13話 忘れ物には気をつけて
2日後、残念なことにラブンの想い人は行方不明者として街の掲示板に貼られてしまった。
彼女は身よりがないらしい。
そのため、異常を察知できる人がおらず、捜索するのが遅れてしまった。
最後に見かけた人の話では、2日前に裏通りに入っていったきりらしい。
「これって、俺のせいですよね。」
今日はラブンと3人で街を歩いていた。
ラブンは泣きそうな顔をしていた。
「まぁ、裏通りで会う約束をしたのはよくないね。」
「でも、彼女がそうしたいって……。」
「人のせいにするな。」
マオの手厳しさは、さておき。
いくら男性と会うからって裏通りで会おうなんてかなりリスキーだ。
どうしてそんなこと……。
「もう、早くのりこんじゃいましょうよ!」
俺だってそうしたい。
でも、オークション会場には「招待状」がないと入れないらしい。
そして、オークションが開かれるのは週末だけだ。
今日はど平日。
行っても意味がない。
そもそも、被害者はどこに隠されているんだろう。
「とにかく招待状を手に入れないと……」
ラブンは無機物には、化けることはできない。
自力で招待状を手に入れ無ければ。
「とにかく、俺ァ、手がかりがないか街の人に聞いてみます!」
「ラブン待ってよ!」
ラブンは立ち上がると走っていき、街の中に消えてしまった。
追いつくのは無理だな。
「俺たちは別方向から聞き込みしようか。」
俺たちは、ラブンが走っていった方向とは別の方へ向かった。
「招待状が無ければ入れないのは厄介だな。」
「うーん、どっかに落ちてないかなー。」
ドンッ。
痛タタ……。冗談を言う暇もない。
何かとぶつかって尻もちをつく。
「退け!クッソ……このままじゃ……」
目の前には少年が俺と同じく尻もちをついて転んでいた。
「ごめん!大丈夫!?」
少年はかなり焦っているようだった。
「ボケっと歩くな!僕は行くからな!」
走り出してしまったので、俺は少年の手首を掴む。
「離せよ!」
「待ってよ!なにをそんなに急いでいるの?」
少年は制服らしきものを着ていた。
そんな上等な服を着れるのは貴族だけだ。
良いとこの坊ちゃんなのかな。
「このままじゃ間に合わない!僕は忘れ物を!」
「忘れ物?」
少年はモジモジして、「宿題を忘れたんだ……」と呟いた。
「それは大変だ!取りに行かなきゃ!」
「だから離せって言ってるだろ!」
俺と少年が揉めている間にマオが魔法を唱える。
「セラ、身体強化をかけた。これでかなり速く走れるはずだ。」
マオは俺の背中に飛び乗り、少年は俺が抱えて走ることにした。
身体強化ってすごい!
体が風のように軽い。
自分の力で走っているのに、誰かに引っ張られているようだ。
今度から毎回かけてもらおうかな。
「セラ、これは特例だからな。」
うっ。先に釘を刺された。
「で、とりあえず走っているけど、どこに向かえばいいの?」
「あの建物が見えるか?そこに向かってくれ!」
少年が指差す方向にはデカい建物がある。
あれが少年の家だろうか。
「お前、子供のくせにいいところに住んでいるな。」
「君に子供とか言われたくないから!」
少年はマオに言い返す。
少年、悪いがマオはお前と俺の何百倍って生きていると思うぞ。
「悪いけど、窓から入るよ。」
俺は1つだけ解放されていた窓から滑り込む。
その部屋はちょうど少年の部屋から近かったようで、宿題を取ってすぐ戻ってきた。
また来た道を戻り、学校へと向かう。
俺は学校のすぐそばで少年を下ろした。
「間に合ってよかった!じゃあ、学校がんばってね。」
「おい!」
去ろうとしていた俺たちを少年は引き止める。
「午後3時ごろ、ここへ来い。」
「ええ、お礼なら気にしなくていいから〜。」
なんだ、以外と礼儀が正しいんだな。
でも、俺が注意散漫だったのもあるし。
「世話になったからな、借りは返す主義なんだ。」
マオとあまり変わらない年に見えるけど、しっかりしてるな。
「わかったよ、じゃあまた学校が終わったらね」
少年は「絶対だからな!」と言って、学校の門をくぐっていった。