アル・シエルナ自治領
「羨ましい?」
「え、ええ。羨ましいです......そうだお兄様、魔導捕縛を解除いたしましょう」
魔導捕縛が解除されるやいなや、僕は目の前にいる少年王に殴りかかりました。しかし僕の右手は何も無い空間を殴っただけでした。あれ?
僕はあきらめません。もう一度殴りかかりました。やはり僕の右手は何も無い空間を殴っただけでした。
少年王はもの凄い高速で僕の右手をよけることができるようです。
「お兄様、いくら頑張っても僕には勝てませんよ。この部屋は僕が魔導結界をはっていますし、お兄様はまだアル家の血の力を思い通りに発動することはできないようですし」
そう言って少年王は僕をもう一度、魔導捕縛にかけました。ぐぬぬ。
「僕は本当にお兄様が羨ましいですよ。生まれてこのかたこの王宮の中しか知りません。そして、この王宮でくり広げられるのは陰謀ばかり」
「だからなんだと言うんだ?」
「お兄様は分かってくださらないのですね」
少年王は僕の理解を得られなく残念そうな顔をしました。
「先日もこの国に『黒い死の病』が発生しましたね。お兄様のお友達が白魔導を発動してくださったかと思います。でもそれだけではダメです。僕は異界の神と契約して、病を発生させている魔物を駆逐しました」
「あ、そうだったの? でも女神様が邪神の糸を切っちゃったけど」
「ちょうど、駆逐し終えたところだったので問題ありません」
それを聞いてこの子も結構頑張ってるのかな? とは思いました。
「ともかく、あの地域はお兄様に任せます。アル・シエルナ自治領とすること、市中に御触れを出しておきますので」
「そんな簡単に決めちゃうの?」
「ええ、僕は国王ですので。魔物との戦いで疲れていますから、少し休ませて頂きます。お兄様はもう帰っていいです。空間移動魔法で冒険者ギルドへ転送いたします」
気づくと僕は冒険者ギルドにいました。
目の前にギルド長のエイジ・エル・エラルドさんがいました。そうだ、この人も『紋章の入墨』があるんだった。
「エイジさん、エイジさんも『紋章の入墨』があるのですよね。ということは僕とは異母兄弟ということですよね?」
「そうだが」
エイジさんは「そうだが」と言うだけで、特に何の感情もないようでした。もっと「おお! 弟よ!」とかないのでしょうか?
「申し訳ないが、俺にはそういったセンチメンタルな感情はないのだ! それより蛙の件はありがとう。俺はアレだけはダメなんだ」
あ、あの、蛙より異母兄弟の件の方が重要な気がしますが。この人ちょっと感覚がずれてるのかも。
「それと、巨大ダーク・フロッグを倒したら、国王がこの町をアル・シエルナ自治領にするって言うんです。僕が自治領主になるみたいです」
「そうか。大変だな! 自治領主になるのは構わんが、このギルドの受付係も頑張ってくれ! 人手不足で大変なんだ」
ええと、つまり『ギルドの受付係』兼『自治領主』てことですか?
「アラタ君は弟だし、兄である俺のこと手伝ってくれるよね?」
そういうところだけ、お兄さんづらするのやめてくださいよー!
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。
この回で第一部完結とさせていただきます。
第二部に相当するものは別作品として連載していきたいと考えております。
(第二部は、もう一人のアル家の血を引く少年が登場して、アラタ君とその少年、主人公が二人いる物語にしたいと思っています)




