第四十五話 サヴェッジドラゴンを狩れ!
お城の中が一気にあわただしくなった。
多くの兵士が集まってくる。
「何が起こるんですかね主?」
「さあ・・・サヴェッジドラゴンが出たって話から何かやけに皆張り切ってるね」
「それは私がご説明いたしますわ」
オデットさんが何でこんなに騒がしくなるのか話してくれた。
サヴェッジドラゴンは凶暴で魔力も高いSランクの魔物である。
しかしこの肉はこの世界で一番美味しいらしい。
この竜人族の国、ドラシエルでもサヴェッジドラゴンは最高級食材なんだとか。
「え・・食べるんですか・・?」
「ええ。私も過去にたった一度しか食べた事ないのですが、あれは感動で気を失うくらいの美味しさですわ」
共食い、にならないのかな・・?
『竜人族は同族でなければ肉は何でも食すでござる。サヴェッジドラゴンは彼らにとって共食いには当たらぬでござる』
へ、へえ・・・。
パテルさんもドラゴンは美味しいって言ってたな・・。
そんなに美味しいのかな、サヴェッジドラゴン・・。
「オデットよ。またしばし出かけてくる。サヴェッジドラゴンは必ず狩ってくるからな」
「はいお兄様。お気をつけて」
「うむ。イクミ殿達はどうぞ自由に過ごしてくだされ」
「あ、はい・・」
ジークさんはオディールさんを筆頭に沢山の兵士を連れてお城を出た。
外界に出るのは、いったん国を出てそこから転移石を使って目的の場所へ移動するんだとか。
この国自体、大昔の竜人族が外界から国を守る為に強い魔法をかけたから、国の中では転移石や転移魔法は使えないみたい。
「・・・大丈夫か?あの人数で」
「え・・ヒューゴ、どう言う事?」
ずっと無言を貫いていたヒューゴの言葉に、私は小声で聞いた。
「サヴェッジドラゴンはSランクの魔物の中でもトップクラスです。一匹といえどもあの程度の人数で敵うかどうか・・たとえ竜人族だとしても」
「・・・そんな強いの・・?サヴェッジドラゴン・・・」
うわあ、恐ろしい!
「ジークさん達、大丈夫かな・・?」
「大丈夫ですわ。過去にも我々竜人族はサヴェッジドラゴンを何度か狩った事があります。それにお兄様やオディールさんもいますから」
ジークさんだけでなく、オディールさんも強いみたい。
聞けば、ジークさんはこの国始まって以来の魔力を持っていて、オディールさんもジークさんの幼馴染で若くして王族軍の軍隊長!
すごっ。
「あれ?何か街の彼方此方にでかい鏡設置してない?」
「あれは特別な水晶鏡です。あれでお兄様達の活躍を見る事ができますわ」
凄い立派な鏡だ。
残った兵士さん達や、街の人達が色んな所に設置していく。
「あの水晶鏡は大きなイベント用の鏡なのです。今日のように大きな狩りというイベントをする時に使用しますの。街の者達皆が公平に見れるように。
そしてお兄様達の活躍を街の人達と一緒に観賞し、応援するのが我が国のしきたりなのです。さ、イクミ様達も我が城の水晶鏡でお兄様達の戦いを鑑賞しましょうっ」
どういうしきたりなんだろう。
イベントって。
鏡を見て応援・・何かスポーツ中継みたい。
オディールさんの案内についていくと、もの凄い大きな宝石がいくつもついた立派な鏡があった。
個人での使用は禁止されている本当に特別な鏡らしい。
「さあ皆さん、お兄様達を張り切って応援いたしましょう!」
おおーっとお城の人達が歓声を上げる。
何だこれ?
「おおーっ!」
ルルちゃんがちゃっかり混ざってる。
でもきっと意味分かってない。
「竜人族の戦いか・・存分に拝見しよう」
「これは見ものだな」
ヒューゴとパテルさんも普通に観戦しようとしてる。
え、私だけ何か蚊帳の外。
何だかなぁ・・・。
あ、鏡に何か映りだした。
ジークさん達が見えてくる。
おお、もう戦闘が始まってるっぽい。
・・・・・・ん?
あれ?
「何か、押されてない?」
オディールさんや他の兵士さん達が凄い必死な顔をしてる。
ジークさんは・・あ、いた。
何かに魔法をいっぱい放ってる。
・・・・・うっわでか!!?
「あれがサヴェッジドラゴン?でかあ・・」
もんのすごい恐ろしい形相のドラゴンがいた。
きしゃああああ!と吼えてる。
何か、すっごい嫌な感じがする。
もう肉食恐竜みたいだ。
なんつー牙。
なんつー血走った目。
うーわ、体中に何か稲妻みたいな黒い模様があるぅ。
『あれがサヴェッジドラゴン特有の痣でござる。サヴェッジドラゴンは皆あのような痣が入ってるでござる』
へえ・・。
それにしてもほんと、ドラゴン姿のジークさんとえらい違い・・。
確かにこれだと別もんだわ。
『しかし痣の色が黒とはいかに・・・』
え?どういう事?
