表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日も彼は誰かを救っている  作者: 楪 一歩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/18

立ちはだかる壁

 山の頂上。高く積みあがった石壁は、森に大きく影を落とし、上には白の狼たちが後光の内に立つ。

 その毛並みが風になびき、天へ口を広げる。


 「アオオーーン」


 遠吠えが青空へ響いた。

 たちまち熱気が湧き立つ。


 ——火の玉。

 横一列に並ぶ狼たちの口元には、火炎が装填されていた。

 そして、次第に膨れ上がり——、一斉に森へと放たれる。


 緑に朱色が落ちた。

 燃え上がる炎は、次々と森を飲み込んでいく。太く巻きあがる黒煙は空を濁す。

 木々はバチバチと悲鳴を上げ、灰へと化す。


 火の海が、砦の下に広がった。

 だが、そんな中を砦へ向かう影があった。

 熱の檻にて、灰を踏みしめ進む者たち。


 「放てっ!!」


 厚い黒煙を貫いて、城壁に迫るのは水の矢。

 パンッと一つ、壁に弾けた。

 その飛沫は陽光に輝き、地を濡らす。


 狼たちは、皆そちらを見た。

 すると、黒煙にまた穴が開いた。それも無数の穴。


 ——パパパンッ。


 飛沫が上がった。それは、赤く染まっていた。

 白の毛皮が石壁と擦れザーと音を立てる。ドサッと狼が地に落ちれば、灰が舞い上がった。力ない四肢。その腹の突き抜けた痕からは、血が垂れていた。


 そして、雪崩れるように、他の狼たちもそれに続いた。

 白波が城壁を撫でた。


 「行くぞお!!」


 さらにもう一つ、波が城壁へ押し寄せる。

 銀色に青空を映して、黒煙を突き破り迫る波——騎士団。


 彼らは焼けた山肌を一気に駆け上った。

 そして、城壁へ辿り着く一歩手前、騎士たちはが剣を抜き、その背後からドオンと大砲が放たれる。

 バゴォンという地響きと共に、砲弾が着弾。石が弾け飛び城壁が崩れ落ちた。


 その勢いのままに、騎士たちが砦へと進攻しようとしたその時——、

 爆発がまた起こった。

 伴って大きな土煙が巻き上がり、騎士の前にもう一つの壁が現れた。


 灰と炭の混じった砂の臭いが、麓まで駆け抜ける。

 薄れゆく土煙の内には、ぼやけた影。


 「グルルッ」


 「おい。少しは落ち着いていられないのか」


 舞う砂の晴れた先に姿を現したのは、獣の様相をした人間——。

 さらに、砦上空に黒い翼をはためかせる魔人。


 鋭い眼光が、騎士へ向く。騎士たちも皆、握る手に力が入る。

 一方、魔人は大きくあくびを噛み締めていた。


 「ん?」


 魔人が突然眉をひそめた。彼の髪が数本浮き立っていた。

 そして、彼が背を逸らすように見上げると、そこには大きな魔方陣が紫色の光を放っていた。

 目を大きく見開いて、魔人は「ほお」と吐息を漏らす。


 ——白飛びする森。空を裂き、轟音が青空を渡る。

 巨大な雷が、降り注いだ。


 砦にいた魔獣は、そのほとんどが黒く焼け焦げた。


 「俺の相手はそっちだな」


 そんな中、直に喰らったはずの魔人は、口角を上げ、山の中腹辺りを見つめていた。

 すると、その手がすっと持ち上がり、指先が真っすぐ伸びた。


 彼の瞳の捉える先には、魔術師——。


 一直線に閃光が走った。

 ガンッと、弾ける音が響き放たれた光線が止まる。

 魔術師たちを透明な壁がドーム状に覆っていた。その内で、彼らは歯を食いしばり手を上へ向ける。


 ギリギリと歯ぎしりで敷き詰められたドームの中、ローブの袖から覗く腕には皆血管を浮かばせていた。

 だが、その懸命さも意味をなさぬかのように。次第に盾は削れ、ひびが入り——。


 「があああっ」


 光線は貫通した。

 減衰していたものの、威力はすさまじく、魔術師たちは散り散りに吹き飛んだ。

 それを見降ろし、魔人は依然として笑っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