魔道具屋の店主
闇冒険者ギルドへ行こう! って思ったんだけど、よくよく考えてみますと闇冒険者ギルドってどこにあるんだろう? そうだ、女神様に聞いてみようって思ったわけですが......いない。
あたりを見回してみましたが、やっぱり、いない。
どこ行っちゃったんだろう? でもまあいいか。そもそも、なんで僕につきまとっているのかもよく分かりませんし。いない方が気楽でいいかも......
それで、どこにあるのか分からないまま、僕はこの町の路地を歩き回りました。路地では酔っ払いが立ち小便をしていました。まったくこんな真っ昼間からお酒なんて飲んでと思いましたが、僕は絡まれないようそーっと酔っ払いを避けて歩いていきました。
歩いていくと、目の前に真っ黒な建物がありまして、かすかに甘い香りが漂ってくるような気がします。
怪しい建物だ。真っ黒だし、これがきっと闇冒険者ギルドだ! 僕は確信しました。
勇気を出してドアを開けると、建物の中は書物でいっぱいでした。どうも魔導書のようです。あれ、魔導書屋さんだったのかな?
店のカウンターの上には紫スライムがいました。紫スライムというのはその名の通り、紫色のスライムです。彼がこの店の店主でしょうか。
紫スライムは僕をちらりと見た後、キセルを取り出すと先端の火皿に干した葉っぱを丸めて入れると火をつけました。甘い香りが漂ってくる。この香り、違法タバコかな?
「ここは子供の来る場所じゃないよ!」
「す、すみません......スライムのおじさん、ここは冒険者ギルドでしょうか?」
「冒険者ギルドのわけないだろう。ここは魔道具屋だ! それから、あたしはおじさんじゃないよ!」
スライムの性別は見分けがつきません。どうも女性のスライムだったようです。
「魔道具屋さん......ですか。魔導書がいっぱいですね」
「あたしは魔導書が好きなんだよ、ああでも力の石だとか薬草の類も扱ってるよ、でも子供には売らないよ、あたしは子供は嫌いなんだよ」
「あ、あのちょっとお聞きしたいのですが、このへんに闇冒険者ギルドというのがありませんか?」
「闇冒険者ギルド? おかしなことを聞くガキだね。知らないよ、何度も言わせないでくれ、あたしは子供は嫌いなんだよ、ガキはさっさと帰りな!」
そしてどうしたことか、奥の方の書棚の黒魔導書がカタカタと音をたてました。
「なんだい騒がしいね。魔導書が騒いでいる。不吉だねえ。これは不吉だよ。坊や悪いことは言わないよ、さっさとおうちに帰りな」
魔道具屋の店主はしきりに帰れと言うので、わかりました、帰りますよ。帰ればいいんでしょ。
店のドアまで行くと、ドアの隙間から赤い魔障......ああ、こないだと同じやつだ。また、クロノ鴉かな? そーっとドアを開けてみると、やっぱりクロノ鴉でした。しかも今回は三匹もいます。
「店主さん、クロノ鴉です」
「クロノ鴉? 特B級モンスターじゃないか。ああ、もう終わりだよ、坊やも短い人生だったねえ」
「いや......短い人生って、まだ死にたくないんですけど!」
あ、そうだ! こないだみたいに失神すれば不思議な力でクロノ鴉をやっつけられるかも。そう思って、僕は失神! 失神! と念じてみました。がしかし、そう簡単に失神できるわけもありません。
そうですよね。そんなに都合よく失神できるわけないですよね。
仕方ない、自力で戦うか! 僕は勢いよくドアを開けると一気に入ってくる三匹のクロノ鴉。僕めがけて打ち込んでくる無数の【魔法の矢】、こいつら僕を狙ってるんだ。
無数の【魔法の矢】......なんだけど、意外と遅い? 〔飛空術〕で宙に浮かびながら、僕はすべての矢を避けました。
遅い! スローモーションのようだ。
親方〈元剣聖〉ウキグモ・ジョサ・レイクに鍛えられた僕にとって、クロノ鴉の【魔法の矢】などスローモーションのようにしか見えない。
親方の【剣の舞い】の方が遥かに速い!




