由佳視点 彰人君!
彰人君を間違って襲ってしまった次の日。
「なぜあんな時間にあんな場所にいたのか?」を聞くために、私は彰人君の教室に来ていた。
「あっ、彰人君!」
教室で友達とおしゃべりをしていた彰人君を、教室の扉のところから声をかけた。
さすがに、教室のなかに入るのはちょっと・・・ね。
「ん?あっ、由佳ちゃん。」
声をかけると、割とすぐに教室の扉のところまで来てくれた。
今まで彰人君と話していた友達がひそひそと話し始めた。
「彰人の彼女!?」
「バカ言え!」
「そうだよ!違うって。」
「そうだよな・・・。」
ふふふ・・・。バカな人たちね。
あなた達の考えている通り彼女よ!全く鈍い人たちね。
女子が男子の教室まで来て呼び出すなんて彼女以外に考えられないじゃない。
「ごめんね。お友達と話してる最中に・・・。」
あんな人たちといるより、私といる方がいいに決まっているのは分かりきっていたけれど、一応申し訳なさそうに言う。
「大丈夫だよ♪で、どうしたの?」
笑顔で言う彰人君に、釣られて私も笑顔になる。
なんかささやかな幸せってカンジ♪
おっと、微笑ましくなるために来たんじゃなかった。何の為に彰人君の教室まで来たのかを思い出して、
改めて少し顔を強張らせる。
「あの・・・実はね・・・。」
私がそこまで言うと、彰人君は顔を真っ青にして私の肩をガッと掴んだ。
「まっ、まさか!由佳ちゃんもあいつに襲われたの!?」
あいつ・・・というのが、なんとなく通り魔(私)のことを言っているのだと分かった。
「ちっ、違うよ!」
「はぁ~、よかったぁ~。」
私が力を込めて否定すると、全身の力を抜いて安心していた。
そんなに私のことを心配してくれていたんだ、と思うと嬉しくて嬉しくてどうしようもなかった。
「心配してくれてありがとう♪」
そう言うと、彰人君は少し赤くなっていた。
照れてるのかな?(笑)
「でっ!一体どうしたの?」
照れ隠しなのだろうか、わたわたと話を変える。
すっかり忘れていた・・・(汗)
「あのさ、昨日夜道を歩いてたよね?あんな時間に何してたの?」
「ん?あぁ・・・実はさ・・・。」
彰人君は、葉月ちゃんのお母さんや「あの人」を殺した通り魔を探すべく、毎日夜道を歩いて探していたらしい。
「・・・ッ!」
バカらしくて言葉も出てこない。
この人は本当に・・・!
「彰人君はいつもいつも人のことばっかり!!
もしかしたら背中に包丁が刺さって死んでたのかも知れないんだよ!?
なんで・・・なんで・・・人のためにそんな無茶ばかりするのよ・・・。」
私は泣いていた。
刺そうとしたのは私なのに、実に自分勝手なことである。
「ふふ・・・。由佳ちゃんだって人の・・・俺のために泣いてるじゃん。一緒だよ。」
言葉が出てこなかった。
私は『彰人君』のためだけでしか泣けない。
でも、彰人君は誰のためにも泣けるし、優しくもなれる。
「私は・・・違うよ。」
「ううん。一緒♪」
やっぱり・・・違うよ。
私と彰人君では、何もかも。
「あーーーーーーーーー!!!!」
「彰人が女の子泣かした!!!!」
「おまっ!何したんだよ!」
「謝れ!とにかく謝れ!!」
遠巻きに見ていただけの彰人君の友達がヤンヤヤンヤと出てきた。
彰人君は、またわたわたとして友達をなだめていた。
楽しそうに笑う彰人君を見れて満足したし、そろそろ私も教室に帰ろう。
心のなかでバイバイと彰人君に言って、私は自分の教室へと帰った。