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友達とは手つなぐ?

 その後すぐ、テツヤはパリへ出かけた。テツヤがアンバサダーを務めるブランドのファッションショーに招待されたのだ。

 気おくれするからまだ二人きりになりたくない、と思っていたものの、実際に二人きりになれずにテツヤが行ってしまったのは寂しく、独りになるのにも慣れなくて、何となく今まで通りカズキ兄さんとつるんでしまう俺。やっと出てきたというのに、何をやっているのだか。

 そして翌日、俺とカズキ兄さん、そしてユウキ兄さんは揃ってアメリカへと旅立った。しばらく楽曲制作をする為に、アメリカに滞在するのだ。国内にいると自由がないので。実は出所した当日、東京の家に知らない女性が訪ねてきて警察沙汰になったのだ。そういう事がないよう、落ち着ける場所を会社が見つけてくれたのだ。

 テツヤには、もう10年以上仲良くしている俳優で歌手のノゾムさんという友人がいる。テツヤよりも2歳年上なのに、友達だというのだ。そのノゾムさんも、同じファッションショーに招待されていた。

 テツヤから連絡が来る前に、テツヤの動画がSNSに溢れていた。それを見て、俺の心はいきなりざわついた。テツヤが、誰かと手をつないだ。肩を抱いた。そして車に乗り込む時にエスコートを!

 ショックが大きかったが、よく見れば相手は男性で、ノゾムさんだと分かった。友達、だよな。いやでも、なんだこれ。あまりにもスマートにエスコートしちゃって。テツヤの方が年下なのに、まるで取り囲む一般人からノゾムさんを守るようにしている。なんで?守る必要あるのか?俺があそこにいたって、そんなあからさまにテツヤを守ったりしないのに。

 見たくなくても次々と動画が目につく。パリでテツヤとノゾムさんが会った瞬間の映像とか、女性と3人で記念写真を撮っているところとか。そしてやっぱり、テツヤがノゾムさんの手を取って引き寄せるように手をつなぐところ……ウガ―!我慢ならん!

 とにかくテツヤに電話をかけた。テツヤは電話に出ると、のんびりとした口調で、

「レイジ、どうした?アメリカに着いたのか?」

と言っている。なので、思わず最初から少し非難めいた口をきいてしまった。

「ちょっとさ、あれは何?ノゾムさんと手をつないだりして。」

「何?ヤキモチ妬いてんの?」

テツヤはそう言ってクスクスと笑う。

「仲良くしすぎでしょ。真面目に聞いてんだけど。」

低く言うと、テツヤは一瞬黙った。そして、

「レイジだって、カズキと手つないでんじゃん。」

そう、ボソッと言った。低い声で。

「え?つないでないよ。」

俺が驚いてそう言うと、

「つないでたよ。空港で。車から出た直後。」

テツヤがブツブツと言葉を切りながら言う。しかし、覚えていない。

「お前だって、カズキとベタベタしてるし。二人でクスクス笑って、イチャイチャしちゃって。いっつもカズキと一緒にいるじゃんか。」

心当たりが、無いでもない。いや、決してイチャイチャしてはいない。

「違うよ。ほら、カズキ兄さんってそういうとこあるじゃん?内輪受けで笑ったりするっていうか。」

「カズキのせいにするのか?」

そう言われて、言葉に詰まった。そうだよな、人のせいにするのは違うよな。

「……ごめん、なさい。」

俺の方が怒っていたのに、逆に怒られてしまった。

「うん、いいよ。じゃ。」

許してもらえたようだが、電話を切られてしまった。ん?もしかして、上手くはぐらかされたのか、俺?


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