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第82話【閑話:将軍の務め】








エルトリア魔族国、将軍。

軍事の権限を一手に引き受ける最重要官職のひとつだ。

平時には治安維持と兵士の訓練。

有事の際には前線に立ち、精鋭の指揮を執って敵対者を打ち砕く総責任者だ。


――――ギレン・コルボルト。


旧クラナカルタの王が現在の魔王に敗れ、彼は将軍の地位に就いた。

本来なら公開処刑なり、国外追放なりといった処分を受ける。

彼が魔族国に組み込まれるとき、多少なりの反発や不安があったのは記憶に新しいところだ。

今日は彼の仕事の日々を追ってみる。


「今日はこれまで」


将軍の鶴の一声で、魔族国に所属する兵士たちが一斉に倒れこんだ。

基礎体力を身に付けるための走りこみ。

武具の扱い、魔法の扱いの錬度を上昇させるための訓練。

模擬戦による実践訓練にはギレン本人も参戦し、身体の調子を確かめている。


「し、死ぬ……」

「殺せぇ、いっそ殺せよぉぉぉお」

「目を覚ませ! 寝たら死ぬぞ!」

「故郷の家族に、もう一度……逢いたかった……」

「お前、故郷ってメンフィルじゃねえか」


総じて厳しい戦闘訓練らしいことは、兵士たちの会話で読み取れるだろう。

訓練終了後に話せる者たちを見て、ギレンは満足げに頷いた。

鍛え上げた初期では誰一人、口を開くことも出来なかった。

泣き言が言える内はまだまだ扱きがいがある。


「一時間の休憩後、魔物の駆逐部隊を編成する。よく休め」

「はっ」


周囲の魔物を掃討することも軍の仕事だ。

魔物退治はゲオルグ率いるギルドの義勇軍が適度に鎮圧していることで、かなりの治安維持が見込まれている。

魔物を討伐し、死骸から売れるものを剥ぎ取って経済に当てる。

兵士たちの実践訓練にもなるので効率がいい。


「おーい」

「む?」


中庭から移動して自己鍛錬をしようとするギレンを呼び止める声。

己を破った魔王のうちの一人だ。

振り返れば王の礼装に身を包んだ紅蓮色の瞳の少年が、野性味の溢れる笑みを浮かべていた。


「ちょっと時間あるか? 暇潰しの雑談に付き合ってくれよ」


断る理由はなかった。

仏頂面は変わらないまま、将軍は踵を返すと龍斗のほうへと歩いていく。




     ◇     ◇     ◇     ◇




情勢が緊迫する時代にも休息は必要だ。

偉い人は言った。

火急の事態に備えて身体を休めることも、戦時中の仕事のひとつだ、と。

魔王となった奈緒の身体に居候中の魂、鎖倉龍斗は数少ない休みを謳歌することにした。

奈緒は忙しいときほど休めない性格らしい。


「そういやギレン、セシリーとはどうなんだ?」

「む?」


将軍として兵士たちを鍛えるギレンに声を掛け、談笑を試みる。

今日一日は疲労することは一切、してはならない、というのが宰相閣下からの仕事の内容だった。

奈緒は休憩の権利を龍斗に譲り、王の責務を脳内で果たしている。

代わりに龍斗は全力で休むことにしたのだ。

第一歩がギレンとの雑談。


「どう、とは?」

「ヤったの?」

「何をだ?」

「直接的に言えば子作り」


間接的に言っても伝わらんだろうな、というのが龍斗の感想だ。

数ヶ月に及ぶ付き合いでギレンとの付き合い方は分かってきた。

彼は戦い以外のことは無知なのだ。

天然とも言うが。


「やり方がよく分からん」

「本気か……?」

「何だ? 何故そこで化け物でも見たかのように驚く」

「参った。こいつは本物だ……!」


戦慄が龍斗を包み込む。

雑談の端々でギレンの情操教育の恐ろしさを知ってしまった。

