第八十話 ドラシエル・マリーン2 ヒューゴ&ルル&パテルside
人魚族が空を飛べるとは思いもよらなかった。
きっと師匠が見たら驚くだろう。
早く見せてあげたい。
ヒューゴはそう思った。
だがその前に、カレント王から詳しく話を聞かなくてはいけない。
「それで、話を聞かせてもらおうか?」
「うむ。ヒューゴ殿の噂は、この海の国ドラシエル・マリーンでも詳しく聞いている。つい最近ドラシエル・アースのジーク王からも噂はかねがね・・」
「ジーク王からも・・」
「色々と興味深い話を聞かせてもらった。どうかお願いだ。この海を救っていただきたい!」
この付近に、正体不明の魔物が現れるようになった。
魔物は海中の魚や貝類を無差別に食い荒らし、海を泳ぐ人魚族に襲いかかり被害が増える一方だという。
お陰でこの辺りの海では魚はいなくなり、人魚族達は国から出れなくなってしまったのだ。
魔物の正体も掴めず、現在も捜査中なのだが殆ど手掛かりがない状況だ。
「魚がいなくなったのはそれの所為か・・・」
魔物が絡んでいたとは・・。
ヒューゴは眉をしかめた。
「魔物に襲われた人魚族に話を聞いたのだが、恐ろしく巨大であってその姿は黒い霧に覆われていて、正体不明なのだ」
「正体不明か・・」
「その魔物がこの国の近くで見かけたという情報が入ったので、辺り一帯を兵士達に見張らせているんだが・・」
「なるほど・・それでいつ襲われるか分からないから、ピリピリしていたという訳か」
「すまない・・。水晶鏡で、海上付近を捜査している途中で貴方方の船を見つけ、ヒューゴ殿が乗っているのを目撃し、ジーク王の話を思い出したのだ。獰猛なサヴェッジドラゴンを倒した話を・・。それでヒューゴ殿と貴方方ならきっと、魔物の正体を掴み海を救ってくれると思い、ここまで来ていただいたのだ」
「来ていただいただと?」
パテルは冷たくカレント王を見下ろす。
「こちらの事などお構いなしに、勝手にシャボンで船を包み海へと引きずり込んでおいて・・勝手にも程がある。海の竜人族の王は随分と偉いものだな」
ざわざわと空気が変わる。
兵士達は咄嗟に王を守るように身構える。
それにパテルは鼻で笑った。
「良いぞ攻撃しても・・。この国を・・抹消しても良いのならな?」
カレント王達は、パテルから感じる冷たいオーラに血の気が引いた。
けれど。
「おいパテル・・。師匠が聞いたらお前・・タタじゃすまないぞ?」
「からあげ、きんしされるよー」
「おや、それはまずい」
ぱっと空気が変わった。
重たい空気が一気に軽くなって、王達は思わず座り込む。
「から揚げ禁止は辛い。今の発言は内緒に・・」
「けんかはめーっだよ」
「師匠がいなかったのが幸いだな・・。だがまあ、パテルの言う事にも一理はある。ほぼ無理矢理、海の中に連れてきたのは俺も気に入らない。だが、それだけお前達は切羽詰まってるという事だろう」
師匠と出会う前の俺なら、パテルと同様切れていたかもしれないな・・。
ヒューゴは心の中でそう思った。
「それに俺達も、海に起こっている異変を捜査する為に海へ出た。その原因が正体不明の魔物というのなら、関係ない話ではない」
「で、では力を貸してくれるのか!?」
「どのみち、魔物をどうにかしないとこの付近に魚が戻ってこないのなら、致し方ないだろう」
ルルとパテルに目を合わせると、ルルはやる気満々。
パテルは仕方ないと言わんばかりに肩をすくめた。
「ああ・・良かった・・。これできっと我が息子の行方も分かるだろう・・!」
「息子?」
「はい・・。我が息子はランスロットというのだが、魔物が出た付近へ自ら調査に出かけたきり行方不明に・・。ドラシエル・ボルケーノの王女と婚約が決まったばかりだというのに・・・」
同時期に王子の世話役のクラゲ族と、メイドの人魚族も一人行方不明となったので、現在捜索中だという。
「無事だといいのだが・・・・・」
その頃、洞窟ではイクミがランスロット王子達と出会って話をしていた。
「正体不明の魔物・・。これは一度師匠に連絡したほうがいいかもしれないな・・」
ヒューゴは左耳のイヤリングでイクミに今の状況を伝えようとした。
ズゥゥゥゥン!
突如国中で地響きのような揺れが起きた。
街から悲鳴が上がる。
「何だ!?」
王が城の外を見ると、巨大な黒い靄が国を覆うシャボンに体当たりをしていた。
ズゥゥゥゥン!!ズゥゥゥゥン!!!!
「きゃああああ!!」
「逃げろおおおおお!!!」
「魔物よ!魔物が国を襲いに来たわあああ!!」
体当たりの度に国中が揺れる。
住民達逃げ惑う。
「あれが、正体不明の魔物・・」
「おっきー!」
「なるほど・・確かに黒い靄に覆われてるな」
「兵士達は全員シャボンの外へ!魔物をここから遠ざけさせろ!!万一シャボンが割れれば・・この国は終わりだ!急げ!!」
王の命令に城の兵士達が次々と外へ向かっていく。
黒い靄で覆われ、全く姿形が分からない魔物。
ヒューゴも全く心当たりがない魔物だ。
「いったい、何なんだあの魔物は・・・?」
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