「何だあれは・・・」
「ヒューゴ・・じゃない、ヒューイット、どうかしたの?」
あれ?
何か皆もざわついてる。
オデットさんも何か凄い青ざめた顔をしてる・・?
「あの痣の色・・黒だと?サヴェッジドラゴンの痣の色は赤のはず・・それが・・」
痣の色?
補佐丸、痣の色が黒だと何か変なの?
『サヴェッジドラゴンの痣の色は本来赤い色をしているでござる。黒の色はこれまで発見されたサヴェッジドラゴンにはなかったでござる』
んじゃ色違いとか特殊なドラゴンって事?
『・・拙者の見立てではあのサヴェッジドラゴン、第三者の呪いがかけられているようでござる。非常に禍々しい気配を纏っているでござる』
呪い・・・?
どう言う事?
禍々しい気配?
確かに見た瞬間、嫌な感じはしたけど・・。
『何者かがあのサヴェッジドラゴンに呪いをかけ、サヴェッジドラゴンの性質を変えたようでござる。それによりあのサヴェッジドラゴンは通常のサヴェッジドラゴンよりも凶悪で魔力も更に高くなっているようでござる』
ええ!?
ただでさえ強いのに更に強くなったって事!?
ジークさん達は大丈夫なの!?
『・・・・・・・いかに竜人族と言えどほとんど、勝つ可能性はないでござる。早急に退散すべきでござる』
私は言葉を失った。
「お兄様!!」
オデットさんの叫びに、鏡を見た。
いつの間にかドラゴン姿になっていたジークさんがサヴェッジドラゴンと戦っていた。
オディールさん達兵士は・・・ボロボロだ。
沢山血を流している。
街からも住人の悲鳴が聞こえる。
ジークさんを必死で応援する声が国中に響く。
「・・・・かなり危ない状況だな」
「いたい?みんな、いたい?」
「大丈夫だルル・・竜人族はそう簡単にやられはしない」
不安そうな顔のルルをヒューゴが頭を撫でる。
パテルさんは難しそうな顔をしてる。
ドラゴン姿のジークさんは・・その白銀の体が少しずつ赤い血で染まっていく。
「おい、早く引き上げさせた方が良いんじゃないか?」
パテルさんがそう言うけど、オデットさんは静かに横に首を振った。
「竜人族は、一度戦いに身を投じた場合、決着がつくまで絶対に引かないのです。
戦う相手を前にして、背を向ける事は恥なのです」
「そんな・・・」
いくら戦闘好きだからって。
「戦いにおいて、全てをぶつける事が我々の誇りなのです」
誇り・・・。
・・・・・・・・・・・・。
「誇り・・か・・。それは凄く立派な事だね。なら部外者の私達にどうのこうの言う資格は、ない。・・・・でも」
「イクミ様?」
私はぎゅっと手を握りしめる。
「パテルさん、パテルさんは転移魔法のスキル持ってたよね」
「ええ、我が主」
パテルさんは私の考えが分かったのかにっこり笑った。
「師匠」
「おねーちゃん?」
まだ不安そうなルルに、しゃがんで抱きしめてあげた。
「ルル、これからちょっと大仕事があるんだけど頑張れる?」
「・・・・うん!ルル、なんでもがんばる!」
ルルは笑顔で元気よく頷いてくれた。
「ヒューイット、一緒に来てくれる?」
「勿論、俺はどこまでも師匠についていきます」
「ありがとう。ルル、ルルはヒューイットのお手伝いお願いね」
「はーい!」
「イクミ様?あの、いったい何のお話を?」
私はオデットさんに向かい合い、満面の笑みを見せてあげた。
「どうこう言う資格はないけど、ジークさんは言ったよね?私達は自由にしてもいいって。だから、私達は自由に行動するよ。パテルさん!」
パテルさんはすぐに馬の姿に変わった。
それを見てパテルさんを人間だと思っていたオデットさん達が驚く。
パテルさんは気にも留めず分身体を一体出した。
私はパテルさんに乗り、ヒューゴはルルと一緒に分身体に乗る。
「パテルさん、ジークさん達の所までお願いね」
『了解です我が主』
「ルル、しっかり捕まっていろ」
「うん!」
「お、お待ちください!!まさかあそこに行くというのですか!?危険です!!」
オデットさんはようやく理解したのは私達を止めようとした。
でもごめんなさい。
止まる気は全くありません!!
「ジークさんは自由にしていいと、オデットさんも聞きましたよね?
他の兵士さん達も!だから、私達は本当に自由にやっちゃいます!パテルさんお願い!」
『了解!!』
私達はお城を飛び出した。
上空を飛ぶ私達を、街の住人達が皆見上げる。
『国を出たらすぐに転移魔法を発動させます』
「うん!分かった!!」
正直言って私のこの行動が正しいかは分からない。
竜人族の、ジークさん達の誇りを傷つけるかもしれない。
でも、自由にしていいって言ったのは向こうだ。
だから自由にサヴェッジドラゴン退治に行っちゃいます!
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