魔導書の黒猫
クロノ鴉が次々と打ち込んでくる矢を、僕は器用に避けることができたけど、こいつらどうやってやっつければいいだろう?
試しに特大〔ファイア・ストーム〕を放ってみました。親方のヒヨコを黒焦げにした技です。しかし、特大の〔ファイア・ストーム〕でしたが、クロノ鴉の羽根を少しちりちりと焦がしただけでした。ちっともダメージを与えられていないです。
せめて剣があればと思うのですが。そうだ、剣よ現れよ! と念じてみました......剣よ現れよ! 剣よ現れよ! ......いくら念じても現れません。ですよね.....
そんなことをやっていると、奥の書棚の黒魔導書がさらにカタカタと音を立てて床に落ちました。バサッと落ちた瞬間、何か出てきました。黒猫でした。
あ、魔導書から黒猫。これきっとあれですね。魔導書の精ですね。
黒猫は「マスター! ご助力いたします!」と言いました。
マスターって何ですか? あと、ご助力って、エネルギー吸われるやつですかね? ああでも助けてくれるなら助けて下さい。
「なんだかよく分からないですけど、助けてください!」
「イエス! マスター! 黒い海に集う神々よ、我に力を与えよ、【黒海・炎・真理の火】」
魔導書の精・黒猫は、黒魔導【黒海・炎・真理の火】を唱えた。
黒猫の左前足の肉球が赤く光ると、閃光のような炎がクロノ鴉たちを焼き尽くす。クロノ鴉は赤い魔障となり消えた。彼らが放った矢も魔障となり消えていった。
とりあえず、エネルギーは吸われませんでした。
店主の紫スライムさんが驚いています。
「こりゃあ、驚いたねえ、魔導書の精なんて久しぶりに見たよ」
「魔導書の精って、やっぱり珍しいんですか?」
「珍しいなんてもんじゃないよ、しかも坊やのことマスターって認めちまってる」
そうだ、マスターってなんなんだろう?
「黒猫さん、マスターって何ですか?」
「マスターはマスターです」
「ああ、マスターなんですね......」
頭が痛くなりそうな予感がしたので、これ以上は聞かないことにしました。
「その魔導書は、坊やにあげるよ」
「え、くれるんですか?」
「かなり値打ちのある魔導書なんだけどね、魔導書の精がマスターって認めちまってるからねえ。もう売り物にならないよ」
よく分からないことばかりですが、くれるというなら貰っておくことにしましょう。
僕が魔導書を拾うと、黒猫は魔導書の中に戻って行きました。
「魔導書をくださいまして、ありがとうございます」
僕はきちんとお礼を言いました。
「いいよ。魔導書の精なんてめったに見られるもんじゃないしね。いいもの見せてもらったよ」
「ところでなんですが、このへんに冒険者ギルドありませんか? 闇の」
「闇の? あるっちゃあるけど、それこそ子供の行く場所じゃないよ。まあでも魔導書の精がマスターって認めるほどなんだから大丈夫かねえ」
魔道具屋の店主の紫スライムのおばさんは、そう言いながら闇冒険者ギルドの場所を教えてくれました。




