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第37話【アズモース渓谷での余暇(後編)】




「ご苦労さん」

「いえいえ、お疲れ様です」


傭兵団長ゲオルグは、兵糧や水を届けにきた後方支援役のジェイルを労っていた。

ナザック砦からアズモース渓谷を渡り、食料その他を輸送してきているのだ。

遠征軍で最も弱いところは、この補給の形と言っていい。

ジェイルは手勢の百名ほどを率いて、千人近い兵たちの食料や水を輸送してきた。


「……なんか、結構多くねえか?」

「ナオ様の命で。降伏してくる兵の数も多いから、できるだけ兵糧は集めてきてほしい、と」

「あー、そうだな。アズモース渓谷でやりあったときも、百人くらい増えたし」

「衣食住は基本ですからな。ナザック砦の戦いで、相手の兵たちの本音というものを感じ取ったらしいです」


三馬鹿ゴブリンのリーダー、ロダンに話を聞いている。

クラナカルタの兵隊たちは生きるために、家族のために、何とか食い繋いでいくしかない。

兵隊としての給金と、戦で手柄を立てて幹部に取り立ててもらえるように頑張っているらしい。

だが、問題がある。

今の政権はオーク族ばかりに権力が集中しているのだ。

ゴブリン兵はオーク族よりも、戦力としては低い。生きるために幹部に昇進したいゴブリン族だが、その道が険しいのだ。


「本音、ねえ。聞けば聞くほど、クラナカルタってなぁ、歪んだ国だよなぁ」

「オーク族の国、とも呼ばれておりますからな」

「尖兵や捨て駒にされるゴブリンどもにゃあ、同情するけどよ……国の病気ってなぁ、根が深いもんだぜ」

「だからこそ、の救済策でしょう」


ゴブリン兵が戦う理由は生きるためだ。

国に対する忠義だとか、名誉のためにだとか、そういう事情で戦ってはいない。

奈緒はそこに隙があるかも知れない、とジェイルに語っていた。

ゲオルグは遠く、砂漠の向こう側にあるに違いない城塞都市メンフィルへと視線を向けながら、牛鼻を鳴らした。


「救済策、なぁ。そう甘くはねえぞ、大将……」

「…………」


その言葉には討伐軍が抱える問題が詰まっていた。

総司令官の奈緒は甘すぎる。これが、何十年も戦争で生き抜いてきたゲオルグの下した評価だ。

時には非情にならなければならないときがある。

指揮官となったからには、持ちうる手札の全てを使って敵を叩き潰すのが傭兵の流儀であり、礼節でもある。


「クラナカルタの民衆の数は一万にも届く。それだけの人数を養える力は、ねえ」

「……次の戦いはラファールの里ですか」

「ああ。文字通り、クラナカルタの民衆一万人が相手だ。もちろん、ほとんどがろくに戦えねえような奴らになる」


そのとき、ゲオルグの雇い主はどのような選択肢を選ぶだろうか。

理想と現実のギャップに潰された指揮官など、何度も見てきた。奈緒も、潰される要素はある。

救済策か、皆殺しか。ふたつにひとつ。

あの優しい総司令は、皆殺しなんて選べない。だが、現実問題として救済案を選択している余裕は無い。


「かーっ……嫌な選択肢だなぁ」


ゲオルグは唾を吐いて、提示されたふたつの選択肢に吐き捨てた。

水分を吸って砂が湿るが、即座に乾いていく。

枯れ果てた国、クラナカルタは住まう者全てに飢えと渇きを与える、砂漠と魔物の世界だ。

雑談を終え、輸送準備を開始するジェイルを尻目に、ゲオルグもまた斧を構えると、魔物退治の仕事へと向かう。




     ◇     ◇     ◇     ◇




アズモース渓谷、某所。

荒れ果てた大地を一望できるような見張り台がある。

高さは三十メートルにも達する木造建築からの光景は、遠くにある城塞都市メンフィルすらも視界に収めることができた。

あまり広くないスペースに、二人の人間が話しこんでいた。


「……なるほど」

「お分かりいただけましたか?」


ちょうど、込み入った話が終わったところなのだろう。

受け手となっていた男のほうが納得したように相槌を打ち、話し手の女が確認を取るように尋ねていた。

