貧民窟の掃討作戦
最初の異変はギルド長の部屋からでした。
ギルド長のエイジ・エル・エラルドさんが大騒ぎしているので、僕はギルド長室へ行ってみました。ギルド長は「蛙! 蛙がぁ!」と騒いでいました。
見ると、ダーク・フロッグがギルド長室にたくさん湧いていました。
「これはダーク・フロッグですね」
「俺は蛙だけはダメなんだ」
僕はひのきの短剣でダーク・フロッグを刺してみました。ダーク・フロッグは弱く、なんということもなくやっつけることができ、赤い魔石になりました。
それより、以前から聞いてみたかったことがあるのでした。
「エイジさんは僕と同じ『紋章の入墨』が彫られているんですよね。ということは......」
「そんなことより、蛙! 蛙をなんとかしてくれ!」
エイジさん、ギルド長なんだから強いはずなのに。仕方なく僕は次々とダーク・フロッグをやっつけていきました。
ギルド長室のすべてのダーク・フロッグを退治することができました。
「ダーク・フロッグだ! ダーク・フロッグの大群が押し寄せてきたぞ!」
今度は外から騒ぎ声が聞こえてきました。窓から外を見ると、町中が蛙のモンスター、ダーク・フロッグであふれかえっています。
僕は外へ飛び出て、ダーク・フロッグをやっつけていきました。
町の皆さんも僕が作ったひのきの短剣でダーク・フロッグと戦っています。
これが、女神様の言う『王による貧民窟の掃討作戦』なのでしょうか?
「なんだこのモンスター弱いじゃないか」
「俺たちでもやっつけられるぞ!」
ダーク・フロッグは次々とやってきましたが、町の皆さんも次々と蛙のモンスターをやっつけていきました。
討伐されたダーク・フロッグは赤い魔石になりました。問題はその赤い魔石です。しばらくすると復活してまたダーク・フロッグに戻ってしまうのです。
通常は冒険者ギルドにて赤い魔石に処置を施し、モンスターに戻らないようにするのですが、今回は量が多すぎて処置が間に合いません。
どうしましょう?
黒猫さんが町の広場に魔石を集めてくださいというので、町の皆さんに手伝ってもらってこの大量の赤い魔石をいったん広場に集めることにしました。
集められた赤い魔石は、どんどん山のようになっていきました。
そうこうしているうちに、また押し寄せてくるダーク・フロッグ。山となっていく赤い魔石。魔石から復活するダーク・フロッグ。
やっつけてもやっつけてもキリがありません。
「マスター、私の【魔法陣・剣】と白梅さんの【魔導結界・梅】の発動許可を出してください!」
「え、発動許可? それってエネルギー吸われるやつですか?」
「魔法陣・魔導結界に騎士のエネルギーは不要です。」
ええと、騎士のエネルギーって何ですか?
「もう! マスター、早く発動許可を出すのです!」
「は、はい。発動許可します。発動してください。お願いします」
「イエス! マスター! 黒い海に集う神々の名において【魔法陣・剣】を発動します! 白梅の【魔導結界・梅】と共に!」
黒猫さんの左前足の肉球から赤い光が、白梅さんの両手からうっすらと白い光が放たれました。
【魔法陣・剣】と【魔導結界・梅】が発動したようです。黒猫さんと白梅さんが事前にこの広場にしかけておいたそうで、赤く光る魔法陣と白くて透明な梅の花弁が、山となった赤い魔石を覆いました。
【魔法陣・剣】は魔石から復活するモンスターを自動的に撃退し、【魔導結界・梅】はモンスターが結界内から逃れられないようにする効果があるそうです。
「なんだ! そんな便利なものだったのなら早く言ってください」
「といいますか、マスターが魔導に関する知識がなさすぎる気がします」
とはいえ、ダーク・フロッグはさらにこの町へやって来ます。
ダーク・フロッグを討伐するたび、広場の魔石の山はどんどん大きくなっていきます。
あ、なんか魔石と魔石が合体していっているような......いえ、合体していっています! 合体した巨大魔石が復活し、巨大ダーク・フロッグになったじゃないですか! ど、ど、ど、どうするんですか? これ。
「マスター! 魔法陣と魔導結界が破られるまであと9.5秒です!」
「ど、ど、どうすればいいんですか!」
「マスター! 落ち着いて! 力を解放して真理に語りかけるのです!」
真理に語りかけるって?
真理に語りかける......真言の唱え方......アル家の血......そうか!
「【真言・斬・神聖なる剣よ】」
僕は囁く。アル家に伝わる真言と呼ばれる呪文を。いつそんな呪文を覚えたのか自分でも分かりません。
僕が呼び出した神聖なる剣が巨大ダーク・フロッグの心臓を突き刺す。巨大ダーク・フロッグは魔石には戻らず赤い魔障となり消えた。そして、神聖なる剣もまたその場から消えた。




