第四十話 竜人族と出会った
「何かヒューゴと会ったときの事思いだすなぁ」
水の術で濡らしたハンカチを、ぐるぐる目を回しているドラゴンのおでこ・・大きすぎて分かんないけどここらへんかな?に置く。
いや、これ意味あるかな?
ドラゴンがおっきいからハンカチのサイズが合ってない。
ま、まあ気休め程度?
「師匠・・!もう俺は言葉がありません・・!!あんな素晴らしい瞬間を見れたなんて・・今でも信じられません!」
「ママすごーい!」
「流石は我が主・・私が主として選んだだけの事はあります・・!」
さっきからヒューゴ達が私を褒め称えている。
ほんの少し前。
ドラゴンがいきなり私達にドラゴンブレスをぶっ放そうとした。
咄嗟に私は、パテルさんの背中から思いっきりジャンプをしてドラゴンの頭に思いっきり踵落としを食らわしたのである。
その結果が、これである。
ドラゴンは目を回して気絶し、森の中へ落ちた。
「主、このドラゴンどうしますか?食べますか?」
「え、食べれるの?」
「ドラゴンは美味だと聞きます」
ぺろ、と舌なめずりするパテルさん。
ドラゴン、美味しいんだ・・。
「これってオーウェンさん達が言っていたサヴェッジドラゴンかな?」
オーウェンさん達を襲ったという、Sランクのサヴェッジドラゴン。
もしそうなら、仇を討った事になるのかな?
「いえ・・恐らくこれは・・」
ヒューゴが何か言いかけた、その時。
何かが近づく気配がした。
「王!!!」
白銀色の髪をして、鱗の肌を持った武装軍団があっという間に私達を取り囲んだ。
「え、何々?」
武装軍団は手にしている武器を私達に向ける。
うわあ敵意満載。
「お前達は・・竜人族か?」
「え?竜人族!?」
た、確かに言われてみると竜っぽいなこの人達。
うわあ!本物の竜人族だああ!!
・・・・ん?
今、武装した人達の中でも立派な鎧を着た女の人(超美人)が王って呼ばなかった?
・・・・まさか。
「王!しっかりなさってください!王!!!」
女の人が気絶しているドラゴンに王と叫ぶ。
「やはり、このドラゴンは竜人族か・・しかも王とは・・サヴェッジドラゴンとはどこか特徴が違っていたのでもしやと思ったのですが」
「ヒューゴそれ先に思いだして!!!」
『サヴェッジドラゴンと竜人族はまったく別でござる。サヴェッジドラゴンはもっと禍々しい魔物でござるよ』
「補佐丸もっと早く言って!!」
つまり私は竜人族の王様に踵落とししちゃったって事じゃん!!?
うわああ大変だあああ!
「貴様らよくも王を・・!!お前達、こいつらを捕らえろ!!」
女の人の命令で、他の武装した人達が動き出す。
「たたかえばいーの?」
「ふっ竜人族か・・おもしろい・・我が一瞬で冥界へ送ってやろう」
「竜人族か・・腕が鳴るな」
「ちょっ!!なんでやる気満々なの!?」
特にパテルさん!
貴方が言うとシャレにならないから!!
で、でもこの状況どうしよう・・。
術で錯乱させて逃げるか?!
「・・・・・お前達、良い。下がれ」
低いけれど透き通った声がした。
「王!」
あのドラゴンが目を覚ましていた。
ゆっくり身を起こし、その姿が変わり始める。
あの大きかったドラゴンは、長い白銀の髪に金色の眼、綺麗な服を纏った超イケメンさんに変わった。
明らかに、他の竜人族さん達と雰囲気が違う。
「王!ご無事でしたか・・!!!」
ざっとイケメンさんに向かって膝まづく女の人と武装した人達。
やっぱり私が踵落とししちゃったこの人は竜人族の王様だった。
どうしよう・・・かなり無礼な事しちゃった・・・。
「オディールか・・。余は何ともない。お前達、武器を収めよ。この者達に非はない」
「しかしっこ奴らは王に無礼を・・!!!」
「元の原因は余にある。この者達は身を守る為にした事。お前達、武器を収め下がりなさい」
「・・・・・畏まりました」
オディールさんという女の人達は隊列を組んで離れた。
鶴の一声というか、王様の命令って凄い。
「先ほどは失礼した。余の名はジーク。竜人族の王である」
「は、はじめまして・・私はイクミといいます」
「おうさまー?」
「あ、この子はルルっていいます。そっちの人はパテルさん。そしてこっちが」
「ヒューゴ殿だな」
え?知ってるの?
ヒューゴの知り合い?と聞くと、ヒューゴは首を横に振る。
知り合いじゃないのか・・。
「ルルだよー!」
「どうも」
ルルとパテルさんはぺこっと頭を下げる。
「二人とも、王様の前だからお行儀よくね」
「はーいっ」
「御意」
竜人族の王様、ジークさんか・・。
アムルート王国の王様とは全然違うな。
こっちのほうが断然威厳がある感じ。
「イクミ殿に、ルル殿にパテル殿・・そして、ヒューゴ殿・・先ほどはまことに申し訳なかった」
「全くだ。いきなりドラゴンブレスを放とうとするとは・・一体何を考えている?」
おおいヒューゴ君!
相手は王様なんだからそんな態度は止めなさい!
