修道院病院の聖女
マルコ先輩、倒れてしまったので、この病棟の空いているベッドを勝手に借りて寝かせておきました。
白梅さんのパワーはすさまじく『黒い死の病』の患者さんの病状の進行は完全に止まったみたいです。
皮膚からにじみ出ていた膿は止まり、その強烈な匂いも梅の香によって消されました。
また、患者さんたちは体中の痛みからも解放され、すっかりぴんぴん元気になっています。そのためちょっとした騒ぎになり、ゾンダーク教の僧侶が何人かやって来ました。
「お前達、いったい何をしたのだ!」
「いや、あっしらは『黒い死の病』に効くという白魔導を使ってみただけでやして」
「白魔導? ここはゾンダークの領域であるぞ、ゾンダークの神々にお伺いも立てず白魔導を唱えるとは! なんと恐ろしいことを......」
それでゾンダーク教の僧侶達とひと悶着あったわけですが、ベアーさんが「そうでやんすか、大変でやんすね」とかのらりくらりと言いかわしているうちに、「お前たちは、ゾンダークの神々から罰を受けることになるぞ」と捨て台詞をはいて彼らは戻っていきました。
リリ・ミシア・ナミさんは、マルコ先輩を心配そうに見ていました。マルコ先輩はやがて目を覚ますと、目の前にリリさんの顔があったので、ちょっと驚いたみたいです。
リリさんを見ると、顔を赤くして頭から湯気がでました。先輩はどうも女性を見ると頭から湯気が出る体質のようですが、ベアーさんは男とはそういうものだと言い、親分もあと数年もすればそうなるでやんすと言いました。
そういうものなのでしょうか? まあ、それはともかく、リリさんは先輩に話しかけました。
「マルコさん、大丈夫ですか?」
「......あ、俺、倒れちゃったんですね」
「マルコさんが白魔導の発動のため頑張ってくださったこと、聞きました」
マルコ先輩は元気そうになった患者さん達を見て、ほっとしたようです。それから神妙な顔をして言いました。
「......リリさん、俺、こないだ、リリさんやここの患者さん達のこと嫌そうな目で見てしまいました......俺、なんか自分が恥ずかしくなりました......」
「みんなそうですよ。誰もがみんなこの患者さん達をそういう目で見ます。でもマルコさんは綺麗で素直な心をお持ちと思います。マルコさんはこの患者さん達のためにご尽力くださいました」
そしてしかし、ベアーさんは長居は無用でやんすと言い、寝ているマルコ先輩を無理やり連れて僕らは病院を後にしました。
後日、聞いたところによりますと、症状の出ていなかった患者さんは退院することができたそうです。しかし、修道院病院は症状が出て皮膚が黒くただれた人は退院させなかったそうです。
リリさんは、そういった患者さんのお世話をしたいということで、病院に職員として残ったそうです。
それを聞いて、マルコ先輩はリリさんこそ聖女だと言いました。
***
病院から出ると僕は「僕、ちょっと用事があるので」と言い、二人と別れました。
そうです、闇冒険者ギルドというのに行ってみるのです。教育係のスライムさんは法律違反と言いますが、僕も貧民窟といわれる町で育った者ですからね、法律違反なんてなんぼのものですか、と思うわけですよ。僕はべつに真面目な優等生じゃありませんからね。