性欲の代わりに戦欲が備わっているに違いない。

男子の雑談は猥談だと相場が決まっている、とは龍斗の弁だが、少し後悔した。


「一緒の部屋に住んでいるんだよな?」

「ああ」

「噂では一緒のベッドで寝るときもある、と聞いているが……」

「たまに、だが……?」


何度目か分からない衝撃が龍斗を襲う。

天然だとは思っていたが此処までとは思わなかった。

城郭の隅の壁に背中を預けながら、静かに龍斗は腕組みをして溜息をつく。


「やれやれ……それじゃあ、俺がちょっとアドバイスを……」


龍斗に寄る情操教育が幕を開ける。

指導は一時間も掛からなかった。

口で教えるような問題ではないということに気づき、早々に切り上げることにしたのだ。




     ◇     ◇     ◇     ◇




「セシリー」

「え? って、な、何よギィ!? いきなり抱きしめて!?」

「…………」

「わ、私も急だと心の準備が! い、いやでも別に嫌ってわけでもなくて……その……!?」

「………………」

「……ぎ、ギィ?」

「……抱けば子供が出来る、と聞いたのだが……?」

「死ねばいいのに!!」




     ◇     ◇     ◇     ◇




「という訳で、本気で殴られた」

「…………」


翌朝。

仕事始めの奈緒に報告。

書斎に座って硬直する奈緒は、眉間をほぐすように撫でて。

口元が引き攣った笑みを浮かべて口を開く。


「もう、ギレンはそのままでいるといいよ……」

「……そうか?」

「うん。後、龍斗には罰を与えておくから、何を聞いたか分からないけど全部忘れること」

「そうか」


休日を楽しんで爆睡中の親友を心の中で睨む。

懲役六時間で牢屋に閉じ込め、精神的に痛めつけることにした。数分後には悲鳴が上がってくるだろう。

奈緒は改めて書類に判子を押印しながら、尋ねてきたギレンに一言。


「あと、セシリーには謝っておこうね……」

「……気が重いな」


奴隷と主人の立場が逆転している気がするが、多くは語らない。

同棲中、と表現すべき二人だが、今のままでもいい気がする。

願わくば何かの兆しがあれば、と思うが。

主に天然の行動に一喜一憂するセシリーのためにも。遠い未来の話のような気がするが。




     ◇     ◇     ◇     ◇




「セシリー」

「……何よ」

「済まなかった。我はまた勝手なことをしてしまったな」

「べっ、別に良いわよ。ギィがそうなのは慣れたことだし……別に怒ってないわよ」

「……そうか」

「ほ、ほら! もう寝ましょう? 早くベッドに入ってちょうだい、電気が消せないわ」

「…………また、一緒に寝るのか? 暑くはないのか?」

「いっ、いいから早くしなさいッ!!」

「分かった……」




     ◇     ◇     ◇     ◇




傭兵団隊長『だった』ゲオルグ・バッツは、砂漠を真っ直ぐに歩いていた。

じりじり、と照らす太陽が煩わしい。蒸し暑くなって薄着になりたいところだが、鎧を外すのは危険だ。

建国式から一ヶ月が経過した。

瀕死の重傷だったゲオルグも、今はすっかり傷も塞がっている。得物である大斧を肩に担ぎながら、溜息をついた。


「ゲオルグさーん。こっちの狩り、終わりましたー」

「おうー」

「別働隊から連絡ー。オリヴァースに遠征した討伐隊は任務を達成ー、報酬をもらって帰還するっすー」

「おうー、ご苦労さんー……って」


ひくっ、と口元が僅かに戦慄いた。

現状を確認する。

かつての傭兵の部下たちと共に魔物討伐を行っている。

傭兵として働いているはずの彼らが、今ではすっかり『魔物討伐隊の精鋭、ゲオルグ牛鬼団』で定着してしまった。


