第八十六話 井の中の蛙 イクミ&クリアネスナイトside
何だこの赤いのは?
ランスロットは貫かれた己の腹部を見て呆然とする。
ごふっと口から血が溢れる。
気配も
何も感じなかった。
竜人族の体は他種族と比べても頑丈な筈なのに、一瞬で腹を貫かれた。
これが、魔族の中でも最高種と呼ばれた吸血鬼族なのか?
「い・・・・・・」
コーラルは青ざめた顔で震える。
愛しい者が流れる血で赤く染まっていく姿に絶望する。
「いやあああああああ!!!」
洞窟の中でコーラルの悲鳴が響き渡る。
「っ」
ほんの一瞬だった。
誰の目にも止まらなかった。
ランスロットの腹部を貫く羽根が、イクミの刀で再び切り裂かれ、ブルローネがランスロットから離れた瞬間にクリアネスナイトがブルローネを殴りばした。
「がは!」
殴り飛ばされたブルローネは岩壁に体を打ちつける。
コーラルとクララが泣きながらランスロットを抱き起こす。
「ランスロット!!しっかりして!!」
「ランスロット様!!」
「う・・・ぐ・・・」
「この薬を使ってください!」
油断した。
まさかクリアネスナイトも気づかない速度で、ランスロットさんを・・。
こんな奴がいたなんて・・。
でも今はとにかくランスロットさんの傷をどうにかしないと!
私は以前ヒューゴから貰った回復ポーションを出してコーラルさんに渡した。
「はっはい!」
バシャ!
パアアアアアアアア!!!
「こ、これは・・!?」
コーラルさんはポーションを急いでランスロットさんの傷口にかけると、深い傷口は瞬く間に塞がっていた。
それに驚くコーラルさんとクララさん。
このポーション、ヒューゴは簡単にちゃちゃっと作ってたけど鑑定してみたら極上ポーションと出た。
補佐丸によると、この世界での極上ポーションは誰もが喉から手が出るほど欲しがる貴重な回復薬らしい。
それをあっさり作っちゃうヒューゴ恐るべし・・。
「んん~・・・いたぁ~い・・・・きもちいいいいいい!」
うっ復活した!!
凄い嬉しそうな顔で痛めた体をさすりながら喜んでる・・。
私は刀を向けて、クリアも戦闘スタイルに入る。
「申シ訳アリマセン、マスター。彼ラヲ守レトノ御命令デシタノニ・・」
「気にしないでクリア。私も油断してた。あいつの事、見くびってた・・」
「あ~あ、また僕の羽根が切られちゃったぁ~・・。でも~そこの王子様に仕返しできたからいいかぁ~。それにしてもその王子様ぁ~馬鹿だよねぇ~。僕に勝てる訳ないのにぃ~・・自分の力量も分からないなんてぇ~・・愚かだねぇ」
くすくす笑うブルローネ。
「竜人族だからってぇ~・・・吸血鬼族の中でも天才っていわれた僕にぃ~・・しかも今までの戦いを見てぇ~、レベルの違いが分からなかった君にぃ~・・勝てる訳ないじゃ~ん!・・・・うぬぼれるなよバーカ」
あははははは!と高らかに笑ってランスロットをバカにするブルローネ。
傷が回復した事で、遠くなりかけた意識が戻ってきたランスロットは、悔しそうに唇を噛み締めた。
ブルローネの言葉に、何も言い返す事ができなかった。
「・・・確かにランスロットさんのした事は浅はかだったと思う・・。でも、ランスロットさんは逃げずに闘う事を選んだともいえる。もし私が何の力も持たずにこの場に居たら、がむしゃらに逃げ出してたと思う。それに比べたらランスロットさんは立派だよ」
このチートなスキルがなければ、とっくに私は死んでいるだろう。
ランスロットさんはちょっとプライド高い所もあるけど、自分の悪い所を認めて反省できる強さを持っている。
全然愚かなんかじゃない!
「ブルローネさん、貴方と私、一対一でやろう。クリア、ランスロットさん達と一緒に少し離れてて。勿論彼らをしっかり守って」
「ハイ、マスター。今度コソ必ズ・・」
「一対一かぁ~・・・いいねぇ~・・・ぞくぞくしちゃうよぉ~・・・」
「イクミ、さん・・・・・」
ランスロットはこの時、無意識にイクミを人間というそれだけの理由で、無意識に見下していた事に気づいた。
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