二人の表情は能面のような無表情だが、その内面はきっと違うだろう。


「アンドロマリウスの変の首謀者、エルトリア家のご息女ですか。驚きましたよ」


処刑されたことになっていた、リーグナー地方一の大罪人の一族。

金髪ツインテールの少女を思い出して男が笑う。

生きていたか、と。その事実に可笑しそうに口を歪めながら、男は続ける。


「エリス・セリナ殿、でしたか。捻りのない偽名ですね。エルトリアの名さえ隠せば、どうにかなると判断したのか」


彼らは情報交換をしていたのだ。

己が手に入れた情報。己が持っている策謀。己が最終的な願望を曝け出した。

お互いを味方に引き入れるために。

何処までも黒い笑みを浮かべる男と、何処までも無表情な女が静かに波長を合わせていく。


「それで、あなたはどのように考えているんですか?」


女は答える。

クラナカルタの制圧の達成だ、と。

もちろん、奈緒の指揮ではなく、自分たちの主導で行うことに意義があるのだ、と。


「セリナ殿はどのような処置を?」


女は興味もなさげに首をかしげた。

少し考えて、全てが終わればセリナの身柄は本国に送還されることになるに違いない、と答える。

遠い地で改めて処刑されるだろう、と女は自己完結した。

別に生きてさえいれば何をしてもいい、という意味でもある。男に告げられる任務は単純明快なものだった。


「主だった主要メンバーの処断。セリナ殿は生かして捕らえる。まあ、こんなところですか」

「…………」


女は多くを語るつもりが無い。

彼女はただ、自分の目的を遂行するために任務を果たしていくだけだ。

凍りついたような彼女の心は、ひとつの願いに向けて進んでいく。それ以上でもそれ以下でもない。


「作戦開始のタイミングは?」


ぼそぼそ、と女は男にしか聞こえない声で話す。

全てが終わってから、と。

彼らが必死に戦ってきた功績の全てを、横から綺麗に掠め取ってしまおう、と静かに女は呟いた。


「……分かりました。これから、よろしくお願いしますね」


男の声が、女の名前を呼ぶ。

彼女の髪を撫でる風が一際強くなり、その名前は風に抱かれて消えていった。

女はやがて、最初からそこにいなかったかのように、その場から立ち去った。

残された男の表情は、凶悪なほどに歪められていた。




     ◇     ◇     ◇     ◇




「どういうつもりだ」


威厳のある声が謁見の間に響き渡った。

一般人ならばそれだけで腰を抜かしてしまいそうになるほど、その声には不機嫌の色が見えていた。

クラナカルタの首都、城塞都市メンフィル。

オーク族の総帥でもある魔王ギレンは、逃げ帰ってきた第三席のオーク族を、鋭い瞳で糾弾していた。


「四百もの兵を失い、アズモース渓谷を突破された。ろくに戦うこともしなかったらしいな」

「恐れながら、それも策の内ですな」


玉座に座るギレンの眼前で膝を突くのは、軍師オルム・ガーフィールド。

腰に二振りの剣を挿したオーク族の男だ。

跪いているにも関わらず、平伏しているとは程遠い態度を見せるオルムは、ニヤリ、と笑っている。


「あの戦いでは、崖の上を占領された時点で勝負が決まっておりました。無駄に兵を失う前に退却したしだいで」

「アズモース渓谷が、最も戦いやすい戦場だと言っておきながらその様か」

「確かに。いささか見誤っておりましたな」


大口を切って軍を率いたオルムだったが、結果は全兵力の三分の一を失っての敗北だ。

それほどの大敗を喫してもなお、オルムの唇は歪んでいた。

アズモース渓谷を突破されれば、次はラファールの里と広い砂漠の一帯。その先にあるのが、城塞都市メンフィルだ。

ナザック砦を陥落され、さらにその次も突破されている状況でもオルムに焦りはない。


「ですが。もともと私たちには圧倒的な兵力と、地の利がございます。囲むようにして叩けば、十分に」

「人海戦術か。我は好かんな」