「オレたち一体なにやってんだああああああああああああ!!!」

「うおおおっ、びっくりしたあ!?」

「ご乱心!? 隊長がご乱心っすかー!?」


ご存知、彼らは傭兵団だ。

国に仕えるのではなく、自由を心情として各国を渡り歩く根無し草だ。

何故こんなところでエルトリア魔族国の財政を支える仕事に精を出しているのか、と。

今頃は戦争の準備で忙しい時期ではなかったのか。


「それでも、こっちの仕事はやらないといけねえじゃないですか」

「分かってるけどよ! 戦争といえばオレたちの出番だろう! 傭兵隊長、舐めんなよ!」

「今のゲオルグさんの役職は違うでしょうに」

「魔王様に働かせてもらっているだけ、マシじゃねえっすかー」


魔物討伐隊、隊長ゲオルグ・バッツ。

新たに彼に与えられた役職は治安維持と魔物狩りの総司令だ。

通常は付近の魔物たちを討伐して、その死骸をラファールの里の民衆と共に回収。

亡骸は料理人や技術者によって解体され、魔法で保存して、それを商人に売ったり、輸出する。


「ギルドみてえだよなぁ、これ」

「いや、まさにそれだと」


更には自国、他国に関わらず依頼を受けて魔物退治に赴く。

オリヴァースは特に森や水が多いため、魔物も頻繁に出没しやすく、住人の被害も甚大だ。

そこで登場するのがゲオルグ率いる魔物討伐隊である。

報酬を貰って依頼を受け、魔物を討伐して死骸を確保。これが遠征部隊と言われている。


「あー、あー。こちらゲオルグ隊。ナザック砦、聞こえるか、オーバー?」

『はい、こちら魔物討伐隊本部、オーバー』

「魔物の掃討を完了。ラファールの里の奴らに引き渡してから帰還する、オーバー?」

『了解、オーバー』


魔物討伐隊の本拠地はナザック砦だ。

傭兵と兵士と義勇兵、合わせて五百名の精鋭が待機している。

まあ、毎日出歩いているため、常駐している兵の数は百人ほど。

魔物を狩ることで財政も潤い、治安も回復し、他国からも信頼されるなど、一石で何鳥も取れるシステムとなっている。


「ああ、くそ! むかつく! オレはサボる! サボるぞ!」

「ああ、ここまで堂々と怠慢を告白する隊長……だが、一生付いていきます! 墓穴まで!」

「やだよ、逆に気持ち悪りぃよ、それ!」


ぎゃあぎゃあ、と騒ぎ立てるゲオルグたち。

それが平和の何よりの証拠、と言えるだろう。事実、エルトリア魔族国の民衆は笑顔で暮らせている。

当時の王朝での問題だった食料面、資金面、衛生面。

これらが著しく向上し、商人の出入りも増えた。経済面においても、かなりの成果を挙げることができている。

国作りは順調、と言って問題ないだろう。

戦争なんてなければいいのに。


「……んお?」

「げっ」


ゴゴゴゴゴ、と大地が震動した。

地面を掘り進む大型の魔物の影を感じ取り、ゲオルグは静かに唇を唾液で潤した。

部下たちは露骨に嫌な顔をするが、隊長は喜色すら漂わせる声色で、声を弾ませた。


「大物だぜ……!」


言葉と同時に、地面が文字通り爆砕した。

大量の砂が宙に舞い上がり、視界を黄土色一色に染め上げ、その陰に隠れて魔物の巨体が姿を現す。

部下の一人が砂嵐の中から正確に魔物を認識し、声を上げた。


「ナーガだ……」

「Cクラスっすか……!」

「がっはっは! 面白れえ、かかってこいやああああああ!!!」


体長三十メートルの巨大ミミズが、獲物に向かって容赦なく突っ込んでくる。

地獄から響いてくるような呻き声が響く。

緩慢な動きだが、巨体であればそれだけでも大きな脅威になる。砂漠に生息する魔物の最上位が口を開く。

ゲオルグは歓喜の表情と共に大斧を構えると、一直線に突撃して。


