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ドゥリーパ・シェンケヴィッツの正体・2

「みかげは因果を超越する『なにか』と一体化したことで、詳細な機序は不明ながら最初の世界から派生した全ての世界で不動点のような存在と化してしまった」

明灘京司は部屋の隅のパイプ椅子に座り、それに向かい合う形でロベールも座っている。

「不動点?」

「技術的学問的な説明は省くが、要は初期条件がどのようなものであれ、それらの初期条件が一定の範囲に収まっていれば明灘みかげという人間が必ず生じる。その後、その宇宙に発生する偶然や人間の意思とは関係なく、必ずみかげは生まれてしまう」

「それと、お前のやろうとしていることにドゥリーパ・シェンケヴィッツというその男が必要になる関係がわからない」

「因果関係を逆行させ、最初の世界に介入する、というのは途方もないことだ。たとえ、みかげと一体化した『なにか』を用いたとしても」

「それはそうだろうけど……」

「不動点はある意味、どうやっても生じる。不正確な比喩だが、三角形である以上は角が三つあるのと一緒だ。角がない三角形、というのは言葉で言うことはできても図には描けない。角が二つ、あるいは四つ以上のものも同様。だから、誰かが不動点を肩代わりする必要がある」

「まさか、ドゥリーパ・シェンケヴィッツは……」

ロベールは息を呑んだ。

「ああ。最初の世界で岩手のリニアコライダーの中央管制室に彼もいたんだ。そして、彼はみかげと一体化した粒子とエンタングルした粒子――これも数式を使わない説明が難しいのだが、要はかえでの持つ『なにか』と同じであると同時に別の場所に存在する粒子、それと一体化した。しかし、自発的対称性の破れと呼ばれる現象で、みかげは因果を超越し、ドゥリーパ・シェンケヴィッツはそうはならなかった。ただ、彼にもそれを担う器がある」

「だが、そのドゥリーパという男がおとなしく身代わりになるのか?」

「させる」

断乎とした口ぶりで京司が言ったとき、重いドアが開いた。ドゥリーパ・シェンケヴィッツと弓弦楓が、立っている。明灘京司が立ち上がった。

「やあ。待っていたよ」

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