「これは異なことを。クラナカルタの利は数でしょう。あの、無駄に数だけ多いゴブリン族も含めて、ですが」


オルムは露骨に軽蔑に近い感情を発していた。

クィラスの戦いでボグが敗死した件では、ゴブリン族の敵前逃亡が原因に挙げられている。

ナザック兄弟に思い入れなどないオルムだが、自分の作戦を潰されたことには腹が立っているのだ。

使えない兵など、必要ない。劣悪種などは這い蹲っていればいい。


「ゴブリンの姫、と持て囃されているテセラ殿に、頑張ってもらわなければ」

「ラファールの集落に戦うことのできる者がいるとは思えん」

「はっはっは。魔王ギレン。これは国策のようなものです、よろしいですか?」


オルムは顎に生えた髭を撫でながら、談話をするような口調で語る。

魔王は無表情を貫き続けている。


「クラナカルタは食料自給率が低い。砂漠の国ですからな、仕方のないことでしょうが」

「……」

「当然、食料は足らなくなります。食い扶持を減らさなければ、国は傾いてしまうでしょう。……後は、お分かりですな?」


恐ろしい言葉だった。

食料が手に入らない現状で、それを確保するための策など考えていない。

食い扶持を間引いてしまえばいい、と言っているのだ。

多くのゴブリン族の女子供が、為す術も無く殺されるに違いない。

もしかしたら一矢報いて、討伐軍に打撃を与えるかも知れないし、討伐軍を壊滅に追い込むこともあるかも知れない。


「無駄飯ぐらいは、減らしてしまわなければなりませんからな」


オルムはニタァ、と嫌らしい笑みを浮かべて哄笑した。

人を駒としか見ていない者の瞳だった。

彼の考えにはゴブリンに対する偏見と、自分に対する絶対の自信があるのだろう。

どんな形であれ、オルム・ガーフィールドの生き様は揺るがない。


「まあ、テセラ殿であれば、私などが手を出す必要もないかも知れませんなぁ」

「……うまくいけばいいがな」


ギレンは言葉少なめにそう言った。

彼もまた、非道な作戦を伝えられても眉ひとつ動かすことは無かった。

無表情のまま、淡々とオルムの作戦に無言の許可を出した。

クラナカルタでは強者こそが全てであり、弱者はすべからず敗者となって従わなければならない、という法律がある。

ゴブリン族がこの戦いで滅びるとするならば、それは弱いからに過ぎないのだ。


「ベイグ殿の様子はいかがですかな?」

「…………そうだな」


分かりきった問いかけだったが、魔王ギレンは僅かに逡巡するだけだった。

ナザック砦攻防戦のときに、人間と思われし赤い瞳の少年、リュート・サグラによって敗北した第二席の将軍。

オルムよりも地位が上であるオーク族の指揮官を思い出し、ギレンは言う。


「一命は取り留めた、それだけだ」

「戦線復帰は絶望的、ですな?」

「新たな将軍を決めなければな。命は助かったが、もはや戦うことは生涯できまい」


全身打撲、複雑骨折、意識朦朧。

ナザック砦の戦いから一週間ほどが経過したが、医療の発達していないクラナカルタでは治療などほとんどできない。

適切な処置を施せたかどうかも分からないが、どの道ベイグ・ナザックが再び武器を取ることはできないだろう。

結果的にクラナカルタは二人の将軍を失ったことになる。


「とにかく。我が指揮を取るしかあるまい」

「私めもおりますが?」

「いや、オルムには軍師の務めを果たしてもらおう。無闇にメンフィルを戦場にすることもあるまい」

「……いかがするおつもりで?」


問いかけに、ギレンは機械じみた無機質な声色で応える。


「ラファールの里が落とされたならば、メンフィル手前に布陣して、我自らが指揮を取って討伐軍を叩く」

「私はいかがしますか?」

「同じく出撃だ。動員する兵は二千人。総力戦で一気に叩き潰す、存分に手柄を争え」

「はっ……」


ともあれ、ラファールの里はクラナカルタの首脳陣から見捨てられた形になる。

オルムは頭を下げながら、そっと含み笑いを浮かべた。


(くくっ……これで、あの女も終わりだ。ゴブリンの姫、などと持て囃されて良い気になっていただろうが、な)


