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第一章・第13話 二人きり -1-

五時限目が終わった休憩時間、宣言通り偉世からメールが来た。




----------


急なんだけど今夜、


二人だけで打ち合わせ


しない?


お互いの担当者を交えて


最終的な打ち合わせの前に


細かいところを纏めて


おきたいんだ。




春川さんが時間があれば


俺の仕事場でどうかな?




Ise


----------




(えっ!?)


思わず驚く姫乃。


おそらく用件は仕事絡みだろうとは思っていたが、まさかいきなり今夜、


しかも“二人だけで”と言われるとは思っていなかったのだ。




(な、なんて返そう……二人だけなんて緊張しちゃう……)


特に仕事が詰まっている訳ではないし、打ち合わせをする事も可能だ。


しかし、何度メールを読み返しても“二人だけで”という文字にドキドキしてしまう。




----------


うん、大丈夫。




姫乃


----------




だが、気がつけば姫乃はそう返していた。






     ◆  ◆  ◆






HRが終わり、教室を出ると偉世が廊下で待っていた。




「星野君、お仕事の方は大丈夫なの?」


姫乃が偉世の隣に並ぶ。




「あぁ、大丈夫。昨日思ったよりかなり捗ったから」


偉世は柔らかい笑みを浮かべて答えた。




「とりあえず、お互い考えてる事を俺の仕事場で纏めて行こうと思うんだ。その方がプロットを立てやすいから」




「うん」




「それで、さ……ついでに一緒に食事も……」


偉世は姫乃の様子を窺う様に遠慮がちに言う。




「うん、星野君が忙しくなければ」


姫乃は二つ返事で答えた。


もちろん、それはこの間の食事デートを断ってしまったからというのもある。




偉世は姫乃の笑顔を見て、段々ともしかしたら姫乃と和章の事は自分の完全なる誤解ではないのかと思い始めていた――。






     ◆  ◆  ◆






「春川さんのも乗せようか?」


偉世の仕事場へ向かう電車の中、長身の彼は軽々と網棚にカバンを乗せて姫乃に視線を移した。




「あ、うん」


いつも網棚にカバンなど置いたりはしない姫乃だが、電車内は帰宅する学生達で少しばかり混雑していた。


次の駅でも別の高校の生徒達が乗って来るはずだ。


そうなるとカバン一つあるだけでも邪魔になってしまう。


姫乃は素直に偉世の親切を受け入れる事にした。




「おなか空いてる?」




「ううん、星野君は?」




「俺もまだそんなに空いてないから、夕飯は打ち合わせが一段落してからでいいかな?」




「うん」




「春川さんて、いつも仕事の時、食事はどうしてるの?」




「ファミレスで沢村さん達と食べたり、コンビニでサンドイッチとかおにぎりを買っておいたり、


 後はたまにルームサービスかな」




「さすがホテル……」




「星野君は?」




「俺はアシスタントのみんなと作ったり、時間がない時はコンビニとか、デリバリーとか、


 たまに母親が作りに来てくれるよ」




「私もマンションだったらなぁー、自分で作れるのに」




「だけど忙しい時にご飯作らなきゃって思うと面倒臭いよ?


 それにホテルなら自分で掃除もしなくていいから楽じゃん」




「確かにそうだね」




「て、俺は料理出来ないし、掃除も隅々までやらないんだけどね」




「でも星野君のタッチって、繊細だから何でも几帳面なのかと思ってた」




「違う違う、俺の場合は普段がだらしないから、その反動が絵に行くんだよ」


そう言って笑った偉世だが、彼はわりと几帳面な方だ。


それは以前、彼が“清野四葉”として“一愛”に宛てた詫び状の文字を見てもよくわかる。


少し右上がりの大人っぽい文字で和章が書くような荒っぽい文字とは全然違うからだ。

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