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アラタ、クロノ鴉をやっつける

 救護室の東向きの窓から、レースのカーテンごしに明るい光が差し込んできている。外は良い天気のようです。

 ギロリとこっちを見ている冒険者が口を開きました。


「兄貴ィ。そんなに強ぇえんなら最初から言ってくださいよぉ」

「兄貴? どう考えても冒険者さんの方がはるかに年上だと思いますし。僕、強くないですから!」

「兄貴! 嘘はいけませんぜ、あっしはこう見えてもAランク冒険者なんでさぁ。このあっしを魔導でひと焼きにするなんざ、そんじょそこらの魔導士でもできねぇことでやんすよ」


 兄貴とか、やんすよとか、この人、明らかにさっきと口調が変わってるんですけど......それにあなたを焼いたの僕じゃないですから!


「と、とりあえず、僕のこと兄貴とか呼ぶのやめましょうね、お願いですから、まだ12歳ですし」

「兄貴! 年齢なんざ関係ないでやんす。あっしは自分より強え人は大好きなんでさぁ。兄貴がイヤがっても兄貴って呼ばせて頂きまさぁ」

「そ、そうですか......ところで体は大丈夫ですか?」

「へぇ、あっしは回復力が高いでやすし、ここの救護係は腕がいいでやんす」


 そうこうしていると、不意にこの室内の気温が2、3度下がったような気がしました。

 ドアの隙間からうっすらと赤い魔障が入り込んできている......?

 次の瞬間、ドカンとドアが開きこの部屋は赤い魔障で満たされました。入ってきたのは......クロノ鴉、特B級モンスター......


 クロノ鴉はバサァと翼を広げると、無数の【魔法の矢】を僕めがけて打ち込んできました。ああ......ああ......、僕はまた失神しました。失神したので、ここから数分の出来事は記憶にありません。



 クロノ鴉が放った矢は、しかしなぜかアラタ・アル・シエルナの体をすり抜けた。鴉は「ちっ、次元の計算を誤ったか?」と呟く。

 アラタはベッドから立ち上がり数歩あるくと、【真言・斬・神聖なる剣よ】とほんの静かに囁いた。

 気づいたときには、クロノ鴉はアラタが持つ剣にくし刺しにされ口から血を吐いた。その魔物は赤い魔障となりやがて消えた。そして、部屋中を満たした魔障も消えていった。



「ひ~~~」僕は悲鳴とともに目を覚ましました。矢が! 矢が飛んでくる......と思ったのですが、いつの間にか矢もクロノ鴉も消えてる......?


「兄貴、兄貴もお人が悪い。兄貴が兄貴と呼ばれるのをイヤがる理由もわかりやした。大変失礼しやした。不肖このベアー・サンジ・ドルザ、これからは兄貴のことを親分と呼ばせて頂きやす」

「あの......冒険者さん? 何言ってるのか、よく分からないんですけど......」

「親分、あっしのことはどうぞベアーと呼んでください。なんなら熊でも熊八でもいいでやす」


 なんだろう? あ、そうか、またあの女神様が何かしたんだな......と思ったけど......いない。いないぞ。


「冒険者さんはベアーって名前なんですね。僕、勉強は苦手で古代言語はあんまり分からないんだけど、たしかベアーって熊って意味でしたよね.....」

「そうでやす。あっしは赤ん坊のときから毛深かったらしいのでやんす。それであっしの両親はあっしのことベアーって名付けたそうでやんす。まったくふざけた親でやんすね」

「そ、そうでしたか......」


 でも僕は親の顔も見たことがないから、それでもちょっと羨ましいかな。とか思っていたら、ドアから本物の熊が入ってきました。え、熊?

 熊はベアー・サンジ・ドルザの顔をひとしきりなめまわすと、彼に手紙を渡し、またドアから出ていきました。


「今の熊ですよね?」

「そうでやんす。あっしの忍熊でやんす」

「忍熊?」

「へぇ、忍者の熊でやんす」


 ベアー・サンジ・ドルザは、忍熊から手渡された手紙を読むと「親分、申し訳ねぇ、あっしはちっと用事ができちまったようでやんす」と言った。



投稿は不定期になると思います。

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