彰人視点 私ハ貴方ヲ愛シテル
「由佳ちゃん・・・君なんだね。」
暗がりでベットに寝転びながら話しかける。
なにも分からない人が見たら、俺は狂った人のように見えるだろう。もしかしたら、実際狂っていたのかもしれない。
それでも、俺は話しかけ続けた。
『・・・ごめんなさい。彰人君。』
すると、ぼんやりと由佳ちゃんの姿が見え始めた。
本当は、掴みかかって葉月のこととか聞き出して殴りたかった。でも、もうそんな元気はなかった。
「葉月を・・・葉月を殺したのは・・・由佳ちゃん?」
『・・・ごめんなさい。』
「殺したの?」
『・・・うん。』
「やっぱりか・・・。」
なんだか、もうどうでもいいくらいに無気力だった。
怒っても、狂っても、葉月はもう戻ってきてくれない・・・。
『ごめんなさい。葉月ちゃんを・・・殺して・・・、私はやっと正気に戻った。
遅すぎたかもしれないけれど、どうしても彰人君に・・・謝っておきたかった。』
「ふーん。」
どうでもいいや・・・。
『あなたに・・・たくさん迷惑をかけてしまった。笑顔を奪ってしまった。ごめんなさい。
・・・あなたの笑顔が大好きで、守りたかったのに・・・逆に奪ってしまった。ごめんなさい。』
「もう、いいよ。」
ほんとうに・・・。
『あなたが、はじめて声をかけてくれたとき、嬉しかった。
友達が1人もいないで、別にいらないとすら思っていた私に、友達が・・・好きな人ができる喜びを教えてくれた。ありがとう。
葉月ちゃんが・・・あなたに彼女がいると知って、私はおかしくなってしまった。
勝手に暴走して、たくさんの人を巻き込んで・・・殺してしまった・・・。ごめんなさい。』
「・・・。」
『最後に、伝えたいことがあるの。
私に、声をかけてくれてありがとう。あなたは、私に声をかけたことを悔やんでいるかもしれない・・・。
でも、私は嬉しかったの。
彰人君が笑顔で声をかけてくれる、あいさつをしてくれる、優しくしてくれる・・・。それだけで、幸せだったはずなのに、欲張ってしまった私を・・・どうか・・・許して・・・いや、許してくれなくてもいい。
でも、心から・・・謝罪と、感謝をしています・・・。
では、私は・・・これで・・・。』
「俺も、由佳ちゃんの笑顔・・・好きだった。
前に言ったよね。由佳ちゃんも大切な人だって・・・。
俺にとって、由佳ちゃんは友達として、大切で・・・大好きだった。
・・・もし生まれ変わりがあるなら、今度も俺の大切な・・・友達でいてね・・・。」
『・・・っ!!
ありがとう・・・私ノ・・・大切ナ人・・・。』
由佳ちゃんは現れたときと同じように、またぼやけながら消えていった。
あぁ・・・、これで本当に終わりなんだ・・・。これから、どうしよう・・・。
・・・生きて、生きて、がんばるしかないのか・・・。
今すぐには、ムリだけど・・・ゆっくり、立ち直ってゆこう・・・!
決意を固めて立ち上がると、足が勝手に動きだした。
あれ・・・?
「ゆっ、由佳ちゃんなの?」
でも、もう返事はない。なっ、何をする気だ!?
向かった先は台所。俺の手が包丁をスッと取り出した。
「な・・・何を・・・するの?」
俺の頭に矛先を向けて、持ち手のほうを壁につけている。
葉月みたいに・・・自殺に見せかけて殺す・・・気・・・?
手をそのままに、俺の頭は俺の意志に反して、振りかぶるようにグワッと後ろにのけぞった。
そして刃先へと頭が向かっていく中で、俺は確かに聞いた。
『私ハ貴方ヲ愛シテル』
そういう・・・葉月の声が・・・。
これで終わりになります。
今まで読んでいただいた方、本当にありがとうございました!(≧ω≦)