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今日も彼は誰かを救っている  作者: 楪 一歩


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13/18

次の戦いへ

 ——翌日。


 「もう一度、あれをやる」


 「‥‥わかりました」


 ソフィアとエレオノールは、砦の会議室にて二人向き合って座っていた。


 「来週までには準備しておきます」


 「助かるよ」


 そう二人が言葉を交わしたところで、会議室のドアノブがガチャとひねられた。そして、開かれた先に姿を現したのはセドリックだった。


 「来たか」


 「どうだって?」


 反対側の席へ向かうセドリック。それを目で追って、ソフィアは口を開く。


 「いいそうだ」


 「‥‥そうか」


 セドリックの引いた椅子はギィと鳴って、彼が座るのに伴い軋む音を立てた。


 「すまんな」


 セドリックの言葉に、エレオノールは黙って首を振る。


 「私にできることであれば。勝つためでしょう」


 口元は優しく微笑んで、瞳は前髪に隠れたまま。


 「それで、セドリックさん。数の方は‥‥」


 「五十だな」


 机上に広がる地図へ目を落として、セドリックは静かに応える。


 「人選はそっちで頼む。前回同様、怪我の重い奴からでいい」


 「はい」


 傾むいた日が窓辺に差し込む。長く伸びる陽光は、中央に座す三人を朱色に照らし出していた。

 その後も三人は、今後の戦いについて入念に話し合った。

 その間に日は沈み、月が昇り始めていた。

 会議室には照明が灯る。


 「今日はここまでにしておこう」


 ソフィアのその一言で、セドリックとエレオノールは大きく息を吐いた。


 「お二人はこの後何かご用事が?」


 「私は少しやらなければけないことがある」


 ソフィアは、そう言って立ち上がると、セドリックの方を見下ろした。


 「こいつはどうせ暇だろうがな」


 セドリックはそれに、「暇で悪かったな」と言ってあくびを噛み締めた。


 「じゃ、じゃあ。セドリックさん、お茶はいかがです? 私、疲れに効く薬、じゃないや。お茶を持ってきたんですよ」


 エレオノールの言葉に、セドリックはぐっと伸びをして応える。


 「ああ、頂くことにするよ」


 そうして三人は、会議室を後にして、エレオノールとセドリックは、食堂へと向かった。

 食堂に人はまばらで、その隅の席に二人は対面で座った。


 木のコップから湯気が昇り、芳ばしい香りが立つ。


 「あ、あの——」


 「なあ。オレリアはどんな様子だ」


 被った声。机に置かれた蝋燭の明かりが、首を傾げるエレオノールを映す。


 「オレリア、さん?」


 「ほら、金髪の女騎士いるだろ。確かあいつ、怪我がひどくて向こうにいるんじゃ」


 「ああ」と合点がいくようにエレオノールは頷いた。


 「彼女でしたら、確かにいたと思います。元気なご様子でしたよ」


 その言葉に、セドリックはほっと安心した表情を浮かべた。


 「それなら、良かったよ」


 そうして彼は一口、お茶を飲む。コップを置き漏れた安堵の溜め息が、蝋燭と共に、その先にある湯気までも乱した。


 「‥‥そうですね。皆さんの無事が一番、ですよね——」


 「あ、やべ」


 そう言って、セドリックはぐっと勢いよくコップを傾けると、突然立ち上がった。


 「すまん、ちょっと用事思い出しちまった」


 「え、ええ」


 「じゃ」とセドリックはそのまま、食堂を後にした。

 置かれた空のコップを、前髪を介してエレオノールの瞳はまじまじと捉えていた。

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