養成所の先輩冒険者
僕は午後になると受付係の仕事に戻るように言われて、そしたら教育係のスライムさんが受付をやっていて、僕をみるなり目を三角にして怒ったのです。
「あ・な・た・は! あ・な・た・は受付係ですっス!」
「は、はい。わかっています」
「冒険者さんを黒焦げにしたり、モンスターと戦ったりするのは、あ・な・た・の仕事ではないですっス!」
その後も教育係のスライムさんは、プリプリいろいろ怒っていて、冒険者のランクの見方も分からないのかとか、昨日あれほど説明したのにとか、言われました。
はい。おっしゃる通りです。全部、僕が悪いんです。
それにしても、クロノ鴉が襲ってきた後のことはまったく記憶に無いのだけど、翼を広げて矢を放った......あれは確実に僕を狙っていた......と思うんだけど。今までこんなことなかったのに。
「お前は!......お前は!......お前は!」
突然、お前はと3回言われてびっくりしたのですが、目の前に人がいました。
「お前、アラタだな?」
「ええと、そうですが、どちら様でしょうか?」
「ど、どちら様だぁ? お前の先輩だよ! 先輩! 見たことない? 俺のこと」
先輩? あ、そういえば養成所のとき、この人見たことあるかも。でも、僕、ぼっちでしたから、養成所の他の人たちのことよく知らないんですよね。
「養成所の先輩ですね。ごめんなさい。僕、ほとんど一人で過ごしていたから......」
「いいご身分だよな、お前は。何がほとんど一人だっただ。親方につきっきりで稽古をつけてもらっていたくせに!」
「そ、そうなんですが、それは僕が出来が悪かったからで......」
「まあ、それは良いとしよう。で、お前の後ろにいらっしゃる美女の方はどちら様だ?」
そういえばこの人、僕の後ろを見てなんかポワーンてしてるし。美女? 後ろを振り返ると女神様がいました。
「あの......いつの間に現れたんですか?」
「(今さっきだ)」
「この人、女神様のこと見えるみたいで、美女とか言ってるんですけど......」
「(俺はまさに美女だ。というより俺のことを美女と思うのが正常だし、良い心掛けだ)」
ブシン・ルナ・フォウセンヒメは、自信満々にそう言ったけど、僕は先輩なる人に説明しました。
「あ、この方は女神様で人間じゃないですから......」
「女神様とか人間とか、関係ある? こんな美女でらっしゃる方がそばにいらっっしゃるんだよ?......しかも!......しかも!」
しかも......何だろう? ああそうだ、この女神様、スケスケの服を着てるんでした。
「あの、女神様、人間の前に出てくるときはもうちょっと露出度の低い服を着た方が良いかと思いますが......」
「(『水のはごろも』はかなり防御力が高いのだ!)」
「そ、そうですか、でも女神様ならそんなに防御力の高いものを装備してなくても大丈夫ですよね?」
「(うむ、その通りだ。ならば、お前の望み通り着替えてこよう)」
女神様はどこかへ消え、『旅人の服』を着て戻ってきた。いきなり防御力最低ランクの『旅人の服』をチョイスするのも極端な気がするのですが......
いずれにせよ女神様の豊満ボディで『旅人の服』ははち切れそうになっていて、そして胸がすごくでかい......かえって胸が強調されているようにも思えます。
目の前にいる養成所の先輩の人は、ますます目をハート型にして完全に女神様に悩殺されてるみたいだし......
「ところで、先輩は何しにきたんですか?」
「え? は? 俺、このギルドの準会員なんだけど!」
「あ、お仕事の紹介を受けにいらっしゃったのですね......」
そして、僕は教育係のスライムさんがもう一度教えてくれた冒険者のランクを見るコマンド魔法だとかいう〔ステータス〕を唱えた。