第四十六話 絶望の雨の中に光
どういう事だっ
一体どうなっている!?
ジーク達は困惑に陥っていた。
彼らは過去にサヴェッジドラゴンを狩った事がある。
その時もサヴェッジドラゴンは強かった。
だがドラシエル始まって以来の魔力を持ったジークにより、見事サヴェッジドラゴンを討ち取ったのだ。
兵士達も、観戦していた国の住人達も歓喜に震え一時期国中祭り状態であった。
高級品でもあるサヴェッジドラゴンの肉を国中に振る舞った。
実に素晴らしきひと時だった。
今回サヴェッジドラゴンが現れたと聞いた時、ジークはきっと今回も倒せると思っていた。
だが目の前のサヴェッジドラゴンは何もかも違っていた。
赤い痣でなく、黒い痣を持った巨大なサヴェッジドラゴン。
こちらの攻撃をいくら受けても傷一つつかない。
どんな魔法も効かない。
サヴェッジドラゴンは天空から黒い稲妻をジーク達に放つ。
黒い稲妻は雨のように降り注ぎ、結界魔法もほとんど役に立たなかった。
羽根を羽ばたかせるだけで起こる強風。
風はカマイタチのようにジーク達の肌を切り裂いていく。
纏う鎧さえも砕いた。
「くっ・・・この・・・!アイスアロー!!」
オディールがサヴェッジドラゴンの視界から逃れ、氷の矢を放った。
何千といった切っ先の鋭い氷の矢がサヴェッジドラゴンを襲う。
だがその矢がサヴェッジドラゴンを一切傷つける事なく、砕けて終わった。
「あ・・・」
サヴェッジドラゴンの血走った目が、オディールを捉える。
血肉を求める牙が、オディールの目前に迫った。
「オディール!!」
ドラゴン姿となったジークがサヴェッジドラゴンに体をぶつけて押しのけた。
「逃げろオディール!!」
ジークはサヴェッジドラゴンに様々な魔法攻撃を放った。
オディールは足に力が入らなくなったが、何とかその場から移動した。
兵士達は皆、深手を負って殆ど動けなくなっていた。
その顔は恐怖で青ざめている。
「何なんだ・・あのサヴェッジドラゴン・・以前戦ったやつとはまるで違いすぎる・・」
「王・・・」
サヴェッジドラゴンの鋭い爪や牙により、ドラゴンのジークの体が赤く染まる。
このまま長引けばジーク自身が持たない。
ジークは渾身の力を込めて、ドラゴンブレスを放つ事を決めた。
ドラゴンブレスは竜人族にとって最大最強の技。
これを喰らって、生き延びた者はいない。
「これで終わりだ!サヴェッジドラゴン!!」
ジークの口から太陽のように強い光が放たれる。
サヴェッジドラゴンはその光に包まれた。
「やった・・!!」
「流石は王・・!!」
オディール達も、水晶鏡により見ていた国の住人達もこれでサヴェッジドラゴンは終わりだと思った。
だが、それは違った。
「な・・・・!?」
サヴェッジドラゴンは、無傷だった。
ドラゴンブレスを浴びても尚、ダメージを負っていなかった。
「そ・・・そんな・・・・」
ジークも、オディール達も、国の住人達も絶望に染まった。
その心を表すかのように、雨が降り始める。
冷たい、凍てつくような雨。
サヴェッジドラゴンが大きく、口を開けた。
赤黒い光が見える。
サヴェッジドラゴンも、竜人族とは違う生き物とはいえドラゴンブレスの技を持っていた。
終わりだ。
ジークは、戦意を失いかけた。
せめてオディール達は守ろうとオディール達の前に立つ。
「王!!どうかお逃げ下さいあなただけでも!!」
オディールは叫ぶ。
だがジークは動こうとしなかった。
「余は逃げぬ。余にとって家族も街の者達もお前達も大事な宝だ。宝を守れないで何が王だ。
お前達を見捨て、生き延びて何が王だ。余は決して逃げぬ。
たとえ余がどうなっても、妹のオデットが女王となりお前達を導いてくれるだろう。
だから、余には何の未練もない」
「王・・・・」
オディール達、国の住人達は涙を流した。
何もできない自分達を恥じた。
「お兄様・・・!」
オデットは何かを祈るように手を握る。
そんな彼らを嘲笑うかのように、サヴェッジドラゴンがジークが放ったものよりもより強力なドラゴンブレスを放った。
王は最後に残った力でオディール達を結界魔法で囲み、更に自分が盾となってドラゴンブレスを受け止めようとした。
「王ーーーーーー!!!!」
オディールの悲痛な叫びが響いた。
「ジークさん、貴方は王様の中の王様だね」
ジークの目の前に何かがふわりと姿を見せる。
天使、いや女神か?
ジークはそう思った。
赤黒いドラゴンブレスが襲いかかる。
二本の忍び刀を抜き、その刃をドラゴンブレスに向けた。
「忍法 竜の息吹斬」
忍び刀がドラゴンブレスを文字通り切り裂いた。
切り裂かれたドラゴンブレスは霧のように散った。
ジークもオディール達も、水晶鏡から見ていた国の住人達も何が起こったのか分からなかった。
「イクミ様・・・・」
オデットは神が降り立ったと、その時思った。
「ジークさん達は休んでて、ヒューイットとルルは皆の手当てをお願い。パテルさん、お願い」
「分かりました師匠」
「おねーちゃんがんばってーっ」
「仰せのままに、我が主」
凍てつく雨が、温かくなった気がした。
イクミは馬の姿のパテルに跨り、サヴェッジドラゴンを見据えた。
「初めてのドラゴン退治、いくよ」
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