第九十話 ブルローネと誰か達
─どこかの場所のどこかの建物の中にて─
カツン。
黒い煙と共に姿を現わしたブルローネの靴の音が響いた。
彼の肩に止まっていたカラスのチーはばさりと翼を広げブルローネから離れる。
その姿は一人の少女へと姿を変え、ブルローネの隣に立った。
「いったい~何の用なわけぇ~~?せっかく良い所だったのに邪魔してくれてさぁ~」
「へぇ。貴方がそんな事を言うなんて珍しいね?」
その声にブルローネの眉間に皺が寄る。
声の主は白い柱に寄りかかり、ブルローネ達ににやにやとした顔を向けている。
黒猫の獣人だ。
スーツを纏い、長い尻尾をゆらゆら揺らしている。
「チャロアイト・・・」
「研究や実験にばかり御熱心だったのに、随分とご立腹のようで・・。いったい何があったのかな?」
「君にはぁ~関係ないよぉ~」
んべっと舌を出してチャロアイトという名の獣人を睨むブルローネ。
それに慣れているようなのか、チャロアイトは気に留めない。
「あのお方はぁ~?どこにいるのさぁ~」
?「ここにいる」
「!!」
ブルローネが振り返ると、“彼”がそこに立っていた。
「(ちっ・・気づかなかったよぉ~・・・こんなに近くにいたのにぃ・・この僕の背後を取るなんてぇ・・こいつ以外いないと思ってた。・・・今日まではぁ・・)」
?「・・・・今まで何をしていたブルローネ?」
「別にぃ~?ただぁ~良い実験材料を~探してただけぇ~」
?「・・・・ふん、まぁ良い」
ブルローネはイクミの事を話そうとは思わなかった。
例え目の前にいる“彼”が、唯一自分を負かした相手だったとしても。
唯一、力で自分を屈服させた相手だとしても。
「(あの子の事は教えてやーらない。教えたら絶対興味もつものぉ~。アレは僕のだ・・誰にもやらないよぉ~)」
“彼”は懐から何かを出した。
赤い液体の入った子瓶だ。
それを“彼”は床に落とし、思い切り踏みにじった。
「あ~」
瓶が砕ける音にブルローネは声を上げる。
「折角貴方のご要望に応えて作ったのに~何が不満なのさぁ~?」
?「不満だと・・・?」
“彼”がブルローネを冷たく睨む。
それにブルローネは肩を小さく揺らした。
彼の傍にいたチーも震えている。
?「・・・・・これを使った実験は失敗だ。それも大失敗だ」
「・・・・・・・・・嘘ぉ」
「嘘じゃないよ」
尻尾の毛づくろいをしていたチャロアイトがブルローネに囁く。
「貴方の薬を使った魔物は、あっさりとやられちゃったよ。前回のサヴェッジドラゴンと同様に。僕、ずっと見てたから」
「・・・・人魚族に?それとも竜人族に?」
「・・・・・・・・・・・・まあ、ね」
ブルローネはぎりっと唇を噛んだ。
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「ヒューゴ、聞こえる?ヒューゴ?」
私はイヤリングを使ってヒューゴ達と連絡を取る事にした。
海の中の竜人族の国へ行くなんて知ったら驚くだろうなぁ・・。
どんな手を使ってでも自分達もそこに行く!って言いだしそうだし。
いや、絶対言うな・・。
あ、声が聞こえてきた。
『師匠・・師匠ですか?!』
「うん、私だよイクミ。ヒューゴ達、今どうしてるの?私とクリアは今・・」
『師匠!!驚かないで聞いてください!!そして何とかしてください!』
「え、何かあったのヒューゴ?!あと、何か周りが凄い煩いんだけど・・」
イヤリングから聞こえるのはヒューゴの声だけじゃなかった。
何か・・太鼓みたいな音やらラッパの音やらカーニバルみたいな音楽が聞こえる。
『俺達は今・・ドラシエル・マリーンで魔物を倒した救世主として崇められて神輿に担がれてパレードの中心にいます!お祭り騒ぎです!ありがたやと言われています!どうしたらいいんでしょうか!?』
「・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
どうしたらいいんでしょうかって言われても、まず全く意味が分からないですけど!?
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