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「ガス供給設備爆破事件」

大手企業の派遣社員、北村邦彦は自身の不遇な立場に不満を感じていた。


「くそ、3年経ったら正社員にするって約束じゃなかったのかよ。」


やっぱり世の中というのは理不尽だ。


それならこっちも理不尽で返してやる。


「と言っても手段がないんだよな。」


そんな時、あるサイトにいい方法が記載されていた。


「これは面白いことになりそうだぞ。」


北村はにやりと笑った。




自動発火装置の自作は思ったより簡単だった。


要はショートさせた先に火種を持ってくればいいだけの話だ。


問題はいつ着火させるか、というシステムだが、これも小型ポンプとペットボトルの重石で何とかなりそうだった。


「あとはいつ、どのようにやるか、だな。」


そりゃあ、できれば捕まりたくはない。




不自然の無いように、平日の勤務中、雇用期間の切れる2週間前に計画を実行した。


まず、人通りの多い11時ごろに装置をセットし、ガスバルブを開けてやる。


そして10分後に自動着火装置が作動できるようにする。


そして俺がタバコを吸っている間にドカン、だ。


あとはなるようになるだろう。


一応だが、家の解約手続きも進めている。夜逃げの準備もできているわけだ。




なるべく小型になるようにした自動着火装置を置き、ガスバルブを全開にする。


少し変な汗が出た。そしてなぜか無性に心臓の鼓動が大きく聞こえる。


「まあ、そりゃあ悪いことやってるからな。」


小型ポンプを起動した。


あとは爆心地から離れたところでタバコを吸って待つだけだ。


そそくさと離れて、喫煙所へ向かった。


「ふう。」


なぜだか一仕事終えた後のタバコの味はそれほど美味くは無かった。


「結構いい職場だったしな。未練もあったんだろうな。」


北村の言葉はタバコの煙とともに揺らいで消えていった。




ドカン。


大きな爆発音を聞いた。現実味の無い感覚だった。


それをかき消すように、自身の計画が成功した、という事実と今後の身の振り方について、北村はゆっくりと思案していった。




「ニュースを報道します。」


「昨日12時頃、大手メーカーの研究設備で、大規模な爆発事故があり、50名程度の怪我人が出ております。警察は犯人の特定と事故の原因について調査を進めております。」




警察官の樋口は全く見えない犯人像に対して苛立ちを隠せなかった。実行犯だけ追っていても問題の解決には繋がらないことはもう明らかだった。


「こうなったら警察の情報部隊に協力してもらうしかないか。」


情報部門の鈴木は樋口の相談に対して難色を示した。


「お気持ちはわかりますが、記録が残っていない以上、捜査は進められませんよ。」


そう断られた樋口はやるせない気持ちでいっぱいだった。


「俺は何のために警察官になったんだろうな。」


彼の言葉は空虚な空に消えていった。




大村卓二はネットカフェの帰り、両親が離婚することになったというLINEを見て自分の無力さに歯噛みした。


「結局、この世って理不尽なものだよな。」


もう俺を守ってくれる者もいない。


せっかくこの世に生まれてきたんだ。それならば、


「最後にいっちょセンセーショナルな事件でも起こしてやりますか。」


彼は不思議なほどに清々しく、軽く笑っていた。


これから起こす事件の重さと非対称過ぎるほどに。

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