由佳視点 1 or 2
彰人君と別れた(一方的に去っただけなのだけれど)後。
次の授業の準備をしたり、おそらく『友達だと思われる子』たちとおしゃべりをしたりしていた。
すると、いきなり彰人君が教室に入ってきた。
「・・・由佳ちゃん!」
息を荒げている。おそらく教室から急いで走ってきたのだろう。
私の教室と彰人君の教室は、棟が違うので走ったとしても少し時間がかかる。
もうすぐ授業が始まろうというのに時間を気にせずそんなに急いで来るということは、余程のコトなのだろう。
「どうしたの?彰人君。」
まだ少しハァハァ・・・と言っている彰人君。一体何事だ!?とこちらを見てくるクラスメイト達。
チッ・・・ウザったいな・・・。
「とりあえず、場所を移しましょう。中庭でいい?」
彰人君は、答えることが出来ないのかゴホゴホと咳をしながら頷いた。
「ちょっ、ちょっと!もうすぐ授業始まるわよ。由佳!」
『友達らしい1人』がそう私に声をかけてくる。
舌打ちをしそうになったが、無理矢理笑顔を作った。
「ごめん。先生に私は・・・早退しました、って言っておいて。」
少し訝しげな目をしていたけれど、そんな事は気にしていられなかった。
彰人君を連れて、中庭の方に行こうとしたけれど、少し落ち着いたらしい彰人君が私を制した。
「中庭はやめよう。外に出ない?」
優等生な彰人君がそんな事を言うなんて思いもよらなかった。
余程のこと・・・一体何なんだろう?
「いいよ。彰人君鞄とかは大丈夫なの?」
「大丈夫。行こうか。」
どこへ行くかは分からないけれど、とりあえず彰人君についていく事にした。
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「ここは・・・。」
「そう。結構前にここで会ったよね。俺の知ってる中で一番うまいケーキ屋♪」
・・・葉月ちゃんと初めてしゃべった場所。『友達らしい人2人』と一緒に来たところ。
おいしいパフェがあるところ。
席に着いたら元気で可愛らしい女の子が来た。
『いらっしゃいませ♪ご注文はお決まりでしょうか?』
「あっ、由佳ちゃんはどうする?」
「私はコーヒーで。」
「分かった。じゃあ、コーヒー1つとミルクティー1つください。」
『かしこまりました。コーヒーとミルクティーですね。少々お待ちください。』
さっきと同じく元気な声だが、その動きは無駄がなくしっかりとした足取りで、かわいいのに少しかっこよくもある。
「ああいう人・・・理想だなぁ。」
心の中の独り言のつもりが、ついつい口に出してしまった。
恥ずかしくて口を手で押さえるけど、もう出て行ってしまった言葉は返ってこなかった。
「ん?あぁ、あのウエイトレスさん?かわいいのにきびきび動いてかっこいいよね。」
同じ意見・・・(照)
恋人同士・・・似たもの同士・・・似てくるカップル・・・(照)
1人で色々想像して顔を真っ赤にしていると、先程のウエイトレスがコーヒーとミルクティーを持ってきた。
『お待たせいたしました。コーヒーとミルクティーになります。』
ウエイトレスが立ち去り、それぞれ自分の飲み物を一口飲んだ。
そこで、明らかに彰人君の顔が変わった。真面目な顔というか・・・。言いにくそうにしていた。
意を決したように真っ直ぐ私を見て、彼は私が思っても見なかったことを言った。
「1と2・・・どっちかな?」
「・・・は!?」