは出来ないかもしれない。
「好きだ。だから、俺と付き合え」
台詞だけ見ると俺様な男だが、その台詞を吐いたのは可憐な美少女だ。
「一つだけいいですか?」
「無理」
「即答っ!?」
「どうせろくでもないことだろ? 聞くだけ時間の無駄だ」
まさか、手紙を受け取り、こんな展開になると思わなかった少年。
「横暴だ……」
「だったら、どうした? ハゲ」
「ハゲてないですよ!! 本当に僕のこと好きなんですか!?」
「好きだよ。徹底的にいたぶりたいぐらいに」
好きな子ほど困らせたくなるとはこのことか、京子さんは生粋のサディストらしい。
「こんな美少女に告白されてるんだからさ、二つ返事ではい。って言えばいいのに」
ぐりぐりと少年の頭を踏ん付ける幸せそうな京子さん。ここは高校なのか疑いたくなる状況だ。
「ぼ、僕は……」
「なんだよ?」
「実は京子さんのことが好きでした」
「知ってたよ。う〇こ」
ぐさり、という音が聞こえた気がした。少年は痛む胸を押さえた。
「だいたい廊下ですれ違うたびに俺のこと見てんだもん。いくらなんでもわかるわ。チンカス」
「…………」
「まぁ、それがきっかけで貴様が気になりだしたのもあるけどな」
最後の最後で少しデレた京子さん。
「最後だ。俺と付き合え。徹平」
「……オネガイシマス」
こうして、俺様少女の告白劇は幕を閉じ、少年との交際が始まった。
後日談
「使えねぇな。カス。俺は寿司が食いたかったんだよ」
「買ってきます!! 京子さん!!」
二人にとって、多分平和な日常。幸せの形は人それぞれです。
fin.
少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。by.Aki.