第七十二話 そして新たな謎
そう、あの時。
カーテンを開けた窓の向こう。
自分達が助かる為に、金の為に、永遠に生き続ける為に、魔物に生贄にされた子供達の魂がイクミ達に助けを求めに来たのだ。
助けて・・・・助けて・・・・と悲痛な声で何度も何度も。
パテルは魂の行き所である冥界の住人だから、声の正体はすぐに分かった。
イクミに魂の声が聞こえたのは、恐らく並外れた魔力の所為だろう。
子供達の中には、大人もいた。
彼らは村人達に殺され、子供を奪われた旅人だった。
魂達は、この村に強い恨みを抱いている。
その恨みがあるかぎり、この魂達は冥界へ行く事はできないとパテルはイクミ達に説明した。
イクミはこの村の残酷な秘密を聞いて、ショックを隠し切れなかった。
『酷い・・・こんな・・・酷すぎるよ・・』
パテルは更に続けた。
魂達をこのままにしとけば、恨みが更に募り全ての魂が融合して命あるものを食い散らかすバケモノに成りかねないと。
『そんなっどうにかならないの!?』
『ある事にはあります我が主。彼らを救う方法、それは・・彼らの恨みを果たす事です』
「我が主、ここから先は冥界の住人である私がやります。主は外でヒューゴ達と合流してください」
「うん・・・分かった・・・」
パテルはイクミを転移魔法で教会の外へと移動させた。
「さて・・・・・」
パテルは人型から漆黒の一角獣へと戻る。
翼を広げ蹄を鳴らし、高らかに声を上げた。
「さあこの世に彷徨う魂達よ。その恨み、とくと晴らせ。その憎しみを全てぶつけろ。怒りと悲しみを欠片残さず吐き出すが良い!!」
冥界の魔獣、漆黒の一角獣の言葉は魂を揺さぶる力がある。
生贄にされた子供達、殺された旅人達の魂は村人達に襲いかかった。
逃げ惑う村人達を魂達は抑えつけ、口々にこう呟いた。
絶対ニ、許サナイ
「師匠・・・・・」
「ヒューゴ・・・・・・」
教会から少し離れた場所。
古く、コケだらけの墓が並ぶ墓地。
「地下にあったよ・・子供達の骨・・・」
「俺も見つけました・・。殺された旅人達の亡骸を・・」
ヒューゴが土魔法で掘り起こした大きな穴の中。
何体もの骨が埋まっていた。
「ルルは置いてきて正解でしたね」
「うん・・・・」
ルルは宿でクリアネスナイトと共に留守番だ。
最初は行くと駄々をこねていたけど、いつになくイクミがここで待ってて、と真剣な顔をしたので、ルルも何かを察したのか大人しくなった。
イクミは殺され埋められた彼らを、そして子供達を思いながら手を合わせて祈った。
彼らがもし生まれ変わる事ができたら、その時は幸せに生きてほしいと。
翌朝、村人達は全員いなくなった。
全ての真相を知ってるのはパテルだけ。
「安心してください我が主。彼らは死んではいません。運がよければここに帰って来れますよ。最も帰ってきた所でもう黄金も蜜も手に入りませんがね」
パテルの足元には、体中の骨が折れ絶命した蜂の魔物。
それを見たヒューゴは眉を寄せ、何か考え込んでいた。
「どうしたのヒューゴ?」
「・・・・いえ、何でもありません師匠」
「そう・・・?」
イクミ達はシャベルで穴を掘っていた。
そこに子供達の骨を埋め、弔う事にしたのだ。
旅人達の骨も、子供達の傍に埋め直した。
「忍法 華爛漫・・・・・」
イクミの新しい術だ。
辺り一面に色とりどりの花が咲く。
イクミから、子供達と旅人達への贈り物だった。
「(私にはこれくらいしかできないけど・・喜んでもらえるかな・・・。それにしてもあの魔物、何だったんだろう・・・)」
『僭越ながら主殿、あれは魔物の類ではないでござる』
「(補佐丸!魔物じゃないってどういう事?)」
『お答えするでござる。あれは半分は魔物でござるがもう半分は・・・人間でござる』
