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七十八話 海の竜人族の王子様と割烹着を着た人魚 イクミとクリアネスナイトside

七十八話 海の竜人族の王子様と割烹着を着た人魚 イクミとクリアネスナイトside


「申し訳ありませんランスロット様コーラル様!このクララ、一生の不覚です!!!」


あの巨大なクラゲが二人に多分土下座して謝りまくってた。


「いやクララ、お前の所為じゃない。こんなの俺も想定外だ」

「そうですクララさん、頭を上げて」

「うっうっ・・しかし見張り役としてこんな不甲斐ない事はありません・・!」

「・・・・あのー」


びくっと怯える二人と一匹(クラゲは匹で数えるのかな?)。

まあ、怯えるのは無理ないかもしれないけど、そんなにあからさまにしなくても・・。


「貴方達、どうしてこんな所にいるんですか?」

「・・答える義務はない」

「そうはいかないです。乱暴を働いたのは申し訳ないけど、斧で襲われたり木の棒で殴りかかってきたのは貴方達なんですよ?」


ぷいっと顔を背ける男の人と、男の人の背後に隠れる割烹着の人魚。

更にその二人をかばうようにする巨大クラゲ。


「いわば私達がしたのは正当防衛。私達に非はないと思いますけど?」

「・・・・・・・・・・・・・」


バツが悪そうな顔をする男の人。

ここで私は男の人の正体をぶつけてみた。


「貴方、竜人族ですよね?」

「「「!!!」」」


男の人は身構え、割烹着の人魚は震えて、巨大クラゲは固まる。


「どうして分かったのかって顔してますね。私、以前竜人族の人達に会ってるんです。しかもその国にしばらく滞在もしてたんですよ。ね、クリア」

「マスターノ言ウトオリデス」

「なっ!?ばかな!そんな事あるわけない・・!」

「そうよ・・!ただの人族が竜人族の暮らす国に行ける訳ないわ!」


やっぱり信じないか。

私は懐からあるものを取り出す。


「はい、これが証拠。よく見て」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そ、それは!?」


そう。

ドラシエル・アースから旅立つ時にジークさんから貰った例のプレート。

ここで役に立つとは思わなかった。


「ドラシエル・アースの紋章に、国王の名前まで・・。まさか本当に・・」

「信じられない・・・」

「はっ!わ、私そういえばこんな噂を聞いた事があります・・!ドラシエル・アースの王が外から客人を招き入れたと・・・」

「あ、それ私達の事だと思います」

「「「!!!」」」


噂になってたのか。

この世界はネットがないにも関わらず情報が伝わるのが早いみたい。


「私の名前はイクミ。こっちはゴーレムのクリアネスナイト。私達、この洞窟で奇妙な事が起きてるって聞いて調査に来たんです」


私は警戒を解くために、ここへ来た理由を話した。


「ギルドからの直接の依頼だから、私は立場上ギルドマスターに貴方達の事を話さなくちゃいけません」


ぎくりと震える二人と一匹。


「でも、竜人族と人魚がこんな所にいるなんてよっぽどの理由があるんだと思います。見張りまでつけて・・。良かったら理由を話してくれませんか?場合によってはギルドマスターへの報告は考えますので」


まあ、ぶっちゃけ私が好奇心で知りたいだけなんだけどね!

だって竜人族と割烹着を着た人魚が一緒なんて、どういう訳なのか気になって仕方ない!


