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第一章・第7話 ダンスパーティ -2-

「それじゃ、また後で」


教室の前で姫乃と別れ、席に向かう和章。


偉世はそんな彼の背中を追った。




「……なぁ」




「うん?」


少し遠慮がちに口を開いた偉世に和章が何気なく視線を移す。




「おまえと春川さんて……」




「?」




「……付き合ってる、のか?」


和章の答えによっては偉世は姫乃の事を諦めようとしていた。




偉世が姫乃のを意識し始めたのは一年生の冬の事だった。


学食でラス1のサンドイッチに偉世と姫乃が同時に手を伸ばした時、彼女が「どうぞ」と譲ってくれた。


そんな些細な事が切欠だった。




それから時々、学校内で見かける度に偉世は姫乃の姿を目で追うようになっていた。


初めはただ自分に優しく接してくれたから気になるだけだと思っていた。


しかし、それが段々姫乃の姿を見掛ける度に嬉しくなったり、笑っているところを


もっと見たいと思うようになった。




そして、それが“恋”だと気付くのにそう時間は掛からなかった――。




「……」


和章はただ黙っていた。


それは実際に付き合っている訳ではないし、かと言って“付き合っていない”と答えれば、


それじゃあ何故いつも昼休憩に二人で会っているんだと訊かれると困ると思い、


何も答える事が出来なかった。




「……」


偉世は何も答えようとしない和章に怪訝な顔を向けた。






     ◆  ◆  ◆






――週明け、ダンスパーティ当日。




偉世は学校を休んだ。




その事を和章から聞いた姫乃は……、


(まさか……星野君が学校を休んだのって……私がパートナーを断ったから……?)




「なんか風邪らしいけど、アイツ昨日も超ピンピンしてて元気だったのに絶対おかしいよなー?


 もしかして仮病かな?」


和章は姫乃の隣で首を捻っている。




(仮病……て事は、やっぱり……)




「それとも実はダンスのパートナーがいなくて、とか?」




「え……、星野君、他に誰も誘ってないの?」




「アイツが自分から言える訳ないじゃ~ん?」




「どうして?」




「星野ってさ、背も高いし、キリッとしてるイケメンのくせに硬派というか、


 全然チャラくないというか? だから、自分から女子に声を掛けるなんて出来ないと思うぜ?」




(それじゃあ……私に声を掛けてくれたのも、すごく勇気がいったんじゃ……。


 でも……、新田君の方を断ってたら……)


姫乃は偉世の誘いを断った事を後悔しつつ、自分を脅迫した和章の顔を恨めしそうに見つめた。




「あれ? 何? 俺の顔に何か付いてる?」


和章は姫乃の思いなど知らずに暢気に笑っていた。




「……別に」






     ◆  ◆  ◆






――翌朝。




(……あ)




姫乃が登校していると目の前を偉世と和章が歩いていた。


楽しそうに話しながら一緒に歩いている。


しかし、風邪だと言っていた偉世はいつも通りだった。


咳も出ていなければ鼻声にもなっていない。


風邪などひいている様子もなかった。




(やっぱり昨日休んだのは……)




姫乃は二人に気付かれないように学校まで歩いた――。

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