第三十六話 オーウェンさんが来た
フィオフルルの国についてから一週間。
私達は以前も借りた宿、『月見草』にまた泊まっている。
そしてまた全員同じ部屋。
とんでもない大金が入ったから、個別で部屋を取っても良いんじゃないかと提案したけど、全員から却下された。
ヒューゴ曰く 弟子ですから。
ルル曰く、みんないっしょがいい。
パテルさん曰く、従魔と主はいつも一緒。
まあテントでも皆一緒だから別に良いんだけど(パテルさんが旅に同行して以来、ヒューゴのテント内ではパテルさん用のベッドも増えた。最初は馬は外で寝てろ!とヒューゴとちょっと言い合いになったけどね)。
人数が多いから、ちょっと広いお部屋にしてもらった。
次はどの国に行ってみようか、皆で地図を広げて相談していたら、こんこんと部屋の戸をノックする音。
誰だろう?
「あ、オーウェンさん?それにクルミさんにミレイさんも」
ドアを開けると、花束を持っているオーウェンさんと両隣にクルミさんとミレイさんがいた。
「こんにちは。母さんから、イクミさん達がここに泊まってると聞いたもので・・。先日はお見舞いありがとうございました」
「退院したんですか?」
「はい。まだ冒険者としての活動許可は出てませんけどね」
まだ頭に包帯を巻いているオーウェンさん。
それでも自由に出歩けるようになったらしい。
「あの、これお見舞いのお礼です」
オーウェンさんは腕に抱えていた、ピンクの可愛い花束をくれた。
おおっ花束を貰えるなんてお誕生日会以外ではじめて!
「ありがとうございますっわざわざこの為に?」
「どうしても、お礼が言いたくて・・」
何て律儀な人だ。
その上イケメンなんだから、こりゃあモテるのも頷ける。
「(オーウェンが女の子に花をあげるなんて・・!幼馴染の私にだってくれた事ないのに!!)」
「(何て羨ましい・・・!私だってオーウェン様から・・・!)」
・・・・・すっごい威圧を感じる。
そして何を考えているのか顔で分かる。
怖い、ジェラシー怖い。
例えデブの女でも好きな相手が絡むとなると、やっぱり面白くないんだろうなぁ・・。
「用が済んだのならもう良いか?こちらは大事な話があるんだ」
「我らは暇ではないのでね」
ヒューゴとパテルさんが私の後ろから、三人を見下ろす。
何か睨んでない二人とも?
「おはなおはな!きれーっ」
ルルは花束を見て喜んでる。
それを見て和む私。
「そうだよオーウェン!退院したとはいえまだ病み上がりなんだから、家で休もう!」
「まだ万全ではないのですから、完全回復なさるまで私がきっちりお世話しますわ」
「何がお世話よ!昨夜ベッドにもぐりこもうとしたくせに!あれのどこがお世話よ!?」
「夜のお世話をするのも妻の役目ですわ」
「いつ妻になったのよおおおお!!!!」
私は咄嗟にルルの耳を押えた。
これは0歳児に聞かせられない・・・!
まあ私も未成年なんだけどね。
「おい!人前でなんていう会話をしてるんだ!!」
二人を怒るオーウェンさん。
顔が赤い。
まあ内容が内容だから仕方ない。
「貴様ら・・下衆な会話をするのなら早くこの場から立ち去れ」
ヒューゴが怒りのオーラを出してる・・。
パテルさんは・・何でさっきとは違って楽しそうな顔してるの?
「恋情が絡んだ女の争いは見てて楽し」
「パテルさんストップ」
嫌な思考だなおい。
面白がるんじゃないの!
「すみませんイクミさん・・ただお礼を言いに来ただけなのに・・」
「いえいえ・・オーウェンさんも大変そうですね・・」
「どうも・・。それじゃ俺達はこれで失礼します」
まだ言い争う二人を引っ張って行くオーウェンさん。
慣れた様子なのがまた・・・。
「あの、オーウェンさん」
「?」
「お花、本当にありがとうございます!」
オーウェンさんは、嬉しそうに笑ってくれた。
うーん、爽やかなイケメンスマイル。
「(イクミさんって凄く優しい人だな。明日も来ようかな・・?)」
「(う~・・・オーウェン、まさかあの子の事・・?)」
「(ライバルが増えるなんて冗談じゃありませんわ・・!)」
貰った花束を無限空間へと仕舞った。
可愛い花瓶、探してみようかな?
ヒューゴのテントの中に飾ろう。
「残念。もっと見ていたかったのに」
パテルさんは本当に残念そうな顔をしている。
「嫌な趣味だなお前。あんな下衆な姿を見ていたいとは」
「ヒューゴ・・下衆ってちょっと言い方が悪い」
「申し訳ありません師匠!!」
いや私に謝っても。
まあ、いいか。
さ、話の続きをしよう。
「パパー、あまいこーちゃ、飲みたい」
ルルがヒューゴにおねだり。
甘い紅茶というのは、ミルクと蜂蜜をいっぱい入れた紅茶の事だ。
ルルはこれがお気に入りである。
ヒューゴの紅茶はミルクティー以外でも美味しいから私も好きだ。
ヒューゴは早速ミルクティーを作ってくれた。
私達にはフルーツの香りがするフルーツティーを入れてくれた。
それに、お皿に並べたピンクローズ堂の砂糖菓子。
お洒落で贅沢である。
砂糖菓子をつまみながら、地図を見る。
「師匠は海を見てみたいとおっしゃってましたね」
「うん」
この世界にも海はある。
そして人魚も存在すると聞いてから、一度は海へ行きたかった。
運がよければ人魚に会えるかもだし。
「ではこのラメーマルの街はどうでしょうか?港町としてかなり有名と聞きます」
ヒューゴが指差した場所。
確かに海に面した街だ。
「この街の魚料理は有名らしいですよ」
「魚か・・偶には魚もいいな」
「おさかな!おさかなたべたーい!」
以前お肉ばかりじゃ何だから、鮭のホイル焼きとかサバの味噌煮を出した事あったけど、あれも大好評だったのを思い出す。
「魚か・・魚のから揚げも美味しいんだよねぇ」
おばあちゃんが作ってくれた白身魚のから揚げ、あんがかかってて美味しかったなぁ。
・・・あ、から揚げと聞いて、三人の目の色が変わった。
「師匠、魚でもから揚げができるのですか!?」
「う、うん・・できる、よ?」
あ、ちょっと口滑らしちゃったかな?
「よし、我らの行く先はラメーマルの街に決定だな」
「それ以外ないだろう」
「おさかなのから揚げたべるー!」
決定しちゃったらしい。
こんな決め方で良いんだろうか・・・?
でも、港町なら新鮮な魚手に入りそうだし、珍しい魚もあるかも・・。
なら別にいいか。
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「どうやら次の目的地が決まった様ね~。うふふ、運命の神ちゃんに頼んでもっともーっと旅を盛り上げよーっと♡」
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