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今日も彼は誰かを救っている  作者: 楪 一歩


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9/18

攻撃開始

 「撃て!!」


 雨が降る——。それは水ではない。

 矢と火の玉が、砦へ向けて降り注ぐ。 


 「うおおお!!」


 続けて騎士が、壁の崩れ落ちた箇所から次々に雪崩れ込む。

 その白刃の向く先は、魔獣。


 赤毛の狼が牙を剥き、ゴブリンは棍棒を振り回す——が、それを上回る程に、騎士は奮闘。一匹に向かい斬りつければ、次に背後の敵を一突き。


 先制の矢と火も相まって、一気に推し進める。


 「行けるぞっ!」


 その勢いのままに斬り倒し、あっという間に外を制圧。

 地面は魔獣の死骸で埋まっていた。


 騎士たちはそれを見て、先刻よりも顔が緩んでいた。


 「なんだ。大した事ねえなあ」 


 「おい。早く伝令をしろっ」


 それでもセドリックは表情を崩すことなく指示を出す。


 「は、はいっ」 


 伝令役が返事をしてすぐ、信号弾が打ち上った。

 パンと黄色に弾ければ、後方の魔法部隊にて、ソフィアが右手を上げる。


 「撃ちかた用意っ」


 魔術師全員が胸元に杖を握りしめ、詠唱が始まる。すると、砦の上に巨大な魔法陣が姿を現した。それは次第に、薄紫の光を帯びて——、ソフィアの手が降り降ろされた。


 「撃てっ!」


 ——閃光が森を包む。


 ゴオオンッ。と地響きが辺りを揺らした。稲妻が宙を裂き、砦へと落とされた。

 それを合図に、騎士たちは歯を食いしばりながら内部へと侵入。


 そこにいた魔獣たちは、皆真っ黒に焼け焦げていた。


 一階、二階と全ての部屋をくまなく見回り、三階へと足を踏み入れる。

 やはり、全ての魔獣は炭となり、転がっていた。


 「いいねえ。さっすがだぜ」


 「もうこのまま、次の砦まで攻めちまおうぜ」 


 二人の騎士が軽口を交わして、最後の部屋の戸を蹴り破る。


 「どうだー?」


 「皆死んで——」


 そこで、言葉に詰まる。

 先に部屋へ入った騎士の視線の先には、部屋に横たわるいくつもの死骸と、その内に立つ一匹のゴブリン。


 曇り空から、ポツリ雨粒が垂れる。

 そのゴブリンは、猫背に片方の口角だけぐっと上げて、彼らの方へと振り返った。


 騎士は、それを認めて、斬りかかる。

 その時だった。ゴブリンが手を上らせ、パチンと指を鳴らした。


 鮮血が吹き出す——。騎士の首元から。

 彼の虚ろな瞳のままに、両ひざが着くと、ザーッと雨が強く降り始めた。


 その噛みちぎったのは、死骸でいたはずの狼の魔獣だった。


 「うあああっ!!」


 透明な雨水に、赤が流れる。

 地に伏した魔獣が起き上がり、立っていた人間が倒れていく。


 「なんだこれは‥‥」


 砦の外にてオレリアは、眼前の光景に目を見開いていた。


 そんな彼女にも、一匹の魔獣が襲い掛かる。どうにか反応してオレリアはそれを斬り捨てた。が、たしかな断末魔があってすぐに、またその魔獣が彼女を喰いにかかった。


 「はあっ」


 それをもう一刺しすれば、今度は背後からゴブリンが棍棒を振り下ろす。

 オレリアは刺さった狼を蹴り飛ばし、刃を抜くと素早く逆手に持ち替えて、後方へ突き出した。

 確かに貫くも、棍棒がオレリアの頭を襲う。


 ゴンッと鈍い音が鳴った。甲冑は僅かへこみ、伴ってオレリアは体勢を崩す。

 それでも彼女は、顔をしかめつつも、順手に持ち替えて、思い切り刃を振り払った。

 一刀両断、ゴブリンは泥に倒れた。


 そして、彼女がぱっと視線を上らせれば、周りは敵に次ぐ敵。他の騎士たちは食われゆき、血の水溜まりが浮かぶ。


 それを青い瞳に映して、オレリアの手にグッと力が入った。


 同時に、パンと雨空に信号弾が弾け、青を示した。

 オレリアは、目を瞑り息を吐く。開いた眼差しは鋭く、前方に向いた。

 ぬかるんだ地面を僅か滑るように、彼女の踏ん張る足が跡を付ける——。


 「はあああ!!」


 水の槍が天から降り注ぎ、魔獣を串刺しにした。

 オレリアはそれに続いて、魔獣へと斬りかかった。

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