攻撃開始
「撃て!!」
雨が降る——。それは水ではない。
矢と火の玉が、砦へ向けて降り注ぐ。
「うおおお!!」
続けて騎士が、壁の崩れ落ちた箇所から次々に雪崩れ込む。
その白刃の向く先は、魔獣。
赤毛の狼が牙を剥き、ゴブリンは棍棒を振り回す——が、それを上回る程に、騎士は奮闘。一匹に向かい斬りつければ、次に背後の敵を一突き。
先制の矢と火も相まって、一気に推し進める。
「行けるぞっ!」
その勢いのままに斬り倒し、あっという間に外を制圧。
地面は魔獣の死骸で埋まっていた。
騎士たちはそれを見て、先刻よりも顔が緩んでいた。
「なんだ。大した事ねえなあ」
「おい。早く伝令をしろっ」
それでもセドリックは表情を崩すことなく指示を出す。
「は、はいっ」
伝令役が返事をしてすぐ、信号弾が打ち上った。
パンと黄色に弾ければ、後方の魔法部隊にて、ソフィアが右手を上げる。
「撃ちかた用意っ」
魔術師全員が胸元に杖を握りしめ、詠唱が始まる。すると、砦の上に巨大な魔法陣が姿を現した。それは次第に、薄紫の光を帯びて——、ソフィアの手が降り降ろされた。
「撃てっ!」
——閃光が森を包む。
ゴオオンッ。と地響きが辺りを揺らした。稲妻が宙を裂き、砦へと落とされた。
それを合図に、騎士たちは歯を食いしばりながら内部へと侵入。
そこにいた魔獣たちは、皆真っ黒に焼け焦げていた。
一階、二階と全ての部屋をくまなく見回り、三階へと足を踏み入れる。
やはり、全ての魔獣は炭となり、転がっていた。
「いいねえ。さっすがだぜ」
「もうこのまま、次の砦まで攻めちまおうぜ」
二人の騎士が軽口を交わして、最後の部屋の戸を蹴り破る。
「どうだー?」
「皆死んで——」
そこで、言葉に詰まる。
先に部屋へ入った騎士の視線の先には、部屋に横たわるいくつもの死骸と、その内に立つ一匹のゴブリン。
曇り空から、ポツリ雨粒が垂れる。
そのゴブリンは、猫背に片方の口角だけぐっと上げて、彼らの方へと振り返った。
騎士は、それを認めて、斬りかかる。
その時だった。ゴブリンが手を上らせ、パチンと指を鳴らした。
鮮血が吹き出す——。騎士の首元から。
彼の虚ろな瞳のままに、両ひざが着くと、ザーッと雨が強く降り始めた。
その噛みちぎったのは、死骸でいたはずの狼の魔獣だった。
「うあああっ!!」
透明な雨水に、赤が流れる。
地に伏した魔獣が起き上がり、立っていた人間が倒れていく。
「なんだこれは‥‥」
砦の外にてオレリアは、眼前の光景に目を見開いていた。
そんな彼女にも、一匹の魔獣が襲い掛かる。どうにか反応してオレリアはそれを斬り捨てた。が、たしかな断末魔があってすぐに、またその魔獣が彼女を喰いにかかった。
「はあっ」
それをもう一刺しすれば、今度は背後からゴブリンが棍棒を振り下ろす。
オレリアは刺さった狼を蹴り飛ばし、刃を抜くと素早く逆手に持ち替えて、後方へ突き出した。
確かに貫くも、棍棒がオレリアの頭を襲う。
ゴンッと鈍い音が鳴った。甲冑は僅かへこみ、伴ってオレリアは体勢を崩す。
それでも彼女は、顔をしかめつつも、順手に持ち替えて、思い切り刃を振り払った。
一刀両断、ゴブリンは泥に倒れた。
そして、彼女がぱっと視線を上らせれば、周りは敵に次ぐ敵。他の騎士たちは食われゆき、血の水溜まりが浮かぶ。
それを青い瞳に映して、オレリアの手にグッと力が入った。
同時に、パンと雨空に信号弾が弾け、青を示した。
オレリアは、目を瞑り息を吐く。開いた眼差しは鋭く、前方に向いた。
ぬかるんだ地面を僅か滑るように、彼女の踏ん張る足が跡を付ける——。
「はあああ!!」
水の槍が天から降り注ぎ、魔獣を串刺しにした。
オレリアはそれに続いて、魔獣へと斬りかかった。




