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3話 共同料理?

魔王城から出ると、思ったよりも日は高かった。

ずっと暗い所にいたので太陽の光がかなり眩しい。


外に出ると、マオの異様さがより目立った。人間にはついていない赤いツノが右耳の上あたりから生えていた。瞳もツノに呼応するように真紅の色をしていた。髪は白銀で、その美しさは人間離れしている。

見た目はやはり子供ではあるが、堂々とした立ち振る舞い・・・、いやただ偉そうなだけかもしれない。


魔王城は小高い山の上にあったので麓の村がよく見えた。距離は近く見えるものの、こういうのは大抵歩くと結構な距離がある。

マオは最初こそ意気揚々と歩いていたが、今では疲れたと言って俺が肩車していた。

なぜ肩車かというと、マオに「おんぶでいい?」と聞いたが、目線が俺と同じで気に食わないと言われ、より高い目線でいられる肩車で落ち着いたというわけだった。

俺も村についたら湿布を買うかと考えていたら今度は頭の上からぐうーと音が聞こえた。


「おい勇者、腹が減った。」


確かに時間的には昼時だ。しかし、腹を満たせるようなものは持っていない。そもそも子供を連れてくる予定なんかなかったし。


あたりを見回すと川が流れていた。幸いにも魚が泳いでいるのがわかったので、あとは釣るだけだ。釣れればいいけど・・・。

マオを木陰に下ろし、俺はカバンの中から釣り竿と網を取り出した。このカバンは魔法具でできているため、いろんなものを中に入れることができる。旅の出だしにかなり無理をして買ったカバンだ。もうボロボロだけどその思い出補正もあって新しいのに変えられない。


いよいよ釣ろうとしているとマオが「何をしているんだ?」と寄ってきた。

「これから魚を釣ろうと思ってさ。」俺は釣りが得意なわけじゃないけど、一匹でも連れたらマオと半分ずつ食べればいいかと考えていた。

(魔王って半分個の精神があるんだろうか?)


「そんなまどろっこしいことなどせず、こうすればいいのだ!」

マオは「ライジング!」と唱えると、青空から雷が降ってきた。


この世界に雷の魔法を使える魔法士はほとんどいない。

大抵の魔法士は、火、水、土、風を扱う。

雷の魔法が使えるのは、魔法研究所などにいる「大魔法士」と崇められる人たちだけだ。

魔王はそんなに凄い魔法も呼吸のように扱えるとは。


川には魚が4匹浮いていた。俺とマオで2匹ずつ食べられそうだ。

「すごいよ、マオ!」

俺は網で魚を掬う。今までにない画期的な方法で魚が釣れてだいぶ楽ができた。

しかし、マオを見ると少し項垂れていた。「どうしたの?」と問うと、「こんなものでは・・」と悔しそうに川を見ていた。全盛期と比べるとかなり魔力が落ちてしまっているようだった。

「予想だとどれくらいだったの?」と俺は興味本位で聞いた。流石に「この川全体」と答えられると、もうマオには逆らわない方が良さそうだと思った。だって、この川は上流から下流まで行くのに1日はかかりそうだったからだ。



と、とりあえず食べる準備をしないと。乾いた枝を削り揃え、串を作る。魚を串に刺そうとすると、あれ?魚がない。なんと、マオが魚の尾ビレの方を持って口を大きく開き、丸呑みしようとしていた。

「ちょっと、なにしてんの!」

俺はすかさずマオから魚を奪いとった。

「そっちこそなにをするのだ、我が採ったのだぞ」

確かに一番の功労者はマオだ。でも生のままで食べるのはいただけない。

「生でなんか食べないよ、お腹壊すでしょ。」

「魔王が魚になんぞ遅れをとらん。」とかなんと言っているのをよそに俺は火を起こした。

焚き火の周りに魚を置いていく。パチパチと火は燃えて、しばらくすると魚もふっくらしてきた。俺もかなり腹が減っていたのかヨダレが出そうになる。


そろそろいいかと「食べてもいいよ」と串を渡すと、マオは「まだ焼けてはおらんではないか」と火の中に魚を突っ込んだ。

「今度はもう焼けてるからいいんだってば!」

俺は呆れながらも魚にかぶりつく。

魚の皮はパリパリで塩加減もちょうどいい。お店で出てくる料理もいいけど、たまにはこういうのも悪くない。

「意外とうまいな!」

気に入っていただけたようで何よりだ。

「前に魚を焼いたときは炭のような味しかしなかったがな」

「それ、焼き過ぎだよ」

どうやらマオは過去に人間のマネをして魚を焼いてみたことがあったそうだ。

その時『よく焼く』だけを信じて高火力でバッと焼いたらしい。

それはもう焼き魚じゃなくて消し炭の残りだと思うけどね。


今日の一言メモ:魔王は料理初心者。


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