7話 お礼
7話 お礼
翌日、俺たちはまず防具屋に入った。
白いローブを女将さんから受け取り、早速マオに着てもらった。
もちろん、試着室でね。ツノも隠れるし、問題なさそうだ。
ローブをよく見ると、フードの左側にピンクの花の刺繍が入っていた。
「あの、これ⋯お代を」と言おうとすると、女将さんが「あんた達だろ、人攫い共を捕まえてくれたのは。」
と耳打ちされた。
「それはお礼だよ。ローブも銅貨5枚でいいから。」
「そんな、すみません。」
刺繍も入っているとなると高くなるかと思ったが、
「村に平和をもたらしてくれたから」とありがたく受け取ることにした。
「ピンクのローブも凝視していたしね。変わりにはならないかもしれないけど。」
女将さんに言われるまで気づかなかった。
やっぱり、可愛いローブが欲しかったんだな。
「どう、マオ?気に入った?」
「うむ、悪くない。刺繍はなくとも良かったがな。」
そう言いつつも、刺繍の部分を何度も触っていた。
鏡を見て嬉しそうだったから良かった。
今度はお金を貯めてもうちょっといいのを買わないと。
俺の服も含めて・・。
次に詰所に向かった。
「こんにちは。」
挨拶しながら入ると、昨晩のリーダーと思われる人がいた。
「ああ、こんにちは。良かった!来てくれたんですね。」
その人はユーズドだと名乗った。
腕、というか体全体がムキムキだ。
他の警備隊の人も鍛えてはいると思うけど、やっぱりこの人が一番強そうだ。
応接室に案内される。
部屋は狭い方だったけど、俺にはお茶を、マオにはココアを出してもらった。
「これが報酬です」
小袋と書類が机に置かれた。
袋には見た目よりもぎっしりと銀貨が入っていた。20枚くらいだろうか。
書類には自分の名前をサインする。
「本当にありがとうございました。」
ユーズドさんは深々と頭を下げた。
「いえいえ、捕まって良かったです。」
「ええ、本当に。」
俺が捕まえたというか、ほぼマオのおかげだしな。
「それで、事件の詳細ですが。」
「それって、俺たちが聞いても大丈夫なんですか?」
聞きたいとは思っていたが、こんなに簡単に教えてもらえるとは思っていなかった。
「もちろんですよ、事件の当事者ですから。」
これはありがたい。
俺はお茶を飲んで話を聞く心を整える。
「男達の話では、隣街のガイエテで誘拐した子供達を売っていたそうです。
子供だけではなく、珍しい魔物やその素材まで、ありとあらゆる物を法外な値段で売買しいているようです。街では日々、裏通りでオークションが行われていて、多くの貴族や商家が出入りしているとのことでした。」
前にガイエテに行った時はご飯は美味しい、店も繁盛していていい街だと記憶していた。
今そんなことになっていたなんて。
いや、前に行った時は煌びやかな部分しか目に入っていなかったのだろう。
「そうなんですね。」
「ええ、ガイエテの警備隊にも話を通す予定です。一刻もその会場を潰さなければなりませんので。」
通常、警備隊は他の村や町には手出しできない。ナワバリと言ってもいい。
だが、事態は深刻で1つの範囲では収まりきらない。
近くの警備隊と連携し、なるべく早く解決させるようにしなくてはならないだろう。
それに、あの男達がオークションを管理しているとは思えないので、上に何か組織がいるはずだ。それを捕まえない限りは、男達のような駒がずっと出てくるだけだろう。
「ところで、よくそんな詳しく話が聞けましたね。」
持っていたカップを皿に置いた。
俺たちが聞いた時には男たち暗示にかかっていたのもあるが、そんなに詳しく聞き出せなかった。警備ならではの経験差だろうか。
俺は誉め言葉のつもりだった。「上手く話を聞くコツってなんだろう?」と世間話程度に。
ユーズドは冷ややかな笑顔を浮かべていた。
「そんなこと気にしなくていいんですよ。」
俺は背中がビクッとなった。
そんなに失礼なことを言っただろうか。
優しそうなおじさんだったのに、急に壁を立てられたように感じる。
その笑顔は村を守る正義感ではなく、もっと何か⋯別の⋯危ない気配があった。
ビビってマオに視線を落とすと、そんなこと気にせずにココアをぐびぐび飲み干していた。
「では、ご足労ありがとうございました。外まで送りますね。」
ユーズドに促され俺たちは部屋を出た。
外に出るまでに行き交った人がお礼を言ってくれた。
俺は何もしてないんだけどな。
詰所を出て外の空気を吸う。
「さて、次の行き先が決まったな。」
「そうだね。約束は守らないとね。」
俺たちはフートを後にし、ガイエテへと向かった。
お読みいただきありがとうございます。
次の話はおまけみたいな感じのお話です。
0時頃を予定しておりますので、
良ければ読んでいただけるとうれしいです。