軽蔑とも差別とも取れる心境がオルムの心の中に巡る。

一礼して魔王ギレンの座る玉座から背を向けながら、オルムは歪んだ口元を直すことなく歩いていく。


(これで二席、四席、五席が散った。私が魔王となる日も遠くない……くっ、くっくっく……!)


内に秘めた野望を胸に。

クラナカルタ第三席。軍師の地位に着いた男が笑う。

オルム・ガーフィールドの号令で二千人もの兵隊たちが、城塞都市メンフィルに集結を開始する。




     ◇     ◇     ◇     ◇




(……筋肉痛)

(あっはっは……悪りぃ、悪りぃ……)


総司令のために用意された宿舎で、奈緒はぐったりと倒れていた。

今日の昼頃にラピスと共に魔物討伐の任に赴いた親友の龍斗は、何故か激戦を繰り広げてきた。

ナーガ、と呼ばれる砂漠地帯の親玉みたいな魔物と戦ってきたらしい。

クラスは首長龍キブロコス飛龍ワイバーンと同じCクラスだけに、たった二人で撃破するのは骨が折れたそうだ。


(兵の士気はあがったじゃねえか! 結果オーライオーライ)

(僕の身体は怪物と渡り合うようには作られていないんだけどなぁ……)

(頭でっかちめ!)

(この脳筋。後で被害を受けるのは僕なんだけど)


珍しく喧々囂々とする勇者候補と魔王候補だった。

ちなみにナーガは珍味の食材として出回るらしく、食糧を輸送したジェイルに亡骸を運んでもらった。

ナザック砦に持ち帰り、商人に若干安めでナーガの肉を売却する。

それらで得た金で、手軽な食料や水を買って、再びアズモース渓谷の前線へと届ける、という形が取られている。


「ふむ……このシステムは後々、使えるかも知れない。覚えておこうかな」


砂漠の魔物は活発で、頻繁に出現しているらしい報告を受けている。

長い間、ここに留まる理由は無いだろう。

そのうち、魔物によって兵が殺され、休めないままに疲労していく危険性がある。

動かなければならない。

答えを急がなければならない。奈緒は、先延ばしにしてきた問題を解決しなければならない。


「ラファールの、里」


ゴブリン族の里。

一万人という魔族にしては莫大な数のゴブリン族が住んでいる。

オリヴァース国の民衆の合計が五千人ほどなので、ゴブリン族だけでこの数は凄まじい、と思った。

彼ら相手に、どのような対応をしていくべきか、奈緒は思考する。


(もう、とっくに答えは出てる。どんなに考えても選択肢はこれしかない)


奈緒がベッドの上に突っ伏しながら、横目に机の上に詰まれた書類に目をやった。

それは嘆願書だ。ゴブリン族たちから送られてきた目安箱の手紙。

ラファールの里には自分たちの家族がいる。ラファールの里は俺たちの故郷だ、と訴えているのだ。

どうか、寛大な処置を。頼むから、寛大な心で、とそんな文字で埋まっている。


(ロダンたちゴブリン族の投降兵の嘆願書。無視するのは簡単だけど、それは危険すぎる)


元々、奈緒だって皆殺しという手段など取りたくない。

それを踏まえたうえでも、ロダンたちゴブリン投降兵の書類を無視してまで、ラファールの里に襲撃をかける意味が無い。

これは爆弾のようなものだ。

例えば奈緒がラファールの里の住人を皆殺しにする、と決断すれば、二百人近いゴブリン投降兵の暴動が起きる。

現時点でも、クラナカルタ軍との戦いが厳しいというのに、暴動まで起こされては空中分解する。


(ゴブリン兵たちを味方につかせるためにも、ラファールの里への強攻策はありえない)