「それは・・・・・」

「ランスロット・・・」

「ランスロット様・・」


竜人族の男の人はちらりとクリアネスナイトを見る。

ああ、そっか。


「クリア。体、小さくしてくれるかな?」

「シカシ、マスター」

「大丈夫だから」

「・・・分カリマシタ、マスター」


クリアは瞬く間に小さくなった。

それに驚く二人と一匹、

私は小さくなったクリアを肩に乗せる。


「これで少しは話しやすくなったですか?」

「あ・・・・・。・・・・・・・・すまない」


私よりも大きなゴーレムのクリアに警戒していた竜人族の男の人。

私の意図に気づいてくれたようで、ちょっと心を開いてくれたみたい。


「コーラル・・。この人族は少なくとも敵ではなさそうだ」

「ランスロット・・・」


男の人はようやく話してくれた。

やっぱり私も思った通り、彼は海の底にあるという竜人族の国、ドラシエル・マリーンの竜人族だった。

しかも。


「王子様!!?」

「はい。俺はドラシエル・マリーンの第一王子、ランスロットと言います。こっちは幼い頃からの世話役、クラゲ族のクララ」

「どうもお初にお目にかかります」

「どうも。クリアが貴方に痛い思いをさせちゃって・・」

「いえいえ。私もつい頭に血がのぼって斧で襲いかかってしまって・・。でも傷つけるつもりはなかったんですよっ。ただ脅しただけなんですっ!」

「信じますよ」


どうりで斧の刺さった位置が可笑しかった訳だ。

私達を狙った割には、明らかに斧の刺さった場所がずれてたもんね。


「そしてこちらが人魚族の」

「コーラル、です」


何となく予想してたけど、やっぱりこの二人、恋人同士だった。

しかも。


「駆け落ち!!?」

「はい・・・・」


話はこうだった。

ドラシエル・マリーンは竜人族と人魚族が仲良く共存している国だった。

コーラルさんはお城で働くメイド人魚さんだったけど、ランスロットさんと恋に落ちて誰にも内緒で付き合ってた。

でも、半年ほど前に。


「ドラシエル・ボルケーノの王女様がランスロットさんを気に入ったと・・」



交流を深める為に、火山地帯の竜人族の国の王族がドラシエル・マリーンに来た時、王女様がランスロットさんに一目惚れ。

両国の王様達はこれに喜んで、あっという間に王女様との婚約が決まったというのだ。


「どうして恋人がもういるって言わなかったんですか?」

「あんなに浮かれている父上と母上を見たら・・とても言いだせなかった・・」

「それに、私はただのメイド・・。身分が違います・・」

「だけど、結婚式の話が出てきて、つい二人で逃げ出したと・・・・」


その時クララさんに見つかったけど、自分は王子の味方だと言って駆け落ちに同行したんだって。


「誰にも見つからないよう、この洞窟に身を潜める事にしたのですが、ここは人族がよく出入りしている場所だと分かって・・」

「それでクララさんが【催眠魔法】と【霧魔法】のスキルを持っていたから、魔法でこの洞窟に近づけないようにしたんですね・・」


そして、用意した家具を並べて新婚さん気分を味わっていたと・・。

うーん・・。

話を聞く限り、この二人の気持ちも分からなくはないけど。

何か、なぁ・・。


「話は分かりました。でもここはこの国の人にとってとても大切な場所なんです。ここに薬草が生えているでしょう?この国で薬草が生えている場所はここだけなんです」

「!そうだったのか!?」

「って知らなかったの!?」


驚くランスロットさん達に、私もびっくりだ!


「そんな大切な場所だったとは・・・そうとは知らずに俺達は・・」

「とんでもない事をしてしまいましたね・・」

「何と・・ああ・・穴があったら入りたい・・」


落ち込むランスロットさん達。

ちょっと勝手な人達だなぁと思ったけど、そうでもないみたい。


「ねぇ、もう一度よく話し合ってみたら?貴方達竜人族と人魚族は恋をしちゃいけない決まりがあるんですか?」

「いえ、我が国にそのような決まりはありません」

「だったら、尚更話してみましょうよ。今ならまだ間に合うかも」

「しかし、これでボルケーノの国との間に亀裂が入ったら・・」

「でもずっとここにいる訳にもいかないし、ずっと逃げる事もできないと思いますよ。本当は皆、心ではこのままじゃいけないと思ってるんじゃないですか?」

「「「っ!!!」」」


あ、図星だったみたい。


「確かに色々問題はあると思います。私が口を出す事じゃないだろうけど、このままじゃ駄目だと思っているのなら、行動を取った方が良いと思います」


・・・なーんて、言ってみたけど、ちょっと無責任な発言だったかな・・。

正直私もどうしたら良いのか分からないし・・・。



「・・・・・コーラル、何があっても俺についてきてくれるか?」

「ランスロット・・。私は何があっても貴方の傍にいます」

「ランスロット様・・コーラル様・・クララはずっとお二人の味方です!」

「イクミさん、貴方の言葉で俺は心が決まりました。ちゃんと両親と話し合ってみます!」


おおっと!

都合よくまとまったぁ!!

い、良いのかな、こんな簡単に展開が上手くいって・・。

小説ならご都合主義にも程がある!って読者は怒りそう。


「しかしランスロット様、今海に戻るのは危険かと・・」

「クララ、それは分かっている。だが一刻も早く、国に戻って両親と話がしたいのだ」


ん?海が危険?

もしかしてこの人達、海に起きている異変について何か知ってるんじゃ?

私がそれを聞こうとした時。



ぞくっ!



凄く嫌な気配を感じた。

クリアもそれを感じたのか、元の大きさに戻って警戒態勢になった。


「誰だ!?」


ランスロットさんも気づいたのか、コーラルさんを守るような体制だ。

こつこつ、と誰かの足音が洞窟内に響く。



?「うふふふふっごぉ~機嫌よぉ~。はじめましてぇ~」


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