ふと、あっさりと進軍を止めていた。


喜びの表情は白けたものに変わり、掲げていた大斧は行き先をなくして下ろされる。

ちぇー、といじけた子供のような表情。その視界の先で『ナーガの身体は両断』されていた。

ミミズの身体とはいえ、縦に真っ二つに切り裂かれては再生もできない。

地に沈むナーガの巨体に、怪物を一撃で葬り去った男が無表情で乗っかっていた。


「ふむ」

「ふむ、じゃねえよ! せっかくのオレの獲物が!」

「仕事は共同作業のようなものだろう。我が仕留めようと問題はないはずだ」

「くそ、アレだな! テメエは将軍になっても変わらねえなあ、ギレン!」


将軍、ギレン・コルボルト。

平時の仕事は魔物討伐隊の部隊長として、砂漠の魔物を駆り尽くしている。

奈緒の政策は砂漠の魔物を駆逐して民衆の身の安全を護ること。

最終的には魔物すらも『養殖』していく考えを示している。


「魔王の命令だ。ラキアスの動きがあるまでは、我も通常の業務に戻る」

「……お前は良いよなぁ、ギレン。戦争になったら前線だろ?」

「暴れ足りないのか?」

「血が騒ぐんだぜ。なあ、ギレン。ちょっとやり合おうぜ」


何ともはた迷惑な『国公認のギルド隊長』である。

ギルド運営も貴重な財源なので手を抜けない。現状はゲオルグに財政を担当してもらう方針だ。

戦争の際にはギルドのメンバーにも徴兵することになる。

百戦錬磨のミノタウロス族の彼にこそ、戦える兵士を見極めて推薦してほしい、と思うのだ。


「……決闘の類は法律で厳しく取り締まられている。誰かのせいでな」

「うぐっ」


総一郎との決闘で建物が破壊されたことを受け、テセラが激怒しながら追加した法律だ。

当事者のゲオルグは何とも言えない。

宰相も激怒すると魔王も恐れる女傑であることだし。


「……変わったよな、お前も。前なら法律なんか関係ないって感じだったじゃねえか」

「…………思うところがあってな」


魔族国の色に染まってきた、ということか。

無謀な心得をする癖までは変わっていないが、彼もこの国に適応しようとしている。

我侭を一人口にするわけにはいかないゲオルグも、仕方がねえなぁ、と仕事に戻ることにした。

思うところ、というのは気にならないでもないが。




     ◇     ◇     ◇     ◇




夜。

暗闇に包まれた城の一室。

首脳陣は残らず会議室に集結し、硬い表情で魔王を見つめていた。

紅蓮色のランタンが揺れ、中央に座る少年の顔に影を作る。


「来たよ、ラキアス」


短い言葉にすべてが凝縮されていた。

彼の傍に控える魔王の后は、不機嫌な様子で俯いたまま口を閉ざしていた。

后を護る従者は袴の襟を直して、姿勢を正して次の言葉を待つ。

小柄な宰相が魔王の言葉を引き継いだ。


「ナザック砦を前線とし、迎撃に移ることが決まった」

「僕が直接指揮を執る」

「……おいおい、坊主。総大将直々の先鋒ってなぁ、少し感心しねえぞ……」

「僕のやり方だからね」


旧クラナカルタを打ち破ったときも。

ナザック砦を陥落させたときも。

魔王ギレンを打ち倒したときも、少年は常に前線で戦い続けた。

今までの戦い方を繰り返すだけだ。既に反対しそうな宰相閣下は説得済みだった。


「僕たちの生命線はナザック砦。ここを陥落させられたら、国は滅びる」


砦が陥落すれば、残るはアズモース渓谷とラファールの里だ。

敵の大軍を迎え撃つ施設はない。

城塞都市メンフィルは頑強な反面、補給に問題がある。兵糧責めにされれば一溜まりもない。

絶対防衛ラインが、既に前線のナザック砦なのだ。


「妾とユーリィ、ゲオルグは前もって伝えておいた通り、本国に居残りじゃ。政治も回さねばならんからの」