逆に考えれば、唯一の問題点であった圧倒的な兵力の問題も解決できる。

危機ピンチ好機チャンスへと変えろ。

さすれば、いよいよ奈緒の思い描く絵に描いた餅は、正真正銘の餅として現世に顕現されることになる。

暴力は最後の手段にすら、なりえない。

詳しいことは知らない奈緒でも、この兵法は知っている。

言葉による平定こそが最上であり、力による制圧は下策である、と。


「頃合、かな」


ベッドから起き上がり、天幕の外へと行く。

偶然、奈緒の下へと立ち寄ろうとしたらしいユーリィと目が合った。

近くではカスパールが傭兵たちの訓練を施している。そんな光景を視界に収め、奈緒は宣告する。


「ユーリィ、出撃するよ。全軍に意思を伝えて」

「は? は、はい」


唐突な言葉にユーリィは困惑したようだが、すぐに頭を切り替えたようだ。

水色の髪をかきあげながら、首脳陣用に渡されたシェラを使って各首脳陣へと呼びかけていく。

カスパールがいち早く、その様子に気づいて奈緒の下へと駆け寄ってきた。


「進軍ですか?」

「うん、カスパール。ラファールの里に使者を送るよ。飛行部隊に連絡を取って」

「分かりました。その、隊長がまだ帰ってきていないのですが……」

「ゲオルグは何処に?」

「見張り台のほうに行くそうです。ついでに魔物も狩ってくる、と」

「……呼び戻しておいてね」


龍斗と同じ事をするなぁ、とほんのり溜息をつく奈緒だった。

ユーリィからマーニャへと連絡が行き、マーニャから口頭でセリナへと話をつながり、気配を察してラピスも現れる。

巡回していたラフェンサたちも集結し、最後にゲオルグも遅ればせながら現れる。

全員が揃ったのを確認して、奈緒は悠然と宣言した。


「ラファールの里へと進軍する。セリナたち飛行部隊は使者になってほしい。話し合いをしたい、と」

「分かったわ」

「無理はしないでね。使者は危険な任務でもあるから。最悪、様子がおかしかったら、すぐに帰ってきて」

「心配要らないわよ」


使者に手を出すことは、恥ずべき行為だとされている。

歩み寄りの姿勢を愚弄したという事実は、国の孤立化にも繋がるのだ。決してやってはならないことだ。

だが、既にクラナカルタは孤立した国だ。

使者相手にどんなことをするかも分からないが、飛行部隊のほうが里に着くのも早くて都合が良いだろう。

若干の心配はあるが、任せるしかなかった。


「ロダン、サハリン、グリム」


首脳陣とは別の場所に、所在無く佇む三人のゴブリン兵がいた。

弟分らしき二人は恐縮しきっているらしく、リーダー格のロダンが代表して応対した。

彼らは何故、自分たちが首脳陣の中に混じっているか分からないようだ。


「セリナたちに同行して。ラファールの里の橋渡しをしてもらうよ」

「お、おう……? 俺たち、が?」

「うん。よろしくね」


有無を言わさぬ笑顔だった。

ロダンはもちろん、サハリンもグリムも何も言えない表情だった。

ラファールの里の親善大使のような役割を受けたのだ、責任重大と言うしかない。

自分たちの行動のひとつで、ラファールの里の一万人のゴブリン族が根絶やしにされる危険性があるのだ。

しっかりと任務の重要性を確認して、ロダンは頷いた。


「よし……それじゃ、進軍。目指すはラファールの里! そして、最終決戦のメンフィル!」


おおおー、と兵たちが思い思いの武器を構えて咆哮する。

セリナたちは改めて翼を広げると、ロダンたち三馬鹿ゴブリンを引き連れて大空へと舞い上がる。

指揮官のセリナは奈緒の心配そうな表情を見た。

大丈夫、と呟くセリナは、愛しい人から元気をもらって、高く高く飛んでいった。




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