由佳視点 私ノ彰人君
葉月ちゃんの部屋でふとんを刺すと、どうやらそれは警察が用意したらしいダミーの人形だった。
その場で『連続通り魔殺人と住居侵入及び殺人未遂の現行犯で逮捕する』で・・・今は、警察署の取調室へと押し込まれている。
『君と・・・彰人君だっけ?その人との関係を教えて。』
これで何回目の質問だろうか・・・。
「私と彰人君は恋人同士デス・・・。」
もう面倒くさいなぁ・・・。
『でも、彰人君は『君とは友達だ』と言っていたよ。』
「照れてるんでしょ?」
どうして似たような質問を何度も何度も・・・。
『じゃぁ、葉月ちゃんのことについて教えてくれるかな?』
「葉月ちゃんは、私と彰人君の仲を引き裂こうとし、彰人君に無言電話をかけたりしたストーカーです。
だから、彰人君を助けようとしました。」
『助けようとして・・・彼女を殺そうとしたり、関係のない人たちを殺したのかな?』
「そうです。あぁ・・・あなた達が邪魔するから目的を・・・葉月ちゃんを結局殺せなかった。
警察って本当に邪魔よね。捕まえなきゃならない犯人は捕まえられず、時効だ時効だとか言ってるくせに、正しいことをしようとしていた私を捕まえるなんて・・・。」
『・・・果たして、君のしたことは本当に正しいのかな?』
「正しいに決まってるじゃない。だって、私は愛し合っている彰人君を助けようとしていたのよ?
今だって、もしかしたら彰人君はあのストーカーに悩まされているかもしれない。かわいそうな彰人君・・・。」
『それは違う!』
今まで黙っていた若い新米刑事がいきなり声を張り上げた。
取調べしてる刑事の後ろに隠れるようにいた奴が、一体なんだ?
彼を制そうとしている取調べの刑事。それでも新米刑事は止まらなかった。
『だって、彼と君は愛し合ってなんかいない!むしろ彼は迷惑していたはずだ!
彼は君に殺されそうになったんだぞ!幸い死にはしなかったが、腕にケガを負ってしまったんだ!
彼の彼女を襲ったり・・・彼女の母親を殺そうとするなんて・・・!君は・・・!』
その振り上げている拳は、私を殴ろうとしているのかな?
そこで、取調べの刑事が無理矢理彼を制していた。新人はこれだからダメよね。
「ふふ・・・ダメね。そんなに感情を荒げるなんて。
彰人君のことを語るならばもっとクールでなくちゃ。それに、容疑者を殴ったりなんかしたらあなた、もう刑事としてやっていけないわよ?
私が、刑事に暴力を振るわれたといえば、あなたはクビ・・・。
もっと頭で考えて行動しなさい。」
『貴様・・・!!』
新米刑事が怒りに満ちた表情で私を見ている。
何かしら?その目は・・・。まるで「お前に言われたくない。」と言わんばかりだ。
まぁ、実際言っていたし・・・。
「私は頭で考えて行動したわよ。
だから、あなた達は今まで私を捕まえるどころか、凶器すら分からなかったんじゃない。
でしょう・・・?おバカな刑事さん♪」
『・・・!』
怒りの限界を超えたらしい彼はジタバタと暴れていたが、別の刑事に抑えられ外へと出されていた。
そのとき、うっすらと聴こえた。彼の・・・彰人君の声・・・。
それに付き纏うように聴こえる葉月ちゃんの声も・・・!!
「彰人君ハ私ノモノ!
近ヅクナ・・・触ルナ・・・纏ワリツクナ・・・。」
私を見た刑事達は、少しぼそぼそと話してから2人とも出て行った。
でも、何を話しているなんて聴こえなかったし、興味もなかった。
「私ノ・・・私ノ・・・彰人君ヨ・・・!
彰人君ハ・・・私ダケノモノ・・・!」