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9話 勇者の剣と正反対

花が落ちた様子は、儚さも美しさの欠けらもない。

花は嗚咽するように人間を吐き出した。


これが食べられてしまっていた人だろうか?


「終わったのか?」


マオを見ると、魔法を唱えていた。

手元は金色に光っていて綺麗だった。


戦闘の疲れから、どちらも息は上がったままだ。


「大丈夫ですか!?」


俺は飲み込まれていた人に呼びかける。

揺さぶって起こしたいけど、アーキルフラワーの

液体でびしょびしょだった。


汚いと感じてしまって触るのに躊躇する。

ごめん。


とりあえず、頑張って呼びかける。

マオは「仕方がないな」魔法を唱え、水を浴びせた。

まるでバケツの水をひっくり返したような勢いだった。


「ゲホッ……うーん……。」

「大丈夫ですか!?起きてください!」

「もう……食べれない……苦しい……。」


なんの夢を見てるか知らないが、起きてもらはないとここを立ち去るわけにも行かない。

早いとこ無事を確かめたいんだけどな。


「起きろ」


マオは横たわってる人の頬をベチン!と叩いた。


「わあ!」


横たわっていた人は急に起きた。



「いやぁ、助かりました!」

「いえいえ、とんでもない。ほとんどこの子のおかげですし。」


その人はマオを見て、「ツノのあるお嬢さんもありがとうございました。」と言った。


え、待って……。今ツノがあるって……。


俺は慌てて「あ、あの、ツノがあることは、その……」

と言うと「助けてもらったんですから、何も言いませんよ。」とにこやかな表情を浮かべていた。


「私は、ちょっとした武器商人でして。この先にある通りを歩いていたら、急に森に導かれたように入ってしまっていたんです。もう必死に叫びましたよ。」


アーキルフラワーに襲われた人がよく言う内容だ。

普段、寄り道しないような真面目な人も、誘われているかのように森に入ってしまう。本当に恐ろしい魔物だ。


「あの、お礼なんですが……今でしたら武器をお安くお売りすることができます!」


タダじゃないんだ……。


「そーゆーのはタダでお礼するもんじゃないのか?」

「マ、マオ!、そんなこと言っちゃダメだよ!」


マオ!ナイス!

よく俺の気持ちを代弁してくれた!


「そうしたい気持ちは山々ですが、こちらもカツカツでして……」


俺と一緒か。

でも俺、あなたを助けるために剣を捧げた(折れた)

んですけどね。


「ま、まあ良ければ商品だけでも見ていってください。」


商人はいくつかの箱を広げ、武器を見せてくれた。

地面に広げられたので俺とマオは屈んで吟味する。


銅貨10枚〜50枚ほどのものから銀貨のものまで結構あった。


安いしこれでいいか。

俺は銅貨20枚ほどの剣を持って支払おうとした。


「痛ってぇ!」

「馬鹿者!もっと真面目に選ばんか!なんのために村で報酬を受け取ったと思うておる!」


そうは言ってもこれからお金も入り用になるかもしれないし、贅沢できない。



「パァッと使え!パアッと!」


確かに安い剣で何度も買い換えるより、いいのを買った方が将来的には安いか。


「これにします!」

俺が決めたのは銀貨10枚の剣だった。

さっきまで使っていた剣は小ぶりだったが、ここは大きめの剣を選んだ。


マオはまだちょっと納得がいかなそうだったが、

俺的にはデカい出費だ。


「お買い上げありがとうございます!本来ならこちらは銀貨15枚の値はありますから!」


俺は商人から剣を受け取った。

その後、商人はもう一度深々と頭を下げお礼を言ってくれた。


「よき旅を!」


俺と商人は握手をかわし、別れた。



「しかし……お前……その剣……」


マオは急に笑いだした。


「なんだよ、かっこいいだろ!」


俺はムキになって言い返す。


「勇者の剣と言ったら持ち手は金、鞘は純白だろ!

そんな剣の勇者は見た事ないぞ。」


涙まで浮かべてやんの。

俺の選んだ剣は、持ち手と鞘は真っ黒だった。


「いいんだよ!たまには変わった趣向の勇者だっていいだろ!」


マオは俺が何を言っても笑っていた。


一言メモ:マオはゲラ。



お読みいただきありがとうございます。

次回は午後3時半ころの更新を予定しています。

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