由佳視点 アキト君
その後、彼は移動教室のことを思い出して、急いで教室へと帰っていった。
忙しないなぁと思いながらも、かわいいと思ってしまった。
少しにやけていると、私の近くに人が寄って来たのが分かった。
なんだろう。と見てみると、2人の女生徒だった。
女生徒はモジモジしながら、私にしゃべりかけてきた。
「あ・・・あの・・・。」
「何?」と聞くと、やっぱりやめる?とか2人で相談し始めた。
少しうんざりしながら2人の声を待っていると、2人はやっと話し始めた。
「・・・よかったら、私達にも数学・・・教えてくれませんか・・・?」
「・・・え?」
いきなりなんだろう。と思った。
今までクラスメイトが・・・人が話しかけてくるなんて初めてのことだった。
だから、顔には出さなかったがかなり混乱してしまった。
彼女たちは、私が黙り込んでしまったからかなり慌てていた。
「あっ あの・・・彰人君に教えてたから・・・説明がうまいって話をしているのが聴こえたから・・・あの・・・よければ・・・教えてくれない・・・?」
「えぇ・・・いいわよ。」
断る理由もなかった。
彰人君のこともあったから、気分もよかったしね。
彼女たちが聞いてきた内容は、彰人君が聞いてきた内容と一緒。
だから、彰人君のときと同じように説明した。
彼女たちの反応も彰人君と似たものがあった。
「あ~・・・なるほど!!難しかった内容が理解できるようになったよッ!ありがとう!!」
人に理解してもらえるというのは、なかなかに嬉しいものがある。
ま、先生に向いてるとまでは思わないけれどね・・・。
「あのさ・・・授業の内容とかこれからも色々聞いたりしていい・・・?」
どうしよう。とも思ったけど、こんな風に人に頼られるのもいいかなと思ってまた、「いいよ」と言った。
「やったーー」という彼女達に少し、笑顔がこぼれた。
・・・彰人君にあってから、まだ二時間位しか会ってないのに、私の価値観も人生も全て換わった感じがする。いつもならこんな感じで話しかけられたら、返事さえしないだろう。
なのに、今日の私は笑顔で返事をしている。
・・・彰人君はスゴイ・・・。
その内チャイムが鳴って、彼女達は席へと帰っていった。
「お昼、いっしょに食べよう♪」と言い残して・・・。
私の予定は無視か。と思ったけど、今の私ならそれでも笑うことが出来た。
彰人君パワーだ♪