彰人視点 安息ノ日々
俺は、今平凡な日々を送っている。
あの事件・・・由佳ちゃんが葉月を殺そうとした日から数日。もしかしたら、まだ2日も経っていないかもしれない。
もう、早く忘れるように努力をしている。
・・・しているのに、テレビではあの事件が延々とやっている。
『次のニュースです。
恐ろしい片思い。行き過ぎだ高校生の愛憎渦巻く物語!
先日起きた、片思いの男子生徒へ歪んだ愛情を注いだ彼女は・・・一体どんな心境だったのでしょうか・・・。』
「もういい加減にしてくれよ・・・。」
「あーきと君♪おはよ。」
後ろからピョコリと出てくる葉月。
葉月は今、俺の家へ泊まっている。葉月の家はまだ捜査中のため、まだ家へ帰ることができない。
母さんは娘が出来たと喜んでるし、葉月のほうも・・・。
2代目お母さんと泣きながら喜んでいた・・・。殺された葉月のお母さんは帰っては来ないけれど、でもこれであの世で安心して眠れるよね?おばさん・・・。
『・・・ダ・・メよ・・・。』
「え・・・?」
どこからか声がしてきた。おっ、おばさん?
『まだ・・・お・・・わって・・・ない・・わ・・・。き・・・をつけ・・・て・・』
「一体・・・どうゆ「このサスペンス微妙ですね!」
「そうね・・・。最後の台詞が陳腐すぎ!まだまだね。」
どうやら、葉月と母親が一緒に観賞していたサスペンスの台詞だったらしい。
なんだ・・・心配して損した。
大体、もう終わったんだもんな・・・。由佳ちゃんは逮捕されたし・・・。
俺と葉月には、もう平和な日々が帰ってきたんだ・・・。
『・・・番組の途中ですが、緊急ニュースをお知らせします!
ただ今入った情報によりますと、『連続通り魔殺人事件』の犯人として逮捕された高校生』
「・・・!由佳ちゃんのことだ!」
いやな汗が体中を流れる。
葉月と母さんも似たような感じでニュースを見ている。
『取調べ中に自殺したことが分かりました。』
「・・・自殺!?」
「そんなぁ・・・!!」
葉月と俺がガタッと席を立って、ニュースに文句を言う。
俺は急いで刑事さんへと電話をかけた。
『なにか思い出したことがあったら電話してくれ。』
そういわれて、携帯の番号を教えてもらっていたから。
まさか、こんなことで電話することになるとは思わなかった。
『はい・・・もし「一体どうゆうことですか!由佳ちゃんが・・・自殺って!」
電話にでた瞬間に、一気にしゃべる俺とは反対に刑事さんは落ち着いていた。
『落ち着いて!俺だって急なことで驚いてるんだから。』
「すみません・・・。あの、それで由佳ちゃんは・・・?」
『・・・死んだよ。取調べ室で舌を噛み千切ってね・・・。まさか、そんな事するなんて誰も思わなくてね。
面目ない・・・。』
「そん・・・な・・・。」
『あぁ!分かったすぐ行く!』
刑事さんが、電話の向こう側で誰かと話している。
『すまない。これから記者会見をしなきゃいけないんだ。
詳しい話はまた今度な・・・。』
そこまで言うと、すでに電話は切られてしまっていた。
刑事さんも色々忙しいのだろう・・・。警察は責任問題を問われるだろうな・・・。
「刑事さん・・・なんだって?」
そばで話を聞いていた葉月は、震える声でそう聞いてきた。
「取調室で舌を噛み切って・・・死んだらしい。」
「嘘・・・。」
葉月も俺と似たような反応。
顔面蒼白で、立っていることすらできなくなっていた。
由佳ちゃんが死んで・・・悲しみももちろんあるが、それよりあるのは・・・恐怖・・・。
怖くて怖くてしかたない・・・。
由佳ちゃん・・・。君は・・・。