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 僕の名前は相羽小太郎あいば こたろう。チビで冴えない高校二年生。


 見た目も中身もまったくモテる要素のない僕だけど、どういうわけか彼女がいる。

 同じく二年生の白百合桃香しらゆり ももかちゃん。


 嘘みたいな話だけど、桃香ちゃんは学校一の美少女で、しかも向こうから僕に告白してきた。


 遡ること三年前、中学二年生の頃の話だ。


 その頃から桃香ちゃんは学校一の美少女で、たまたまクラスが同じで隣の席だった。


 今も昔も冴えない僕からすると、声をかけるのは勿論、視線を向ける事すら躊躇うような天上人だ。


 桃香ちゃんは黒髪ロングのミステリアスな美少女を絵に描いたような女の子で、どういうわけか時々僕に話しかけてくることがあった。


 流行りのアニメとか、ツイッターで話題になっているニュースとか、学校の中とちょっとした噂話とか。


 僕は桃香ちゃんに話しかけられているという事実だけでいっぱいいっぱいで、あわあわしながら必死に話を合わせていた。


 そんな事がしばらく続いた夏休み前のある日の事、桃香ちゃんはいつもの雑談のノリでいきなり僕に告白してきた。


 教室で、三時間目の休み時間だ。


 あまりにも自然すぎて、クラスのみんなは誰もその事に気づいていない。

 僕自身、聞き間違いだと思ったくらいだ。


「私、小太郎君の事が好きになっちゃったの。だから付き合って」


 聞き直す僕に、桃香ちゃんが同じ言葉を繰り返す。


 聞き違いじゃなかったら、なにかの悪戯かもしれない。そんな事をするような子じゃないと思うけど、それを断言できる程、僕は桃香ちゃんの事を知ってるわけじゃないし、仲がいいわけでもない。


 その時の僕は、時々話しかけられる、隣の席のクラスメイト以外の何者でもなかったのだ。


 僕は悩んだ。


 桃香ちゃんは嘘告をするような子には思えない。それと同じくらい、僕みたいな冴えないチビ助が桃香ちゃんに告白されるとも思えない。


 そして目の前では当の本人が僕の答えを待っていて、あと数分で休み時間は終わってしまう。


 そうなったら、今起きた夢のような出来事は綺麗さっぱりなかった事になってしまうような気がした。


「……ぼ、僕でよければ」


 悩んだというよりも破れかぶれな感じで僕は答えた。


 そして特に騙される事もなく、いまだになんで僕なんかと……と不思議に思いながらカップルを続けている。


 桃香ちゃん以外の女の子と付き合った事なんかないから分からないけど、多分それなりに上手くやっているんじゃないかと思う。


 高校生になってクラスが変わっても、ラインでマメに連絡を取り合っているし、デートだって結構している。あまり大声では言えないけど、エッチな事も既に済ませた。


 これも桃香ちゃんから誘ってきて、僕はそんな事をしてバチが当たらないかなって半分怯えつつ、桃香ちゃんのベッドの上で大人になった。


 僕も桃香ちゃんも両親が共働きで遅くまでいないから、それ以来隙を見てはお互いの部屋でエッチな事をしまくっている。


 僕はこの通りのチビ助だけど、一応健全な高校生だし、はっきり言ってヤリたい盛りだ。桃香ちゃんみたいな美少女を抱くのはいまだに恐れ多くて気後れするけど、求められたら喜んで期待に応える。


 大体、高校生のお小遣いなんか大した事ないから、そういう事をしようとすると必然的に家になる。お金のある子はホテルに行ってるみたいだけど、どうせお金を使うのなら、僕はデートに使いたい。じゃないと、エッチな事がしたくて桃香ちゃんと付き合ってるみたいで申し訳ない気持ちになってしまう。


 だったらバイトでもしろよって話で、一時期僕もそうしようかと思ったんだけど、桃香ちゃんにとめられた。バイトなんかしたら、二人の時間が減っちゃうからって。


「私はお家でするのが好きなの。私の部屋でしたら、小太郎君が帰った後も小太郎君の匂いがしていい気分だもの。小太郎君の部屋でするのは、小太郎君の部屋にマーキングしてるみたいで気分がいいわ」


 桃香ちゃんは優しいから、それはお世辞半分、気遣い半分の言葉だったんだと思う。それでも僕は嬉しくて、その言葉に甘えてしまった。


 今になって思えば、そういう態度が良くなかったのかもしれない。


 僕みたいな冴えないチビ助が桃香ちゃんみたいな美少女と付き合えている事自体、なにかの間違いか、奇跡みたいな事だったのだ。


 だから僕はその事に感謝して、もっと色々頑張って桃香ちゃんの気持ちを繋ぎとめる努力をするべきだったのだろう。


 前置きが長くなったけど、そんな感じで僕は学校一の美少女と付き合っていた。


 過去形になってしまったのには理由がある。


 告白された時と同じくらい唐突に、僕は彼女を学校一の美男子に寝取られてしまったのだ。


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