「(え・・・それって・・・)」
ヒューゴは蜂の魔物の亡骸を見つめ、火の魔法でそれを燃やした。
めらめらと骨すら残らない勢いで、炎は燃え上がる。
「(・・・こんな魔物、今まで見た事がない・・ましてや黄金を作りだしたり、寿命を延ばす蜜を作るだと?そんなの聞いた事もない。・・・・・いや、これは魔物じゃないかもしれない・・そもそも見た目がまるで、魔物と人間が融合したかのような・・・。・・・まさか)」
ヒューゴは小さく息を呑む。
「(半分魔物で半分人間ってどういう事、補佐丸?)」
『元はただの魔物とただの人間が、何らかの方法で一つの生き物になった・・という事でござる。今の拙者に分かる事はあの生き物は、人工的に作られたもの・・・。しかしながらそれ以上は分からないでござる・・申し訳ないでござる』
「(魔物と人間が一つに・・・・それも人工的にって、もしかして・・あの蜂の魔物の正体は・・・・)」
イクミは肩を震わせた。
「((・・・・・・・・キメラ))」」
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「・・・・・・・・・・・・・・」
私はペンを止めた。
これ以上は書かない方が良い気がした。
オデットさん達に変な心配かけそうだし・・・。
まあ、手紙の内容全部がオデットさん達を驚愕させそうだけどね・・。
私は手紙を封筒に入れて、今日焼いたビスケットと一緒にジークさんから貰った転移の魔道具の箱に仕舞った。
これでオデットさん達に届くはずである。
「(・・・・本当にあれは、よくファンタジー小説に出てくるキメラなのかな・・・。・・・何だろう、何か・・凄く嫌な感じがする・・・どうして?)」
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?「はぁ?36号が死んだぁ?どういう事ぉ?あれは僕の最高傑作なんだよぉ?どういう事ぉ?どういう事ぉぉぉ?」
どこかの研究施設ような場所。
ぼろぼろで薄汚れた白衣を纏った誰かが、地団駄を踏んでいた。
報告していたカラスのような生き物の首を絞める。
?「そ、それが、ある奴らに殺され・・・ぐええ・・・」
?「殺されたぁ~?!ねぇぇ~!どういう事ぉ~?!あれはぁ~自ら黄金を作りだしてぇ~摂取した生物のエネルギーから寿命を伸ばしちゃうぅ~蜜を~作っちゃう~とんでもなく素晴らしいぃ作品なんだよぉ~?それにすんごく強いからぁ~殺されるなんてぇ~ぜーーーーったいに!ないんだからぁ~!!!」
?「こ、こちらの写真を見てください・・こいつらが、貴方の作品を殺した奴らです・・・!」
カラスのような生き物が一枚の写真を差し出す。
それを受け取った白衣の誰かは、写真をじっと見つめた。
?「・・・・ふぅぅん・・こいつらがぁ・・・あーあー!せぇっかくぅ、あるぅ村を使ってぇ、36号がどれだけぇ、人間を奴隷化できるかぁ、実験してたのにぃ・・・・!・・・まぁでもぉ・・・」
白衣の誰かはにやりと笑い、写真にべろりと舌を這わせた。
?「僕好みのぉ、子を~見つけちゃったからぁ~・・良しとするかぁ~・・うふふふふっこの子ぉ、メスで切り刻んだらぁ・・どんな顔してくれるかなぁ~?」
唾液で濡れた写真。
そこには村に入ったところのイクミ達の姿が映し出されていた。
もう一度、白衣を着た誰かはイクミの顔に向けて舌を這わせる。
「うふふふふふっ久しぶりにぃ、お外に出てみようかなぁ~?うふふふふふふふふふ」
怪しい笑い声はいつまでもいつまでも続いた。
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