無視されるのはなぜ?
翌日、テツヤに運動いつする?とか、ご飯食べに行こうかとか、色々メッセージを送ったのだが既読無視された。何か用があるのか、もしくは寝ちゃったのかなと思ってしばらく放置していたが、夕方ジムに行ったらテツヤが既に来ていた。タケル兄さんと一緒にいた。
「タケル兄さん、来てたんだ。」
「おう、レイジ。」
つい、テツヤには声を掛けずじまい。人前で呼ぶのがちょっと恥ずかしかったのだ。だから、近くへ行って背中をポンと叩いた。が、テツヤはこちらを振り返りもせず、ぷいっと遠くへ行ってしまった。
「あ、あれ?」
どうしたんだろう。
「テツヤ…兄さん、どうしたの?」
少し追いかけて行ったが、テツヤはこちらを見ない。
「ちょっと、テツヤってば。」
追いかけて行ってテツヤの腕を掴んだ。すると、テツヤはこちらをチラリと振り返ったが、すぐにぷいっとそっぽを向いた。鋭い目で見られてしまった。何てカッコいいんだ。いや、無視されたんだぞ。ショックだ。
「何か怒ってるの?」
顔を覗き込もうと前へ回り込むが、テツヤは更にぷいっとそっぽを向く。
「知らないっ!」
そう言い捨てると、テツヤはジムを出て行ってしまった。えー、なんで……。
運動なんてしている場合ではない。俺は追いかけた。テツヤの部屋まで追いかけた。まだテツヤの部屋に入った事がなかった。テツヤがここへ来てから、なんだかんだで一緒に夜を過ごしていない。廊下にはメンバーやスタッフがウロウロしているから、リスキーでもあるし。
「テツヤ、入れて。」
ドアに近づいて言った。でも反応なし。トントンとドアをノックしてみたが、開けてくれない。一応ドアノブを捻ってみたが、やはり鍵が掛かっているようで開かない。うーん、困った。
ひとまず諦めた。やっぱりジムへ行くか。いやでも……気になる。放っておいたらダメな気がする。
どうしたものか、テツヤの部屋の前で考え込んでいると、カチッと音がしてドアがそっと開いた。そしてテツヤがひょっこり顔を出す。すると、
「あ。」
と言って、また引っ込もうとする。
「ちょっと!」
慌ててドアの隙間に手を入れた。当然挟まれた。
「イデッ。」
足を入れれば良かった。手がものすごく痛い。ピアノを弾く人じゃなくてよかった。




