彰人視点 見ツケタ
葉月のお母さんが殺されてからの葉月は、ひどかった。
何を言ってもぼーっとしているし、かと思うと殺意に満ちた鋭い眼で考え事をしているし。
俺も、大好きなおばさんが死んで悲しかった。
・・・俺の大好きなおばさんを殺し、優しい笑顔の似合う葉月を泣かせたり、あんな殺意のこもった顔をさせた犯人が許せない。
必ず犯人を見つけ出てやる!!!!
・・・そんなことを考え、犯人を見つけ出すために毎日夜道を歩き始めること1ヶ月。
その間に、通り魔はサラリーマン、女子高生・・・そして、由佳ちゃんの大切な人にまで手をかけた。
由佳ちゃんは悲しくないはずがないのに気丈に振舞って、笑っていた。
それを見るのは痛々しくて、さらに犯人に対する怒りがこみ上げてくる。
あいつは・・・俺が狙いだったはずなのに、だんだん俺の大切な人ばかりを狙うようになった。
許せない!捕まえてやる・・・捕まえてやる!!!
「・・・ふぅ、さむッ・・・。」
冬場に毎日夜道を歩くのは、ツライものだ。
なかなか見つからないなぁ。一応、襲われた場所の近くをうろちょろしているのだけれど・・・。
さすがにそう簡単にはいかないか。今日はそろそろ引き上げるか。
帰ろうと思って振り返ると、キラリと光るものが肩の向こう側から出てきた。
きょとんとすると、腕のところはぴりぴりと痛み、腕とキラリと光るものが少し赤く見えた。
そこで初めて、キラリと光るものがナイフだと理解できた。
「いっ…たぁ…!」
痛みと驚きで、頭がついていかない。
殺される?
葉月がまた泣いちゃうかなぁ?
おばさん・・・。
葉月・・・。
死ぬ前にこいつの顔を・・・!!
街頭がなく月明かりすらない暗い道で、黒い上下の服を着たそいつの顔は、フードを被っていて見えない。
見ようと必死に覗き込んでいると、そいつは俺に止めを刺すこともせずに、今来た道を走り出した。
「てめぇ…!待て!」
必死に叫ぶが、そいつはもう俺の目の届かないところまで走りさってしまった。
クソッと地面を叩が、意味もなくただ手がジンジンするだけだった。
しばらくすると、近所の人が俺の叫び声を聞いて出てきた。
「大丈夫ですか!?」
「一体何事!?」
「救急車と警察をよびますね!」
俺を心配してくれる人と野次馬が集まり始めた。
その後は、救急車で運ばれるは警察の人に色々と聞かれるは・・・大変だったぁ。
「彰人!大丈夫!?」
家に帰ってみると、葉月と家族が待っていた。
警察が家に電話し、家族が葉月に電話したのだ。
なんで?と聞くと、彰人君に何かあったら私に電話してください、と葉月に言われていたらしい。
「大丈夫だ「大丈夫じゃないじゃない!腕!!!!」
くい気味に言う葉月。そのあと、何度も何度も心配されて怒られた。
「大体ねぇ、彰人君は危機感が足りないのよ!もし、それが腕じゃなくて背中や胸になんて刺さってたら、死んでたのかもしれないのよ!?
お母さんみたいに・・・私を置いていく気!?」
「・・・ごめんね。」
謝る俺に、葉月は許さない!と言いながらも笑顔で許してくれた。
葉月のお説教が終わると、次は母さん。
「まぁ、大体は葉月ちゃんと一緒なんだけどね・・・。」
ここから始まる母さんの説教は、その後1時間には及んだ。
警察の人にもさっき叱られてきたのに、その後こんなにも叱られるなんて・・・。
・・・もう、すごく反省しました・・・(汗)