僕はいつか王になる
王様になりたいんです!
本当はいつか王様になりたいと思っているんですけど、今日から僕はこの小さい冒険者ギルドで受付の仕事をやることになりました。
そしてなぜか、困ったことに女神様なる方が僕についてきちゃっているんです。
女神様がついてくるなんて羨ましい? いえいえ安心してください。女神様といってもおばさんですから!
「(お前、俺のことまたおばさんて思っただろ?)」
「ああもう、仕事中なんです。話しかけてこないでください。しかも自分のこと俺とかいうのやめた方がいいと思いますよ......いちおう女神様なんだし」
「(いちおうではない! 俺は女神だ!)」
俺とかいってますが、女神様なのは確かです。おそらく、たぶん。
『水のはごろも』とかいうスケスケの服を着ているから、僕が見たところ少なくとも女性の体をしているってことは確かなんです。
ところで、僕が生まれ育ったこの町は、この国の中でも貧民窟と呼ばれている地域にあります。なものですから、率直にいってがらの悪い人が多いいんです。
今まさに図体のでかい荒くれ者のようなやつがこっちに歩いてくるし......
「おい坊主、なにぶつぶつ喋ってるんだ? しかし何だ、男が受付やってるのか! 昨日までいたあの可愛い嬢ちゃんはどうしたんだ?」
話しかけてきたし。ああ、受付だからこれが仕事なのか。それにしても、この女神様のこと見える人と見えない人がいるみたいで......たいていの人には見えないみたいなんですけれど......
「可愛い嬢ちゃん......ああ前任者の方のことですね。なんか急に辞めちゃったらしいんです」
「辞めた? お前がイジメたのか?」
「い、イジメませんよ。僕、この仕事今日からなので会ったこともないですし」
「しかし、受付ってぇのは可愛い嬢ちゃんの方がいいなぁ。まあいい、なんか仕事紹介しろ」
「ええと、冒険者様のランクはおいくつでしょうか?」
「ランク? 見りゃわかるだろ?」
「僕、見てもわからないんですけど......見るとわかるものなんですか?」
「坊主! お前はバカなのか? それとも俺様をおちょくっているのか?」
冒険者の顔を見るとどす黒くなっていて、かなり怒っているみたいです、短気みたいですどうしよう......
すると、この小さな冒険者ギルドの薄暗い部屋に神聖なる力が立ち込め、曇天の空が見える窓ガラスがカタカタと音を立てて揺れたかと思ったら、部屋の中だというのに、一瞬光るとその冒険者に雷が落ちた。
雷の一撃で彼は黒焦げになって失神していた。大丈夫、死んではいない。
「はひ~~~~~~」
悲鳴を上げたのは僕です。でもこんな超絶強力な技をつかえるのは......
「め、女神様? いま雷を落としましたか?」
「(落としてやったぜ!)」
「それ、落としちゃダメなやつです!」
「(なぜだ? お前が困っているようだから助けてやったまでだ)」
ああ、なんか前途多難な気がしてきました......なんだか眩暈もしてきたような......そして僕も失神してしまいました。
そうだ、申し遅れました。僕はアラタ・アル・シエルナ、12歳です。失神している最中に自己紹介するのもなんですが......
投稿は不定期になると思います。
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