アル家の血を引く者よ
翌朝一番に僕はベアーさんと武器屋に行きました。
「これはベアー親分、お久しぶりです。ベアー親分が武器屋になんて珍しいですね」
「俺用じゃないんだ。親分のために買いに来たんだ」
「親分?」
武器屋さんが僕を見ました。ベアーさん親分て呼ばれてるんだ。
「その子が親分の親分ってことですか? エラルドの冒険者ギルドの受付の子じゃないですか」
「こんにちは。ぼ、僕のこと知っているんですか?」
「ええ、私も護符を買いましたから。おかげさまで商売繁盛してます」
武器屋さんまで僕の護符を買ってくれてたんだ。というか僕の護符って商売繁盛の力があるんでしょうか。
「このあたりじゃ、護符作りのアラタ君って有名になっていますよ。親分の親分だったとは知りませんでした。これからは親分の親分と呼ばせて頂きます」
あ、いえ、親分の親分とか呼ばなくていいですから。
それはそうと、商売繁盛したおかげで今は品薄だそうです。
・ひのきの短剣 50ゴールド
・炎の短剣 250ゴールド
・炎の剣 500ゴールド
・雷の剣 900ゴールド
・氷の大きな杖 700ゴールド
品薄でこの5つしかないそうです。とはいえ、剣なんてどれがいいか分かりません。
「僕、どれがいいか分からないので、ひのきの短剣でいいです」
「ひのきの短剣でいいんでやんすか? 親分、遠慮はいりやせんぜ。まあでも親分ならひのきの短剣でも充分でやんすね」
そういうわけで僕はベアーさんにひのきの短剣を買ってもらい、武器屋を出ました。
「ところで、ベアーさん、ミニデーモンてどこにいるんでしょうか?」
「ミニデーモンならとなり町の町はずれの森にたくさん生息しているでやんす」
ベアーさんに案内してもらって、となり町の町はずれの森へ行きました。
森にはたしかにミニデーモンがたくさんいましたが、みんなベアーさんを見ると逃げてしまいました。
「ミニデーモンはEランクモンスターでやんすから、あっしがいるとみんな逃げちまうでやんすね」
「Eランクモンスターなんですか?」
「そうでやんす。仕方ないので、あっしは遠くで見てるでやんす」
Eランクモンスターなら僕ひとりでもなんとかなるかも。
ミニデーモンはベアーさんが遠くへ行くと「けけけ、ガキ一人になったぜ。思う存分いたぶってやる」と言って、〔プチ・ダーク・ファイア〕をたくさん投げつけてきました。
しかし、遅いです。特B級モンスターのクロノ鴉の【魔法の矢】ですらスローモーションに見えた僕にとって、ミニデーモンの〔プチ・ダーク・ファイア〕なんて遅すぎてお話しにならないです。
よし攻撃だ! 僕はひのきの短剣でミニデーモンに切りつけました。ミニデーモンは「あ、痛てえ」と言いましたが、あまりダメージを受けていないようです。
〔プチ・ダーク・ファイア〕を避けつつ、ひのきの短剣で切りつけました。その度にミニデーモンは「痛てえ」と言いますが、ダメージになっていないようです。
これどうしたらいいんでしょうか? そのとき、声が聞こえました。
「(なにを遊んでいるんだ?)」
「女神様? 遊んでないです。ミニデーモン討伐をしているんです」
「(なら、早く討伐せい)」
「それが、いくら切り付けてもダメなんです!」
「(情けないことよ。アル家の血を引く者よ、お前は真言の唱え方も知らぬのか?)」
アル家の血......真言の唱え方......アル家の血、アル家の血、アル家の血。
アル家の血という言葉を聞いて僕はいちじるしく混乱しました。
「【真言・斬・剣の舞う空よ】」
ああ、僕は、僕は、僕は......何を囁いたんだろう? 何を......