ほらあっさっきのオディールさん達が凄い睨んでるううう!!!
「ヒューゴ殿・・貴殿の噂はよくよく聞いている」
あれ?
王様の眼が少し冷たくなったような・・?
「確かにいきなりのぶしつけな行為は本当にすまなかったと思っている・・。あまりにも頭に血がのぼってしまったのだ・・」
でも王様、はっとなってまた謝罪する。
「一体何があったのだ?竜人族の王ともあろう者が、いきなり何もしていない我らに攻撃を仕掛けてくるとは」
「うむ・・・・・」
ジークさんはヒューゴを見た。
「・・・貴殿の姿を見た瞬間・・どうしても許せなくなってな・・」
「ヒューゴ、お前何かしたのか?」
「とんでもない言いがかりだ。俺はまず竜人族に会うのも初めてだ」
え?そうなの?
『竜人族は滅多に自分の国から出ないでござる。竜人族はあまり多種族との交流を好まない故、竜人族の国は魔法によってどこにあるか分からないようになっているでござる。だから竜人族に出会える確率は低いでござる』
そうなんだ・・。
たしかに地図にはどこも竜人族の国は書いてなかったなぁ・・。
「会った事ないのに何でヒューゴに対して怒りを感じたのですか?」
「それは・・貴殿が・・・我が妹の心を惑わしたからだ!!」
ジークさんの周りの空気が変わった。
これは、怒りのオーラだろうか?
「惑わした?俺はお前の妹なぞ知らんぞ」
「ヒューゴ・・せめてもうちょっと敬語使おうよ・・」
王様相手にこの態度はあかんて。
「Sランクのヒューゴ・・・人族でありながら我ら竜人族と大差ない魔力を持った者・・その噂は余の国にも広く伝わっている」
わあヒューゴ、凄い有名人じゃん。
「我が妹、オデットは貴殿の噂を聞いてすっかり心を奪われてしまったのだ・・!!
部屋中に貴殿のブロマイドやポスターを張り、貴殿の出向いた国の話を聞けば聖地巡りと勝手に城を飛び出し、挙句の果てには貴殿のぬいぐるみを作り毎晩それを抱いて寝る始末・・・!!」
うわあ・・・・。
もうその話聞いた瞬間、うわあとしか出なかった。
あ、オディールさん達、今目逸らした。
ヒューゴなんかめっちゃ能面みたいな顔してる。
まあ自分のそんな話聞かされて嬉しい訳ないか。
ルルは話の意味が分からないみたいだけど、パテルさん・・思いっきり肩震わしてる。
笑い堪えてるの丸わかり。
「可愛い可愛いオデット・・ずっと余が守ってきた我が妹・・その心をいとも簡単に盗んでいった貴殿の事がどうしても許せなかった・・!
偶然、城から外を見ていた時、結界で身を隠して飛行する何かに気づき我が魔力で結界の中を見通した時、貴殿の姿を見つけた・・。
その瞬間、余の頭の中は怒りで染まり・・後はこのとおりだ」
つまり、王様は妹大好きなシスコンお兄様で、その妹はヒューゴの大ファン。
んでヒューゴの事が気に入らなくて、偶然ヒューゴを見つけたからつい怒って襲いかかってきたと・・。
「なんて迷惑な!!!」
「私情が絡んでいるにも程がある!!!」
私とヒューゴの声が重なった。
パテルさんなんか、ブフォッ!とついに噴き出したし。
ルルだけがどうしたのー?と平和である。
「貴様ら!王に向かって失礼すぎるぞ!!」
オディールさんが今にも飛びかかってきそうだ。
ジークさんがそれを制止してくれたけど。
「いや、貴殿らの言う通りだ。妹の心を惑わした相手とはいえ、向こうは何も知らない。王としてあるまじき行為をしてしまった。改めて謝罪する・・」
ジークさん、本当にすまなさそうな顔をしてる。
何せ王様が頭下げてるんだもん。
権力のある人が頭下げるなんて、よっぽどの器じゃないとできないんじゃないかな?
「まあ事情は何であれ、私もかなり失礼な事しましたから・・それに誰も怪我してないし、・・ヒューゴは、やっぱり怒ってる?」
「まあ最初は憤慨しましたが、師匠の広い心に俺は感動しました・・。それに竜人族を相手に見事な師匠の技を拝見できたので、俺はもうそれで満足です」
つまり怒ってないという事か。
ならこれで大丈夫、かな?
「イクミ殿、貴殿の先ほどの動き、見事であった」
「あ、ありがとうございます」
何か褒められた。
王様に対してかなり失礼な事しちゃったのに。
「正直、全く動きが見えなかった・・。あんなのは初めてだ・・。怒りに身を任せていたとはいえ、何もできずに敗北したのは初めてだ・・」
その言葉に、オディールさん達がざわめいた。
「王が・・何もできなかったと・・!?」
「そんなまさか・・・」
「一晩で10万人の敵国の兵士を一掃させたあの王が・・!?」
・・・何か物騒な話が聞こえた。
10万人の兵士って何。
「しかし余が油断していたからかもしれない。そこではっきりさせたい。
イクミ殿。余と一対一の勝負を申し込む!
どちらが上かはっきりさせたい!!」
・・・・・・・・何を言いだしてるだこの王様はああああ!!!?
『竜人族は戦闘好きという一面もあるでござる』
うわあ、凄い迷惑な一面。
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