「へーい」

「はい。承知。いたしております」


宰相のテセラは魔王代理として国の政治を運営してもらわなければならない。

文官として優秀なユーリィは悪魔の炎の一件で魔力を失っている。戦えないので当然、居残り組。

本人は不服だろうが、ゲオルグも居残り組だ。

ギルド運営はまだ機動に乗ったばかりだし、財政の要でもあるから運営をやめるわけにはいかない。


「頼むよ、ゲオルグ。本国の治安は任せた」

「……しょうがねえなぁ」


最悪、前線が動けない間にラキアスが奇襲攻撃を仕掛けてくる危険性もある。

身軽に動ける遊撃隊として。

本国を護る切り札として温存しておくことにした。


「セリナは当然、留守番。ラピスも近衛部隊と一緒にセリナを護ってね」

「はっ!」

「…………」

「セリナ。不満そうな顔をするでない」

「……分かってるわよ」


皇后となったセリナが前線で命を張る理由がない。

魔族病の再発の危険性もゼロではないし、病み上がりの少女を戦争に参加させることもないだろう。

戦場ではどんな不慮の事態が起こるか分からない。

大切な人を護りたい、というのは当然の願いだ。


「総指揮官は僕。連れて行くのは将軍のギレン、宰相補佐のマーニャの二人で」

「承知した」

「承ったわん」


続けて部屋の端っこのほうで会議の流れを見つめる総一郎たちを見る。

隣にはネコミミ少女こと人狼族のソフィアの姿もあった。

家族同然の革命軍の勇士たちの死からは立ち直ったらしい。

彼らを見て奈緒は静かに語る。


「先生とソフィアも渓谷の集落に待機していて。何かあれば力を貸してもらうから」

「最初から前線に立ってもいいぞ」

「奇襲部隊がナザック砦周囲の山岳を渡ってくる可能性もあるから。遊撃部隊として動いてほしい」

「はいっ、分かりました!」


元気に返事をするソフィアの瞳が燃えていた。

復讐に身を焦がそうとか、そういう暗い感情ではないことに内心で安堵する。

何人かの首脳陣の女性たちが慰めに行ったと聞いている。

効果があったようでホッとした。


「後は……っと、エリザはいない?」

「お休みになられていますっ」

「私が寝かせたわよ。リキュームと一緒に夢の中」


メイドのリィムが元気に返事。

続けて立場上は文官の一人となっているセシリーが、物怖じしない言動で語る。

言うまでもなく、彼女たちはお留守番だ。

戦場に連れて行く意味がない。


「んじゃ、良いかな。出発は明朝、今夜中に準備して」

「はっ!!」


号令が下されて。

将軍の地位にあるギレンも神妙に頷いた。

戦場だ、血が騒ぐ。

殺し合いが呼んでいる。

不思議な高揚感がギレンの心を奮い立たせた。


(本当に……我は)


嫌悪する。

血に塗れて生を実感する怪物。

異端者と呼ばれ続けた男は、己の高揚感を汚らわしく思った。


―――――人殺しは、嫌い。


彼女の言葉が胸に刺さる。

彼女の言葉が胸を締め付ける。

彼女の言葉が胸を激しく揺さぶっている。


(我は、異端者なのだな……)


その夜は珍しく、ギレンのほうから一緒に寝るように誘った。

繋がりを渇望した。

異端者であることを気に掛けなかった男の心境が大きく変わろうとしていた。

大切なものは戦場で満足のいく殺し合いをすることか。

腕に抱く少女なのだろうか。


「ギィ」

「……む?」

「死なないでね」

「…………ああ」


小さな身体を抱く腕に力を込めた。

心が安らいだ。

理屈は分からなかったが、本当に心地よい時間だった。

今夜は珍しく良い夢が見れそうだった。




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